DIVA第26章〜第27章
第26章【子どもたちがいない町】
「さくな。おはよう。」コウジが、眠っているさくなに話しかける。「ん……?あなた、どうしたの?」「あ、あのさぁ……。僕、こんな活動を始めたいんだ。家族や友達……知り合いがいなくなった人たちのサークル……みたいな。」コウジは、自身なさげに言う。「どうかな?」「……。そうねぇ。最近は物騒だから……さくらもだし、同じクラスの子も何人かいなくなってるらしいの……。」さくなは、不安そうに言う。「……。のれは家出じゃないのかも。なにかの事件なのか……?」コウジは、深刻に考える。「でも、あなた。もう遅い時間だから今日は寝た方がいいわよ。明日も仕事でしょう?」「さくらが僕のところへ戻ってきてくれるなら、仕事なんてどうでもいい。君だって……、金に換えてもあの子に会いたいだろ。」コウジは、諭すように言う。「でも……。お金がないと生活ができない。それこそ、さくらが帰ってきた時に貧乏になっていたら、どうするのよ。あなた、本当に寝なさいよ…。最近ずっと起きて何してるの?」さくなは、上半身を起き上がらせた。「………。もう、眠れなくてっ。」コウジは、抑えてたものが飛び出すみたいに言い放つ。「…もう、怖くて怖くてたまらないよ……。さくらが怖い目に遭ってたら、もし命の危険があったら……。でも、それならいいなとどこか思う自分も嫌なんだ。だって、もしさくらがいなくなったのが事件だとすれば、家出したわけじゃないし、僕らのせいじゃない……。やっぱり、あの子は……。そんな子じゃない……。だろ?さくな……お願いだ……そう言ってくれよ……。」コウジは、さくなの元にきて、手を握ってきた。「……。あなた、無理しないで…。私だって、あの子のことで眠れない。でも、あの子がいなくなっても、時間は経つし、私たちの人生が終わるわけじゃない。それでも、生きていかなきゃならないのよ……。」さくなは、コウジの頬に手を添える。コウジの目からは、涙が溢れていた。「……あなた、絶対大丈夫だから……。お願いだから、休んで。休日がそろそろ近いし、その日は何も考えないで。あなたのために言ってるのよ……。あなた、あなたは頭が良くて賢いけれど、考えすぎてしまうの。良いところだけど、悪いとこでもある……。さくらは、あなたに似てるかもしれないわね。」さくなは寂しそうに微笑む。「いや、君にだってそっくりだ。いつもそっけなくって寂しいよ……」コウジは、さくなを見るたび、さくなに話すたびに涙が溢れ出す。大の大人が、こんはにも泣いてしまうだなんて……コウジはずっと、大人は泣かない生き物だと思って生きてきた。だけれど、それはたぶん偽りの姿だ。大人たちは、裏でいっぱい苦しんでる。涙で眠れない夜もあるし、辛くて、悲しくて、苦しくて、寂しくて、怖くて、いなくなりたくなる日々の人もいる。大人というのは、無理やり大人にされた子供の集団だから。大人になんて、誰にもなれないのかもしれない。コウジは、強くそう思った。誰もが必ず大人になる。そう、シロツメのように、コウジより年上だけど、コウジより劣ってる人もいる。コウジは、別にそんなことで人を評価しないが、シロツメは今までたくさんバカにされて、年下にも年上にも同年代にも見下されてきたのだろう。それでも、シロツメは、諦めなかった。コウジは、シロツメの頑張る姿がとても好きだった。やっぱり、一生懸命になっている人は、とてもかっこいい。コウジは、だから彼を尊敬している。いつもは言えないけれど、彼に感謝している。コウジの言った指示や、訂正点を、シロツメは時間はとてもかかるが、見事に直してくる。だから、シロツメは強い。とても強いのだ。
「……わかった。もう寝るよ。」コウジは、一言そう言って、さくなと同じ布団に入る。「よかった。やっと寝てくれるのね。」さくなは、安心して言う。「……。ねぇ。あたし、1人で寝るの、好きじゃないのよ。あなたが居てくれないと、それこそ不安で眠れないの。」さくなは、コウジに語りかける。「……そっか。ごめん。」コウジも、さくなに語り返す。「明日はいいことあるわよ…。きっと。」さくなは、コウジの手を優しく撫でる。「うん。だといいね。」コウジは、うとうとし始めていた。「ええ、かならず。」さくなは、コウジの手を握りしめる。
朝が来て、眩しい朝日がさくなとコウジに降り注ぐ。ピロンっとさくなのケータイに通知がきた。「……?」さくなは、その音で目覚め、ケータイを確認する。
〜学校からのおしらせ〜
保護者の皆様、いつもありがとうございます。ただいま、子供達の失踪事件が多発しており、我々学校側は危険と判断したため、ただちに学校閉鎖を行います。子供をなるべく1人で外出させないように心がけてください。子供の外出の際は、必ず大人の保護者が付いて行くようにしましょう。更に、月ノ宮の中学校の生徒も被害に遭われているようです。不要不急の外出は、なるべく控えるようにしてください。そして、不審者や子供の目撃情報など、お心当たりがございましたら、警察や我々学校に連絡してください。ご協力のほどよろしくお願いいたします。これらの内容を最後まで読み、ご理解いただけますようお願いします。
「あら……。中学校の方も…?これは……。まさかっ………?」さくなは、嫌な妄想が頭で広がろうとしたが、必死でそれを止めた。そんなわけがない。そんな……。実は、さくなは昨日のコウジとの話を寝ぼけていてよく覚えていないのだ。とにかく、彼に休んでほしい……。この際なんだから、どこか遠くへ行こうともさくなは考えた。でも……。さすがにこの状況でそんなことはできない。コウジだって嫌がるだろう。でも、少しでも気分転換をしてほしかった。もちろん、さくらのことが大事だ。だけども、それと同じくらいコウジも大事だ。だって、彼がいなければ、さくらはこの世にいない。コウジがいてこそのさくらだから。だから、彼がおかしくなってしまったら、もう何もできなくなってしまう。きっと、さくらはさくなよりもコウジの方が好きだから。コウジは、会社の人たちから好印象だし、男女問わず人にモテる。さくなは、少しそんなコウジが羨ましかった。自分はこんなに人に好かれるように努力しているのに、コウジはなにもしなくても人に好かれる。さくなは、なにをしてなくても人が離れていく。コウジは、どうしてこんなにも恵まれているのだろう。さくなは、コウジに少し嫉妬しているのだ。でも、彼のそんなところが好きだから、さくなはコウジを選んだんだ。それでも、彼が完璧すぎるから、自分がちっぽけに思えてしまう。それで、自己嫌悪に陥り、コウジにぶつけてしまう。本当はコウジは悪くないし、できることを精一杯やってくれているのに、どうして私はこうなんだろう……。さくなは、胸が苦しかった。コウジは、今仕事に出かけているが、彼がいつまで、平然を装って生きていけるのだろう。さくなは、今日も1人きりの家で、1人、考え込んでいた。
シロツメはよつばに聞く。「今日も学校を休んで、ゆり…さん?のところへ行くの?」「うん!!いくのっ!!だって、ママに会えるかもしれないから!!あ!!あとね!!みつ…」よつばがそう言うと、シロツメは、悲しそうによつばの両肩に手を添える。「……。よつば、あまり、ママの話をしないでおくれ、だって、パパ…しんじらんないからさ。だ、だからね。お前は信じててもいいよ、ママを、だけど、お願いだから、パパには言わないで……。」シロツメは泣きそうになって言う。よつばは、がっかりした。昨日は疲れてあまりシロツメに昨日のことを話せてなかった。みつばが、いるかもしれないと言うことは確実だから、どうしてもみつばのことはシロツメに伝えたかったのに…。「うん。わかったよ、パパ。ごめんなさい。」よつばはふてくされて言う。「……うんう、パパこそごめんなさい…。お前にこんな思いをさせて。ママは、僕に愛想尽かしたんだよ、きっと。だから、みつばを連れていなくなっちゃった。お前も、ママといっしょの方が幸せだろうに…。」シロツメは、よつばの頬に手を添えて、辛そうに言う。「パパといっしょで、ぼくはとってもうれしいよ!!しあわせだよ!!パパ!!」よつばは、シロツメがまた泣いたり、怒ったりしないように言う。だって、そんな姿は見たくないから。大好きだから。シロツメには、笑顔でいてほしいんだ。「ありがとう。あっそろそろ遅刻しちゃう…。会社のみんなにまた迷惑をかけてしまう……。それじゃ、よつば。家を出るなら、必ず鍵を閉めてね。最近…。子供の行方不明とかが、多いみたいだし…。お前も遅くならないうちに帰ってこいよ。」シロツメはよつばの髪を撫でる。「うん…!パパ…!」よつばは、一生懸命声を張って、一生懸命笑う。よつばのような無力な子供ができるのは、ただそれだけだから。よつばは、シロツメが出た後、笑顔が消えた。なぜか、悲しくなってきてしまった。最近、シロツメは遅くに帰ることが多い。もちろん、深夜とかではないが、おそらくよつばに外出の機会が増えることによって、シロツメは仕事をする時間を増やしているのだろう。それに、さくらやアオキ、この2人のケンカが、よつばはとても嫌だった。べつに、仲良くある必要はない。さくらとアオキのこの2人の独特な空気感がよつばはとても居心地が良かった。でも、今ではあまりよくない関係になってきてしまっているのかもしれない。よつばはそれが怖かった。2人がどちらも大好きだから、できれば元の感じに戻ってほしい。でも、それは勝手な押し付けであり、理想なのかもしれない。それでも、2人には一緒にいてほしい。どんなふうになっても良いから。よつばの目からは、涙が溢れていた。今日は、ゆりさんの元へは、行けないかもしれない…。レイニーズのこともそうだし、さくらやアオキに会うのも怖い。よつばはただ、膝を抱えて部屋の隅にいることしか、できなかった。
シロツメは無事に会社に着き、席に座った。「おはようございます。」コウジの声が、後ろからした。「あぁ……コウジさん。お、おはようございます……。」シロツメは、驚いて、とりあえず挨拶し返す。そして、コウジは、シロツメの目の前の席に座る。その顔は、なんだかやつれているように見える。(コウジさん、元気ないのかなあ。)シロツメは、心配そうにコウジを見つめる。「……あ、あの。シロツメさん……なにか用でも?」コウジは疲れ果てた目でシロツメを見る。「…え、い、いやぁ……?特に、何も……。」シロツメは、目を逸らす。「た、ただ…コウジさん、疲れていませんか?な、なんだか、しんどそうに見えちゃって……。」シロツメは、焦って口走る。「……。なんでもないですよ。僕は、いつも通りだから…」コウジは、いつもビシッと話すのに、今日はだらだら話す。……やっぱり様子がおかしいのかも……?シロツメは、緊張してきた。「そ、それは……よかった…。」シロツメは、もやもやを抱えたままそう言う。でも、コウジには気づかれないように。「……。」コウジは、無心でパソコンを叩く。彼の文字入力のスピードは、果てしない……。やはり、コウジは優秀すぎる。こんな人材がこの会社にいるのは、本当にもったいない。シロツメは、居ても立っても居られないほどもやもやした。
「あれ〜?コウジくん。めずらしいねぇ。こんなミスをするとは。」さいとう社長から手渡されたコウジが書いていた資料には、めずらしく何個か誤字が見られた。「えっ……。うそだろ……なんで。」コウジは、ぼそりと言う。「大丈夫かい?コウジくん。今日はもう上がってくれても構わない。君次第だよ。私は…。君が心配なんだ。」社長は、切なくコウジを見る。「で…、でも……。そんなわけには…だって、今ものすごく良いところじゃないですか……。ねぇ、社長……。」コウジは、予想外の反応に困惑しながら言う。「……でもねぇ。君のいつもの完璧な文章がこんなだと……ちょっと心配になるよ。ほら、シロツメくんにでも代わりにやってもらったら……。」「ダメです。シロツメさんに迷惑はかけられない。」コウジは、資料を社長の手から奪い、自分の席に戻った。そして、またパソコンを叩き始める。それから、「なんで?」 「ちがう!」 「ああ!!もう!!」 コウジは、大きめの独り言を言う。彼は、相当イライラしているようだ。「………。コウジくん。そんな状態で仕事はさせられないよ。帰りなさい。今日は疲れてるんだ。」社長が、コウジの手を止める。「そ、そんなっ!!………嫌です!帰らない!」だって、仕事をしていないと辛いことばかり考えてしまうから。コウジは、社長の目に訴える。「……。はぁ。無理をすると体を壊すぞ。」そう言い放って社長は去っていった。
「シロツメくん、君からもなんとか言ってやれないか?」社長は、シロツメに語りかける。「えっ…!なんで僕……?」シロツメは、困惑して言う。「君とコウジくんは、よく話してるから。ほら、やっぱり同い年くらいの人に言われれば、なんか、納得するだろう?」社長は、シロツメの肩を持つ「で、でもそんなこと言われたって……」シロツメは、不安そうに言う。「大丈夫、大丈夫。コウジくんは、心優しい人だから」社長は、シロツメの背中をグイグイグイグイ押す。「はぁ……」シロツメは、大きめのため息をついた。「コウジさん。ちょっと、屋上にでも行きませんか。気分が良くなるかもしれませんよ。」シロツメは、人前で話すもんじゃないな。と思って、そう言う。「……はあ。まぁ、今暇なのでいいですよ。」コウジは、そう言って席を立つ。「ありがとうございます。すみません……迷惑をかけて……。」シロツメは、コウジが年下なのに、まるで上司の様に接してしまう。「あぁ。全然いいんですよ……。はは」コウジは、そう言って笑う。
「ところでコウジさん……さくらちゃんは、まだ見つかっていないのですね?」シロツメは、恐る恐る聞く。「はい。まったく。」コウジは、遠くを見ながら言う。「近頃、子供の失踪事件が話題らしいですね……。さくらちゃんは、違うけど」シロツメは、ぽつりと言う。「え、さくらはちがうんですか?」コウジは、目をまんまるにして言う。「あ〜!!そうですねッ!!ぜっっったい違う!!さくらちゃんは、ぜぇっったい無事なんですッッッ!!」シロツメは、やっぱり心が痛い……彼女のいる場所を知っているのに、言えない……。コウジがどれほど彼女に会うことを望んでいるのだろうか。それを考えると、夜も眠れなくなる。「……。コウジさん、じ、実は、ずっと隠していたことがあって……ぜ、ぜひ……。うちの家に奥さんと来てくださいますか?」シロツメは、震える唇で、必死に話す。「え…?妻と……?」コウジの顔つきが変わった。真剣にシロツメを見つめている。「はい。お願いです……。これは、ちゃんと言っておかないと。」シロツメは、怖かった……でも、やっぱり隠すのは良くないこと。ちゃんと話そう。と心に決めた。
シロツメは、電車でさくらの両親と風野村へ向かった。
「ただいま。よつ」シロツメが玄関に上がると、泣き腫らした目のよつばがいた。「あれ?パパ、その人たちはだあれ?」よつばは、泣いた後なのか、話しにくそうに聞く。「そう。僕は、さくらのパパ。君は……シロツメさんの子かな?そっくりですね。特に……髪とか?」コウジは、優しく微笑む。よつばは、それを聞いて、とてつもなく不安になる。さくらのパパ……。彼らが来てしまっては、もう……あのことがバレてしまう。「あとね、こっちはママだよ。」コウジは、さくなを見る。「……え、えぇ。よろしくね。」さくなは、よつばをまっすぐ見る。「ぱっ……パパっ……なんで…」よつばは、また泣きそうになって言う。
「よつば、ちゃんと話していい?さくらちゃんのこと。」シロツメは、真剣によつばに聞く。「………!」よつばは、声が出ない……。でも、やっぱり良くないことだとよつばもわかっていた。いつまでもこんなことをしていたら、ダメになってしまう。「…………………いいよ。」よつばは、ゴロゴロの声で言う。もう泣きすぎて、まとまに話せない。「わかった。」シロツメは、悲しそうによつばを見て、抱きしめる。しばらくすると、コウジたちの方を向いて、「では、お茶でも飲んで……話しましょう。」シロツメも、不安だった。どんな反応をされるだろう、嫌われるかもしれない……。怒鳴られるかもしれない……。それでも、やるしかない。ちゃんと言わなきゃ、彼らは、ちゃんと向き合うつもりでいるはずだから。
「よつば、話して。」シロツメは、よつばを見つめる。「さくらちゃんの場所、ぼく知ってる……。」その言葉に夫婦は素早く反応する。「……でも、言いたくないです。さくらちゃんは嫌がってるの。きっと言ったら、ものすごく怒るよ、……パパと……ママでも…」よつばは、寂しそうに夫婦を見る。「………それでもいいよ、教えて……。知りたいんだ。さくらの気持ちを。」コウジは、よつばを強く見つめる。「うっ……でもっ、でもっ、……」よつばは、また涙を流す。怖い。これからどうなるのか、わからない。よつばは、シロツメを見る。「……言えないの?」シロツメは、そう言う。よつばは、その言葉に何度も首を縦に振る。言えない…。絶対に言えない。よつばは、ソファにも座らず、床にちぢこまる。
「………。月ノ宮?」コウジが呟く。「そうなんです。そこの、ゆりさん…?っていう寮の学校の学生の方が、さくらちゃん……そして、アオキくんの面倒を見ているそうで…。」シロツメは、言ってしまった。「なんだ、そんなところにいたんだ。」コウジは、安心した様に涙を流す。「そうよ、あなた。子供がそんな遠くへ行けるわけないわよ……。よかった……ありがとうございます……。シロツメさん。」さくなは、幸せそうにシロツメを見る。「あ、ありがとう……ございます……」シロツメは、複雑な気持ちだった。さくらはよつばからすると両親には会いたくなさそうらしいのだが……。やっぱり、こんなにも心配しているのならば、話さないわけにはいかないんだよ……。ごめんね。よつば……。
「今日はもう遅いし、泊まって行きますか?寝る場所はここ……。ソファになってしまいますが……。」シロツメは、申し訳なさそうに言う。「本当ですか。じゃあ、さくな。家にいるよりはいいかもしれない。」コウジは、さくなに語りかける。「でも、迷惑じゃないの?あなた、私たち、大人なんだから……。」さくなは、不安そうに言う。「いいんですよ。お二人が心配なもので……。」シロツメは、優しく、ちょっと不安そうに微笑む。「わかりました……。本当に、ありがとうございます。」さくなは、頭を下げる。「ははっ……。そんな……。そんな…………それでは…。そろそろ僕と、よつばは、寝室へ行きますね。」シロツメは、よつばを抱っこして連れて行く。
「ごめんなぁ。よつば」シロツメは、眠るよつばを抱きしめる。気づけば、シロツメの目からは涙が。いつもいつも、本当にこの子には辛い思いばかりさせている。ごめんね……ごめんね……。愛してるよ。大好きだよ。シロツメは、よつばを、つよく、つよく抱きしめる。痛いくらい……。もう手放したくない。たとえ、ハナもみつばも帰ってこないとしても。よつばには、幸せでいてほしいから。
朝の光が、シロツメの家の中を照らす。「ん……。」シロツメは、重い体を起こす。横を見ると、よつばが……いない。「あ、あれ?よつば。」シロツメは、ふとんをひっぺがしたりして色んなところを探す。……でもいない。「えっ。」シロツメの頭は真っ白になった。「……出かけたのかな…さくらちゃんのとこに」
第26章終わり
第27章【みつば】
よつばは、シロツメに何も言わずに家を出てしまった。よつばは、一生懸命走る。そう、さくらに会うために。転んでも、立ち上がってまた走り出す。よつばは、あまり走らないから、すごく息切れしていた。涙で、目の前があまり見れない。よつばは、がむしゃらに走る。ゆりさんの中学校が見えてきた。よつばは、とても疲れていたけど、歩みを止めるわけにはいかなかった。
ゆりの部屋のドアを叩く音がする。「んっ?!」実はゆりは早起きをしていて、もう制服に着替えており、いつでも登校できる状態だった。アオキとさくらをクローゼットに入れてから、自信をもってドアを開く。「どなたでしょうかぁ。うぇっ?!?!」ゆりは、想定外の来客に腰を抜かす……ジョンだ……。「あの、ゆりさん。この教科書おちてましたよ。」ジョンは、不気味な笑顔で言う。「ふぁ……、あ、ありがとう……。」ゆりは苦笑いする。「お前、なに。」アオハが嫌そうにジョンの後ろに立っていた。「おっ。キミは……アカオくんとか、だっけ?」ジョンは舐めた様に言う。「アオハだよ。お前、ゆりちゃんに何しようとしてる?」アオハは、ジョンを睨む。「はい?僕はただ、彼女に落ちてしまった教科書を届けにきただけなのに、そんなふうに言われるなんて……。」ジョンは、わざとらしく言う。「ですよねぇ?」「あっ。ま、まあ。」ゆりは、ジョンに聞かれて動揺しながら答える。「〜〜!……っならいーけど。ゆりちゃん、コイツぜったい」アオハが何か言おうとすると、ジョンはアオハの足を踏みつけた。アオハは信じられなくてジョンを睨む。そしてジョンはゆりに頭を下げ、ゆっくりとドアを閉める。
「余計なことは言うなよ。アオハ。お前はまだなんにも知らないんだ。でも、これからわかるよ。彼女に皆が夢中になるさ。彼女の力になれるのは幸せだろう?お前も彼女に愛してもらえるはず。ほしいんだろ。愛が。いつも1人きりでこの学校に暮らしている……。もちろん、人はいるさ。でもな、心を許せる相手はそうそういない。でも、彼女に会えば人生が変わる。お前のちっぽけな人生を変えてくれる。俺たちも、彼女を愛してる。お前……。あの女が好きなんだろ。でも、あいつがお前なんかを愛すと思うか?お前の様なちっぽけで意味がないつまらない存在を!」ジョンは、アオハに迫ってくる。「あー……んっ?ちょっと言ってる意味がわかんない〜っ……。だって、べ、べつに……ゆりちゃんと……その………あー……。」アオハは、ジョンから目を逸らして、ちょっと悲しそうな顔をする。「あのさ、彼女ってだれ?お前のおかあさん?それとも、親戚のおばさん?なんだか知らないけど俺は興味ないよ。家族ならいるし、どうってことないもの。」アオハは、ニヤニヤして言う。「……へぇ。家族はお前を本当に大切に思ってるのか?その証拠は?命をかけてでもお前を守る覚悟がソイツらにはあるのかな。」ジョンは、とんでもない形相で取り乱しながらいう。「おっ……おいっ?!ちょっ、落ち着けよっ!バカっ!そんなキレてどうすんの……。」アオハは困って言う。
「あの……。じょ、ジョン様…。やめてください……。」バラみが、震えて立っていた。
「バラみちゃん……?」アオハはもうわけがわからなくなっていた。「アオハくん。くれぐれも変な事は言わないでね?もしあと一度でも何か言いふらすなら。お前の家族がどうなっても知らないからな。」ジョンは、憎しみ籠った声で言う。今にもアオハに手を出してしまいそうだ。「……っ!……うん…」アオハは、うなずくしかなかった。「じゃ〜ね〜ダーリン。二度と来ないで」ジョンは殺意のこもった声でアオハを見送る。アオハは、とてもモヤモヤしていた……そうか。この学校の中にはアオキがいる……。アオキが無事なら良いけどなぁ。と。
「バラちゃんっ。来てくれる気になった?キミのことは僕、すごく気に入っててさ。一番のお気に入りだよぉ。」ジョンは、甘い声でバラみに話す。「……。わかりました。もう、アタシには、行く場所もないから……。ここにいる意味もない……。アタシを連れてって。ジョン様。」バラみは、震える声で話す。「わかってたよ、お前がそう言ってくれるって。」ジョンはニヤリと笑う。
バラみは、そわそわしながら周りを見渡す。自身の部屋に戻り、荷物を整理しなければならない、そして、部屋の整理ができたら謎のケータイを操作してワープ……する。というものだった。バラみは、ある程度荷造りを終えていた。深呼吸して、謎のケータイに手を伸ばす……と、コンコンっと、ドアがノックされる。
「バラみさん。……あれ。部屋がやけに片付いてる。」バラみがドアを開けると、シュガーがいた……。シュガーは、様子がおかしいバラみを見て、唖然とした。「え……何する気?」シュガーは、焦って言う。「さようなら。私を探さないで。もう二度と、あなたには会えないと思うから……」バラみは、寂しそうに言う。「……アタシ、最初はあなたが怖かった。……でもね、あなたがアタシにいっぱい話しかけてきてくれて、幸せだったの。あんな気持ちになったのは……。友達と話した時以来。でも、あなたみたいなステキな人は、アタシには合わない……許婚も、この縁も、全て無かったことにしましょう。あなたも、アタシなんて忘れて、いつも通りのあなたでいて。」バラみは、シュガーに顔を近づける。
バラみは、シュガーにキスをした。
「さようなら」
「待って!!バラみさ、待って!!おねがいまって!!!!」
シュガーがバラみに手を伸ばすと、彼女はすでに消えていた……。「バラみさん……。」バラみの部屋にはシュガーしかいなかった。物も何もない。空っぽの部屋だ。シュガーは、絶望した。こんなにあなたを愛しているのに、なんでわかってくれないんだろう。
「さくらちゃん……!ごめんなさい……」ぐしゃぐしゃの顔をしたよつばがゆりの部屋に駆け込んで来た。「あれ?!よつばくん、どうしたの?」ゆりが1番に反応にした。「ゆりさあぁん……。」よつばは、ゆりの顔を見るなり、涙を流す。そして、ゆりに抱きついてきた。ゆりは、こんな状況が、しかも子供に抱きつかれるのが初めてで困惑したけど、ゆりは、とりあえずよつばの頭をさわる。「ど、どうしたの?」ゆりは、とにかく言葉を発した。「さくらちゃん……。ごめんなさい。」よつばは、それしか言わない。「……。なあに」さくらは、聞く。すると、よつばは顔をさくらの方へ見せて、「さくらちゃんのママとパパ、知ってるの。さくらちゃんが、ここにいること。ぼくね。さくらちゃんは、おうちにかえってほしい。だって……。ママとパパ、かなしそうだよ……。さくらちゃん。だいすきだから、おねがいだから……。」よつばは、さくらに強く訴える。「………そんな。」さくらは崩れ落ちる。「なんでそんなことおしえたの。」さくらは、よつばを見上げる。「ごめんなさい……。さくらちゃんっ。パパとね、ちゃんと言わないとって。だって、ずっとさくらちゃんのパパとママは、寂しそうだったから……。」よつばは悲しそうにさくらを見つめる。「いやだ。いやだ。いやだいやだいやだ!!!」さくらは、後ずさる。「……。もういやだ。」さくらは、もうこれ以上自分を抑えられない。もう限界なんだ。やっと、やっと、自由になれたと思ったのに。やっぱり、家族からは逃れられない。呪縛のように一生離れないものだ。いや、家族のことが嫌いなワケでもないし、恨んでいるワケでもない。でも、一緒にいたら、居心地が悪くなっていってしまった。家族が悪いのか?何が悪いのか。環境が悪いのか?世界が悪いのか?なにがこんなにも悩ませるのだろう。
よつばは、さくらにこう言う。「帰ってっ!!おうちにっ!!」めずらしく、声を張ってよつばは叫んだ。と、すると。さくらは、よつばの胸ぐらを掴んだ。「うるさいうるさいうるさいっっ!!あんたはみんなから好かれてるからそんなことが言えるんだっっ!!あたしなんかは誰にも愛されてないっ!!もう……っ。だまってて」さくらは、よつばを突き飛ばす。さくらはよつばを勢いよく突き放し、よつばは、バランス感覚を失って倒れそうになる。ゆりは、そんなよつばの背中を、倒れない様に優しく支えた。「……お前って、ホント最低だよね。なんなの?そうやって人を傷つけることしかできないの?」アオキは、今までの自分に対してのことよりもイラッとした。自分のことよりも、他人のための方が動けると言うことだろう。さくらは、アオキを睨んで、また黒いツタを出す。「でたよ。ソレお前のせいでアヤシイやつにめぇつけられたし、どうしてくれんの。なんでもかんでもそんなふうになっちゃってさ。まともに話もできないの?そこまでだとは、思わなかったわ。」アオキは冷めた目でさくらを見る。さくらは、少しハッとして、悲しい顔をする。すると、あのツタも引っ込んでいった。さくらは、過呼吸になって、膝と手を床につく。「さっ、さくらちゃんっ!?大丈夫?!」ゆりは、さくらに駆け寄る。「……だ、だ、だ、大丈夫……ちょっと……。」さくらは、言葉を詰まらせて話す。「さくらちゃん……」よつばがさくらに近づいてきた。「ごめんなさい…」よつばは、涙を流していた。「……っ!!」さくらは、それを見て、びっくりした。よつばを泣かせてしまった。さくらは人を傷つけることしかできないダメな人間だ。さくなやコウジ、それにアオキも、よつばも。さくらはこの場から逃げたい。もう、何も見たくない。塞ぎ込んで誰にも見つからない場所へ行きたい。さくらは、そう思った。
「……。さくらちゃん、少し寝たら?寝ると、気分が変わってるよ。あ、私の場合マリアに変わってんのか〜……。」ゆりは子供たちの空気をなんとか変えようとボケて(?)みたが、特になにも反応がなかったため、黙った。「てか、ゆりさん遅刻じゃね?」アオキがチラリと言う。「うげっ?!………。でもなぁ。今の様子だとねぇ…キミたちだけにさせておくの不安だなぁ。……今日は…もういっか。」そう言ってゆりは、私服に着替えてきた。いつもの青いTシャツに灰色のズボン。もちろん、ジャージでもいいのだが、ゆりにはこの服の方が愛着もあるし、この服がとても快適だった。「はあ…。あ〜さいこ〜。やっぱ学校なんて行きたくな〜いっ。」ゆりはのびのびとのびをする。「……ねぇ。どうせだったら、温泉のとこにでも行く?お金ないから…温泉には入れないけどね。」ゆりはそう言った。子どもたちに少しでも空気を変えてほしくて……。ゆりは優しく微笑んで、続ける。「今日はあったかいよ。せっかくなら、外に出ようよ。」ゆりは微笑む。「うん。」よつばが、ゆりについていく。「……。2人は来ないの?」ゆりはさくらとアオキを見る。2人は、黙って立ち上がった。
「最近行ってなかったんだけど、やっぱりいいね〜温泉街は。」ゆりはごきげんにそう言う。でも、ちらちらと、同じ学校の人や通りがかる人たちの目を気にしていた。だって、今やっていることは側から見たらよくないことだから。ゆりは、慎重に歩く。できるだけ、目立たないようにこっそりと……。幸い……と言っていいのか、子どもたちは特に言葉を発さない。ただ、お互いに流れる景色を見つめているだけだ。
「あっ。クローバー。」
ちょっと後ろから声がする。「あっ!!だ、だ、だれだっけ……?!」よつばは、見覚えがあるけれど、名前がわからない。「ココロ。」ココロは、言い放つ。「ココロくんっ?!こんにちはっ!どうしたの?」よつばは首をかしげる。「あのさ。みつば…キミのキョーダイに会いたいと思わない?」ココロはどこか寂しそうに微笑む。「え……あいたいよっ。どうしたら、いいの?」よつばはココロを見上げる。ココロはゆりよりは背が高くないが、よつばたちよりは大きいからだ。「……………。くるっ?」ココロはニヤリと笑って言う。「えっ?」よつばは、よくわかっていない、「……それか、つれてこようか。」ココロはニヤニヤして言う。「でも、たぶんこれから、キミの知り合いは全員こっちに来ると思う……どうする?」ココロはよつばに手を差し出す。「おいでよ、クローバー。キミがいないと意味がない。ハナの声が……。ほしんだろ?」ココロはよつばを見つめる。よつばの視線を掴んで離さない。「ハナ……。ママ…。」よつばは、ココロの手を掴んだ。「あっ!?ちょいっ!!ま、ま、まって!!そんな……っ!!」ゆりはよつばの手を引っ張る。よつばは、びっくりしてゆりを見るが、よつばは悲しい顔をして、ゆりを見るだけだった……。「あなたたち、このおねえさんに捕まって。」ココロはさくらとアオキに言う。2人はなんだか意味がわからないけれど、ココロに従ってゆりのもう片方の手を掴む。すると、ココロは、あの謎のケータイを取り出した。そして、ココロが謎のケータイあお操作すると、よつばたちはその場からパッと消えて、気がついたらすぐ、まったく知らない場所にいた。「あれ……っ??よつば……??」みつばが、よつばを見て後ずさる。みつばは、子供の頃に着ていた服を、大きくなった今でも身につけている。まるで、子供のまま時が止まっているようだ。「みつばっ!?」よつばはみつばを見て、目を輝かせる。「やっぱり……ここにいたのか、みつば。」ココロは呆れて言う。「うそっ……やだっ…。そんな………。」みつばはひどく怖がっている。「パパに教えなきゃっ!!」よつばは、嬉しそうに言う。「やめて……かえってよ!!」みつばは不安定によつばに怒鳴る。「……。えっ。どうして?」よつばは悲しそうにみつばに聞く。「もうやめてっ……!!ぼくは、もうキミとは関わらないって決めてたのっ!!!だから、お願いだから……」みつばは泣いていた。「お前たちがあの人に見つかったらどうなるか、早く返してきてよっ!!ココロくんっっ!!!!」みつばはココロに叫ぶ。「無駄だよ。どうせ、アイツら……レイニーズに見つかってここに来てたんだから。なにをどうしても、結局会うことになってたさ。それが早まっただけ。」ココロは、なぜか嬉しそうに言う。「ふざけないでよ………っ。そんなの………」みつばの呼吸が荒くなる。「もう……どうして……」みつばは、床にへたれこむ。……様子がおかしい。なんだか、見たことがあるような光景にも覚える。「みつば、ママの声を持ってるの?」よつばはみつばに近づく。「……はぁ??……なんで………っ。」みつばは更に過呼吸になる。とてもしんどそうだ……。見ていて、辛い。「ママっ……ママっ……ごめんなさい……っ!!ごめんなさい……」みつばは、背中を丸めて、苦しそうに叫ぶ。すると、みつばから光が溢れ出した。
「ぼくのせいだからっ、」みつばは、顔を隠したまま叫ぶ。でも、姿だけは変わっていたのに。「ママぁ……ママぁ…」みつばは子どものように泣きじゃくる。「みつばっ!!それ、それがあればママに会えるよっ!!」「もう会えないよぉ〜……ぼくなんて、しんじゃったほうがいいんだよぉ〜……。だって、だれもきにしてないもん……ぼくになんて、だれも…っ。」みつばは、ずっと下を向いていて、何を言っているのか、あまり聞こえない。「みつば!!ダメっ!!パパが待ってるのっ!!早く、帰らなきゃっ!!」よつばはみつばをゆさぶる。「やめてっ!!いたい!!………もうほっといてよ!!ぼく、かえらない……。パパだって、ぼくのこときらいになるもん。もういいの……。」みつばは、床に寝っ転がる。「え〜!!やだよ!!パパこそしんじゃうよ!!おきてっ!!」よつばはみつばを起こそうと頑張る。「もぉ、ほっといて。ぼく、もうなにもしないから。もう、考えたくないの……」と、みつばは、耳を塞ぐ。「みつば……、ママ……………悲しんでるよ、キミがそんなで。」よつばは寂しそうに言い放つ。「ぼくが生まれなければよかったの。それならママは幸せだった。」みつばはぶっきらぼうにそう言う。「ママはぼくがいなければ……っ。こんなことにはなんなかった……っ。」みつばは、大粒の涙を流した。「みつば、だいすきだよ、」よつばはみつばを撫でる。……シロツメにされていたみたいに。「………。いいなぁ。お前……お前は……。あんなにともだちがいたの?つくれないと思ってた……なのに…。」みつばは、さくらたちの方を見て、更に泣き出した。そして、しばらくすると、ちょっと楽そうに微笑んだ。……すると、みつばは光に包まれて、元の姿になる。そして緑色の光がよつばの方へ向かってくる。やっぱり、生きてるみたいに……そう、いつも通りだ…。「みつば…。ありがとう。」よつばは、緑色の光を胸に留めた。ココロはそれを見て、ひどく驚いている様だ。「な、なんだ……それ?そんなこと……っ」ココロは言葉があまり出ない。「よつば。ぼく、ぼく、………。家を出てっちゃったの。だって、まだバカだったからっ……。」よつばは、そんなみつばを抱きしめる。「帰ろう。おうちに。パパ、待ってるもん。帰らなきゃ……」よつばは、またみつばをやさしくなでる。「………うん。」みつばは、やっと安心してよつばにもたれかかる。
みつばはずっと頑張ってきた。ずっと、ずっと、ずっと、ずっと……。
「………。」シロツメは時計を見つめる。コウジとさくながいなくなって何時間か。よつばが、帰ってこない……。電話しても家にケータイを置いていったみたいでできないし、学校にも連絡してみたが、行方知らずのよう……。シロツメは、手が震える。また……?シロツメは、冷や汗をかいていた。もう……。希望はよつばしかいないのに……。シロツメは、警察にも連絡してみたが、失踪している子供が多く、対応がおそくなるとのこ遅くなるとのこと。シロツメは、頭を抱え、目をギュッと瞑った。考えたくない……もう、考えたくない。頭が痛い……。シロツメは苦しかった。もうこれ以上、勘弁してくれと思った。……すると、彼の家のドアがノックされた。
コンコンコン、と鳴らされたノックに、シロツメは吸い込まれる様に歩み出す……。
そして、ドアノブに手をかけて扉を開く。
「ハナ……?」
そこには、ハナ……がいた。
「私は、ハナじゃない………。サキです。間違えないで……。」サキは、そう言って家に入ってきて、シロツメを隠す様にドアを閉めた。「あなた、ハナに会いたいでしょう?それに、子どもたちにも。なら、私と来て。」サキはシロツメをグイグイ引っ張る。「や、やめてっ!!き、キミは一体なんなんだ?!どこにだれ?なんでそんなにハナに似てるのっ……?!?!」シロツメは、引っ張るサキに抵抗して叫ぶ。「……私はハナの双子の妹。ただ、それだけ……。あなた、ハナに会いたくないのですか。おそらく今を逃したらもう、ハナは目覚めないわ。早くっ。はやくっ。」サキはシロツメの手を掴んで外に出る。「ちょ、ちょ、ちょ、ど、どういうこと……?!ま、まって!!」シロツメはサキに一生懸命叫ぶが、サキは聞こうとしない。そして、サキは足をトン。と一歩踏み出す。すると、シロツメとサキは一瞬で知らない場所へ辿り着く。「ここは、どこ?」シロツメは、しどろもどろに聞く。「気をつけて。あなたがいることがあの方に知られたら……。あの方はきっと………。いいえ、早く急ぎましょう。」サキはシロツメの手を勝手に引いて走り出す。「ま、待ってくださいって!!ちょっと!!聞いてるの?!」シロツメは抵抗もできずに持ってかれる。サキは、この状況に慣れているみたいだ。
「………。そうか。わかった。ガキどもはそっちにいるんだな?ありがと。バラちゃん。」ジョンは、ケータイ越しにニヤリと笑う……。バラみは見てしまったのだ。ゆりと、子どもたちを。「ごめんなさい。ゆりちゃん。」バラみは辛そうにその場を離れた。
「私を、見て。」
鏡を見て、彼女はぽつりと言う。
第27章終わり




