DIVA第22章〜第23章
第22章【ランはどこ……?】
リンは、危機的状況に陥っていた。それは、ついさっきのことだったのだ。
「ラン、ただいま。」リンは、靴を脱ぎ、家に入る。なぜか家は……異様に静かだ。リンは嫌な予感がしていた。
「ラン……?」
どこにもランがいない。リンは半ばパニックになった。でも、どこか冷静な自分もいた。ランが去ったのは、私のせい。だから、もう諦めよう。リンは、お気に入りの白いワンピースを着て、外に飛び出したところだ。
……一方、ランはきちんと小学校に行っていた。学校に行かなかった彼が、なぜいきなり学校に行ったのかって?それは、自分は姉のリンにとって、邪魔な存在だと思ったから。リンはランが学校に行っていないことに納得がいってないようだったし、どうせなら、とランはここにいるのだ。そうすると、ミルクがランに話しかけてきた。「あなた、見ないわね。転校生?」ミルクは首をかしげる。「ちがうよ。ぼく、学校に来てなかっただけ。」ランは無気力にそう答える。「へぇ〜そうなの?来てなかったんだ〜。」ミルクは、自分のことにしか興味がないので、特に理由を聞こうとはしなかった。でも、ランはそれが良かった。「……。ぼく、ここに居ていいのかなぁ……。だって、今まで来てなかったんだから、なじめないと思うし……」ランは手で口を触る。「大丈夫よ。みんな好き勝手にやってるわ」ミルクはランの机に座る。「……。そう?」ランはミルクを見上げる。「そーよ」ミルクは笑う。「そっか…」ランは、この人を見ていると、なんだか色々気にしているのが、馬鹿らしくなってきた。この人は、すごく自由じゃないか。人の机の上に座ったりとかして。ランは、少し安心した。キーンコーンカーンコーンと、鐘がなる。ミルクは無言で自分の席に戻った。
……ここまではよかった。そう、ランがいなくなってしまったのは、ここからだ。
ランがミルクと下校している最中……怪しい二人組が現れる。「こんにちはー!あなたたち、今からお家に帰るの?」アンブレラガールが二人に話しかける。「……は?はい、そうですが。」ランは冷たく返す。「そうですか……。少しお話してもいいですか?あっちの方で……」ウェザーボーイは、夢見町の海を指差す。夕方から海には近づけないはずなのに……?「でも、この時間帯は海なんて入れないわよ。」ミルクはレイニーズ二人を睨む。「大丈夫ですよ!一部のエリアだけ入れるようになってるのです!さぁさ、おいで!」アンブレラガールはにっこりと笑って二人の背中を押す。「あ、ちょっと〜!」ミルクは無理やり連れて行かれて苛ついた。ミルクはふと、ランを見る。ランは、少しほっとしたような、そんな顔をしていた。「……。」ミルクは、ランが心配になった。
「着きましたね!それじゃあ……お話すると、私たちは、居場所のない子どもたちを探しているんです。あなたたちには、居場所はあるかしら?」アンブレラガールは、さっきまで穏やかだったのに、いきなり獲物を見つけたかのような目でミルクとランを見る。「そんなキミたちを、僕達が助けてあげるんだ。もう疲れたでしょう。」ウェザーボーイは二人に手を伸ばす。「……あたし、帰る」ミルクは、足早にこの場を去ろうとした。でも、ランが付いてこない。ミルクは嫌な予感がして振り向く。「?!」……いない。神隠しにでもあったのか、と思うくらいだった。「………!どうしよう!!パパー!!」ミルクはとにかく急いで家に帰った。リンは、手ぶらで外に出たが、ケータイだけは持ってきていた。「……。」リンは、ふとケータイを見る。『アン おそくなるね。ごめん。』
明日まで帰ってこれないかも……リンは、返信だけ適当にしてケータイをしまった。もう、なんの感情も湧いてこない。ランはいないし、母親もいない。リンは、もう希望がなかった。リンは、あの人を探しに温泉街へ足を運んだ。リンが温泉街へ着くと、周りに人はいない。まるで、幻想的。リンは少し、儚く歩いてみた。なんだか、自分が映画のヒロインにでもなったみたいに。
すると、遠くから、彼女はやってきた。
赤いミニドレスを身にまとった少女が。リンは、彼女を蔑んだ目でみる。「こんにちは。」リンは、マリアの前に立つ。「おっ。リンだ。」マリアは、少し警戒する。リンは、最近様子がおかしいからだ。「ねぇ、マリアさん。あなた、誰に似てるか、わかったよ」リンは不気味に微笑む。「え……?」マリアは目を見開く。マリアに似てる人物………そんなの一人しかいない………マリアの心臓はドキドキしだす。もちろん、悪い意味で。「あなたは、ゆりちゃんに似てる……。この意味がわかる?」リンはマリアに不敵な笑みを浮かべた。「………。な、なんのことだあ?し、知らないなあ〜…!」マリアは口笛でも吹いてみた。でも、リンはマリアを冷たく睨む。マリアは、冷や汗をかきまくっていた。「ご………ごめ……」マリアは、震える手元を抑える。マリアは、怖かった。リンが……とてつもなく怖かった。リンは、それでもマリアを追い詰める。「うんう、なんでもないよ、うそ。」リンはなんてことないように話す。「……?そ、そうか………」マリアが視線を逸らすと、ゆりが目覚めた。「……え」目の前には、リンがいる。「……リンさ…」ゆりはいつもの調子で声を出したが、そこで留めた。「なあに?」リンはにっこりと微笑む。「リ、リン。」ゆりは、マリアのマネをしてみた。けれども、あまり似てないかも…。リンはそんなゆりを笑顔で黙って見つめる。その様子はとても不気味だった……。「あ、あのさぁ、お、おれはぁ……そのぉ…ふつうに話したくて……あなたと…でっ、でもぉ……おれは…。」ゆりは、不安になって、リンを見る。リンは表情を変えずに微笑んでいる。「そうなの?べつに、ふつうじゃない。私も、あなたも。」リンはゆりに顔を近づける。「ねぇ。あなた、そろそろ気づいたら?こんなことしてる場合じゃないって。」リンはゆりの顔を覗き込む。「え…?あ、あぁ。わかってるよ!…もちろん。」ゆりはよくわかっていない。「ゆりちゃん」リンは目をカッピラいて言う。「……!」ゆりは声が出せなかった。リンが…怖くて……リンは真顔でゆりを見つめる。リンの目は、死んでいた。ゆりは顔を真っ青にして焦って言う。「ち……ちがうよ!!ゆりじゃない!!わた……おれは!!」ゆりは泣きそうだった。「あーあ。そっか。」リンは冷たくそう返す。「え……?」ゆりは目を見開く。「じゃあ。」リンはそれだけ言って、去っていった。「……」ゆりはリンの白い背中を見ていることしかできなかった。
〜❤︎第22章終わり❤︎〜
第23章【今日は文化祭】
あのあと、ゆりはそのままベッドに戻り、眠りについた。
そのあと、目を覚ますと……よつばたちがいた。「あっ…。キミたち、今日は外に出ない方がいいよ。だって、なんかぁ…ヘンな人が探してるらしいし。それに今日は、文化祭だし…。人がいっぱいいる。」ゆりはうんざりして言った。文化祭なんて、出るわけないし。興味もない。
『俺、寂しんだよぉ』
アオハの言葉が、脳裏にチラつく……。「あ、あのさぁ……ちょっとここで待っててくれない?すぐ戻るから……。」ゆりはベッドから立ち上がり、パジャマ(私服)で歩き出した。少し様子を見てくるだけ……わたし、なに期待してんだろう。馬鹿みたい。
ゆりは、人ごみを避けて歩く。いつもと違う服を着た、学校の人たち。もちろん、授業以外は制服でなくともいいので、一度も見たことがないわけではないのだが、少し……特別感がある。みんなお店をやったり、ゆりのように1人で歩き回ってる人だったり、いろんな人がいた。ゆりは、自然と孤独感は感じなかった。子供の頃の、お祭りのような、自分が主役なワケでもないのに、なんだか、満足してしまう…そんな感覚だった。ゆりは、少しそこらに置いてある椅子に腰掛ける。人は、あまりいない場所に。やっぱり、1人でいるのは心地が良い。でも、寂しくないワケじゃない。でも、がんばって輪に入っても無理をして、馴染めないだけ。ただ単に惨めな気持ちになるだけなのだ。ゆりは、それを知っているから、人を避ける。人とは、本当にめんどくさい。でも、結局ゆりも人間で、めんどくさいやつだと思われているに違いない。ゆりは、ぼ〜っと天井を眺めた。学校の天井には、特になにもない。でも、なぜか心揺さぶられる。
「ゆりちゃん。」
優しい声がして、ゆりは、横を向く。
「うぇっ!?」
その声は…アオハだった……アオハの顔は、ゆりの顔の真横にあった。ゆりはドキドキして、身体中が熱い……というか。ゆりの声が大きすぎて、注目の的になっている……。ゆりは、ますます顔が熱くなるのを感じた。「ちょ…ちょっと…びっくりしたじゃん……。や、やめてよ……」ゆりは、アオハから顔を逸らす。「なんでよ。ゆりちゃん。」アオハはそんなこと、気にしていないみたいだ。「あ、あなたは、どれほどみんなに注目されてるか、知ってんの?」ゆりは少しイラついて聞く。「ん?ん〜。そんなの、どうでもいいじゃん。」アオハは、ゆりの隣のイスに座って、ゆりに手を伸ばす。
「一緒に行かない?」
ゆりは、この時、アオハをカッコイイと……思った。でも、なんだか気持ち悪くも思う。自分なんて、アオハには合わないし、目立ちたくないし……。ゆりは、アオハの手をどけた。「イッタ!」アオハは手を押さえる。「あっ。ごめん……。そんな強くする気はなかった……」ゆりは、黙り込む。「いーよ、大したことないしっ。」アオハはゆりの手を引く。「ちょっ!おいっ!は、は、離してっ!」ゆりは、必死にそう叫ぶ……でも、アオハは聞く耳を持たない………。「ちょい!聞いてんの?!私の話……!!」ゆりはアオハに叫ぶ。でも、アオハはこちらを見ることもしない。はあ。さいあく。ゆりはそう思った。
「ゆりちゃん。ほら、見て。」アオハの指差す方向には………リンがいる。「?!」ゆりは、どうしても嫌で後ろに下がる「ちょっと、ちょっと。なになになに。」アオハは慌ててゆりを追いかける。「……。ヤバイ」ゆりは、それだけいう。「や、やばい?」アオハは首を傾げる。「ヤバイ!!リンさんだっ!!」ゆりはまた後ずさる。「ちょいちょいちょいちょい。待ちなさいよ。なになになに。」アオハはまた追いかける。「………。な、なに?リンさんに話しかけろっての?」ゆりはイライラして言う。「え?む、むりなの?無理だったら……別にやんなくてもいいけどさぁ……。」アオハは、気を使う。「でも、最近リンちゃん、元気が全然ないんだよぉ……。だからさ、ゆりちゃんが何か話しかけたら元気になってくれるかなぁって。」アオハは微笑む。「……あなたが話しかけた方がいいんじゃない?アオハくんのが、人気だし……」ゆりは、アオハから目を逸らす。「………?人気とか、そうじゃないとか、そんなんどうでもいいじゃん。俺は……ただ、ゆりちゃんのが、良いと思って。バラちゃんでもいいんだけど。とにかく、来てくれて嬉しいんだっ!ゆりちゃんがっ!!」アオハは嬉しそうに言う。「あっ。そうだ。バラみさんは?」ゆりは、バラみを探そうと、キョロキョロする。「ふぇ?バラちゃん……来てるかなぁ。あの子も、ゆりちゃんとおんなじで、見ないんだよねぇ。」アオハもゆりと同じになってキョロキョロする。「そうか……。」ゆりは、諦めて、視線を床に落とす。
「ねぇ。俺のこと見てよ」
アオハは、ゆりの顎に手を当てて、持ち上げる。「?!?!」ゆりは後ずさる。「え」アオハは固まる。ゆりも、固まる。「………!!あっ、ご、ごめん……はは〜……ヘンなこと言っちゃったなぁ!!ほ、ほ、ほ、ほ、ほ、ほんとに来てくれて嬉しいんだっ!!それだけっ!!!」アオハは汗だくだ。彼の顔は、赤くなってた。ゆりも、そう。
「二人とも。いたの。」白いワンピースを着た、リンが、アオハとゆりを不気味に笑って見つめる。「アレ、リンちゃん、なんか髪の毛、黒くない?」アオハが、興味深そうにリンの毛先を指差す。「え、あ、ほんとだ。」ゆりも釣られて言う。「え……?」リンは不思議そうな顔をする。「髪でも染めた?リンちゃん、おしゃれだもんね〜!」アオハにっこりする。「……。アオハくん。黒い髪のほうが好き?」リンがそう言うと、心なしか髪の毛が毛先よりも上へ黒くなった気がした。「え……?いやぁ。髪色とかは別に気にしないかなあ」アオハは微笑む。「ふ〜ん。私、ゆりちゃんみたいな黒い髪、羨ましんだ。私のお母さんの髪の色も、黒くて綺麗なの。私も、そうなれるのかな?」リンはまた、不気味に微笑む。「なれるんじゃない?リンちゃん、かわいいもんね〜!」アオハのその言葉にゆりはモヤっとする。「かわいい……?ほんと?」リンの髪が、少し、白くなった気がした……。「あ、アオハくんってさ、好きな人とかいるの?」リンはアオハに上目遣いをする。「えっ」アオハは固まる。「そ、それは……ナイショ」アオハは、口に人差し指を当ててそう言った。「……へぇ。私、小学校の頃から、アオハくんのこと、気になってた。」リンは、アオハを見つめる。「え、それって、ホント?なんで、俺なんかに?」アオハは本気で分かっていないようだ。「え、だって。アオハくん、かっこいいじゃん。それに、優しいし。わたし、そういうところ大好き」リンは微笑む。ゆりは、そんなリンを見て、心が痛くなった。「へ、へぇ……そっか〜……。それはぁ、嬉しいなぁ。」アオハは苦笑いをする。「うん。」リンは、アオハを力強く見つめる。「ゆりちゃん。好きな人いないの」リンはすぐさまゆりに話題を振る。彼女目は、やっぱり死んでいる。「……え、い、いない。誰も。」ゆりは、リンから目を逸らす。「いないんだぁ。そっかあ」リンはゆりに不気味に微笑む。「……。」アオハは、少し寂しそうにゆりを見る。
「すみません!バラみさん見なかったですか?」シュガーがやってきて、ゆりたちに聞いてきた。シュガーは、息切れしていた。相当探していたのだろう。「え、知らないなぁ……。たぶん、どこかで休んでんじゃない?」アオハは言う。「……そうですか……。ありがとう。アオハくん。」そう言ってシュガーは去っていった。「……。バラみちゃん。来てるの?」リンはアオハに聞く。「え?知らないなぁ……。いるっ……ぽいけどね。あの感じだと。」アオハはそう言う。「そっかぁ。わかった。」リンは目を逸らす。「……。」ゆりは、とても不安であった。リンは、やっぱり様子がおかしい……。彼女の髪は、また黒くなり始めている。これは、気のせいなんかじゃないだろう。波が覆いかぶさるように、リンの髪は黒くなっていく。
「アオハくん。急がないと、時間が足りないよ。」リンはそう言った。「え、?あぁ。そうだね。時間ってのは、過ぎちゃうもんだもんね。」アオハは時計を見ながら言う。「うん……。」リンは目をぱっちり開き、笑顔でうなずく。
「ねぇ。ゆりちゃん。」
リンは、ゆりのことを見てはいるけど、どこか、遠くを見ているようだった。「なに、リンさん。」
「だから、それなんなんだよ!!」
リンは大声で怒鳴った。え…?え…?」アオハは…困惑している…。リンの髪の毛は、もっと黒くなった。このままだと、全部黒くなってしまいそう……。「……リ、リン……さ……」ゆりは、また言ってしまいそうで、口を閉ざす。リンが大声を出したことによって、みんなの視線がゆりたちへと向かれている。リンの髪は、完全に黒くなった。すると、リンを黒い光が包み込む。「もう、いいや、ぜんぶ……」リンは、ふらふらと歩き出す。「わたし、疲れちゃった。」リンは、長い、長い髪をゆりに伸ばす。「ドウシテ……どうして……」リンは、ぶつぶつ何かを言いながらゆりを引きずる。「あ、あ、あ、あ、アオハくん!タスケテ!!」ゆりは、アオハに助けを求めた。「え!?うん!!」アオハは、リンとゆりにむかって、とりあえず走りだした。
「アオハくん。」
リンは獲物を捉えたかのような目つきで、アオハを捉える。アオハは、リンの髪の毛でアオハの足を掴んで、自分のところまで持っていった。それを見た生徒たちは大パニックだった。「りりりりリンちゃん!?な、な、な、な、な、なにコレ?!」アオハは汗だくで答える。「大丈夫だよ、アオハくん。」アオハは、リンの髪に包まれていく……「待って!!リンさん!!離して!!」ゆりは、そんなアオハを見て、必死で叫んだ。リンは、ゆりの言葉など、全く聞いていない。
「…!」
アオハは、リンの髪の中から出てきた……真っ白な髪になって。「な、なに……それ…。あ、アオハくんを元に戻してよ!!」ゆりは、力なく叫ぶ。「いや。あなたって、ほんとに鈍感ね。アオハくんは、あなたが好きなのよ。でも、彼は渡さない。この子はわたしのもの」リンはアオハを抱きしめて、ゆりを睨みつける。アオハは、されるがままだった。「え……。」ゆりは、放心状態になった。「と、とにかく返してよ!!アオハくんは、なんにもしてないじゃない!!」ゆりは焦ってそう言う。とにかく、リンからアオハを離したかった。「そう簡単に返すとでも思う?………だったら、証明して見せてよ、あなたがマリアなのか」リンのその言葉を聞いて、ゆりは、心臓がドキドキした。マリア……そう、私は、マリア……
「……いいよ、見せてあげる。私はマリアだよ!!」ゆりは、三つ編みを解いて、ポニーテールに変えた。「しっかりと見て!!私は!!マリアっ!!!」
そんなゆりを見て、生徒たちは、ざわざわする。でも、リンだけは、反応が違かった。
「やっぱりアンタかっっっ!!」
リンのいつもの可憐で綺麗な声ではなくって、低く、ドスの効いた声で叫ぶ。リンは、髪の毛でゆりを掴む。「私のこと、きらいでしょう?あなたは、どうせ。でも、私もあなたが、だいっっっきらいっっ!!!!」リンは、ゆりを強く強く締める。「ふふっ、そう。そうかっ!!そんなの、もうどうでもいいよっ……!!私は、ただっ、……ただっ!!」ゆりは、泣きそうになって叫ぶ。
「声……。」よつばが、ぽつりと呟く。アオハとアオキは、目が合った。アオキは、ビビって目を逸らす。でも、アオハの中身は空っぽのはずだ、「……あおき。」アオハは、それだけ呟いた。
「リンちゃんっ!!お願い!話を聞いて!!」
今度は、バラみがやってきた。彼女のうしろには、シュガーがいる。「私の……っ。せい……。私が、3人の仲を壊したの。わたし、アオハくんのこと好きだったからっ、2人が仲良さそうなのが、うらやましっくて……。それに、アタシ、いつも、2人と遊べなくて……。悲しくてっ。」バラみは俯く。
3人の小学校時代
バラみは、小学生の頃は、おとなしめで、心優しくて、反抗なんか絶対にしない女の子だった。みんなに人気とかってわけではないけども、ゆりたちには好かれていた。 バラみは、3人のなかで、1番背が大きかった。なので、バラみはよくゆりたちにモデルだとか、アイドルだとか、そのようなことを言われていた。
小学一年生の入学した頃、バラみにゆりが話しかけたことからがきっかけだった。「なあにしてんの?」バラみが外で花を見ていると、ゆりが話しかけてきた。「え、おはなみてるの。」バラみは、そう答える。「ふ〜ん。そっかぁ。」ゆりは興味なさそうに答える。「かわいいねぇ〜」ゆりは、テキトーにそう言った。「うん…かわいい。」バラみは、ほっぺに手を当てて、そう答えた。「私、ぴんくが好きなの。」バラみは桃色の花を見て、そう答えた。「!ピンク?!わたしもっ!!」ゆりはそう言って、バラみの隣に座る。「え、そうなの?」バラみは、ここで初めてゆりをちゃんと見る。ゆりは、全身ピンクだった……。「そーだよっ!なかよくしよ〜ね〜!!」ゆりはバラみの手を引いて走り出す。「えっ?!ちょ、ちょっと〜!!」バラみはゆりに手を引かれて、みんなが遊んでいる場所に連れて行かれた。そこには、いろんな人がいて、いろんな遊びをしている。グループには分かれているが、バラみはなんだか、ホッとした。「リンちゃんっ!!」ゆりは嬉しそうにバラみを押す。「こいばなしよう!!この子も一緒にっ!!」ゆりは、にこにこして言う。「ちょっと!ゆりちゃんっ!!勝手にどっか行かないでよね!!……その子だあれ?」リンはバラみを興味深そうに見る。リンの周りにいる女子たちも、バラみが気になってしょうがないようだ……。
「わたしは……バラみ。」
バラみは、小さめの声でいう。ちょっと、はずかしくって。「バラみちゃん?いっしょにあそぼ〜!」リンは、笑顔で受け入れてくれた。「ほらっ!」ゆりは、バラみを座らせる。バラみは、少し恥ずかしかったけど、なんだか嬉しかった。「ゆりちゃん、その髪マネしていーい?」バラみがそう聞くと、ゆりは笑顔で「いーよっ!!」と答えた。
そして、ここから、バラみはおかしくなっていく。
バラみは、アオハに気を寄せていた。ある日、アオハは、サッカーで遊んでいた時に、ころんで、膝を擦りむいて怪我をした。アオハは、結構痛かったようで、涙を流していた。そこで1番に駆け寄ってきたのは、ゆりだった。バラみやリン、その他の女子は、まったく気が付いていない。アオハといっしょにサッカーをやっていた男子たちも、おどろきでなんにもできなかった……。「大丈夫?きゅうきゅうしゃ?」ゆりは、必死にアオハに聞く。「うんう。保健室。」アオハはゆっくり立ち上がる。長ズボンを履いていたはずなのに、なぜか、ケガをしてしまった。「いっしょにいこう!」ゆりは、アオハの手を引く。アオハは、そのままゆりについていく。
保健室に着くと、先生がいなかった。「アレっ!?いない?!」ゆりはびっくりした。「もう、先生呼ばなくていいよ、俺、そんな大した怪我してないし、」アオハはそっけなく言う。「えっ、そーなの?」ゆりは、心配そうにアオハを見る。「うん。絆創膏でもはっとけば、治るでしょ。」アオハはそう言う。「付けていいっ??」ゆりは、わくわくしながら言う。「え、いーけど、」アオハは、無愛想に言う。アオハは、イスにすわって、膝を出した。「あっっかーい!!」ゆりは、驚いた。「早くつけないと、もっとひどくなるかも。」アオハは、元気が出たのか、ゆりをからかう。「うんっ!!」ゆりは、絆創膏を探しに行った。「それじゃない。もっと奥!」アオハはゆりに叫ぶ。「これー?」「そー、それー」アオハはゆりを待つ。「ねぇ、なんか塗らないのぉ??わたしいつも、パパとママに塗ってもらってるんだけどぉ…。」ゆりは、困ってアオハに聞く。「いーよ。すぐ治るから、家でやるし。」アオハは、またそっけなく言う。
「……?」バラみは、保健室に立ち寄ろうとした。バラみは、保険の先生が好きで、よく話に来ている……でも、今日はいないみたいだ……。でも、聞き慣れた声が、あの中からする。アオハとゆりは、よくクラスでも話していた。バラみは嫌な予感がした……。こっそりと、保健室を覗く。
アオハとゆりは隣に座って、なんか、色々話していた。バラみは、それで一気にすべてを理解した。わたしは、、脈ナシだって。バラみは、家に帰っても、楽しいことがない。父親が厳し過ぎて、勉強以外のことができない。ゲームとか、絵本んとか、ぜんぶ学校や家の外でないとできない。だって、バラみの家にはないし、買ってももらえないんだから。それに、学校も、ゆりたちが居なければ、楽しくない。バラみは、精神的に追い詰められていた。
それから、バラみはゆりとリン、アオハなどを避け初め、先生や生徒に攻撃的になっていった。今までのバラみなら、そんな風になるはずがない。周りの大人たちは、彼女を助けたいと、いろんな手を尽くした。たとえば、スクールカウンセラーを呼んだり、家庭訪問をしたり……でも、バラみには、そんなものは効かなかった。いつしか、家にも帰らなくなり、親のお金を盗んでホテルに1人で泊まったり、カフェで夜を明かしたりと、バラみは良くない方向へと変わってしまった。みんな嫌い。大嫌い。バラみは、いつもそう思ってた。誰も、私のことなんて、見ていない。こんなことをしていても無駄……そんなこと、わかってる。わかってるのに。人間というものは愚かなものだ。何度も何度も繰り返してしまう。バラみちゃん…。」リンはポツリと呟く。「ゆりちゃん……と、アオハくんを離してっ!!お願い…。」バラみは震えた声で言う。リンは、バラみを見て、涙を流した。「リンちゃん……。」ゆりが、小さな、小さな声でそう呟く。「え」リンの暗かった表情が、パッと明るくなる。「あ…。うぅ…」リンはぽろぽろぽろぽろ泣きだした。リンは、抑えきれないこの感情を、どうしたらいいものかと、考える。でも、そんなもの、見当たらない。リンはアオハの方を見る。リンは、ゆっくり、アオハとゆりを離した…。すると……当然、落ちる。
「ぎぃやあああああ!!」ゆりは大声で叫ぶ。リンとバラみはハっとした。ゆりは、落ちていくアオハに近づいて、肩を掴む。アオハの髪の色は、元に戻っていた。「アオハくんのバカっ!!アンタ、いったいどういうつもりなのっ?!」ゆりはアオハにビンタをかます。「イタあああっ!!な、なんだよぉ!!俺、なんもしてないじゃん!!ゆりちゃんだって……んっ?」アオハは、ゆりの顔をまじまじと見る。「あれ、あの……き、キミは…。」アオハは驚いたような顔をする。と、リンが、アオハとゆりを、髪の毛でキャッチした。「そういうこと。」ゆりは……アオハにキスをした。マリアとしてじゃなく、ゆりとして。アオハは、驚きのあまり、固まる。バラみは真っ青になってそれを見ていた。リンも、それを見た途端、力が抜けて、ゆっくりと、崩れ落ちていった。髪は、元の白い髪に、お気に入りの白いワンピース。いつも通りのリン。そして、よつばの元に黒い光が……「声だ…!」よつばは、優しくその声を受け取る……。そして、声は、よつばの胸の中に消えていった。バラみは、その様子をチラリと見てしまった。この学校に子どもがいる。バラみは、ジョンたちの顔が、チラリと浮かんでしまった。「ゆりちゃあん……?なあに?これえ……。すばらしいねぇ……。」アオハは、酔っ払った人みたいになってしまった。「いい?今回きりだから。これからは二度としない。」ゆりは、冷たくアオハに言う。「うん……♡いいよ…♡」たぶん、アオハはゆりの言ってることをちゃんと聞いていない。
「リンちゃん……。」ゆりは、恐る恐るリンに話しかける。リンは、顔を上げた。「ごめんなさい……」ゆりがそう言うと、リンはゆりに飛びかかって抱きしめてきた。「いいいいイタイイタイ!」ゆりは、戸惑った。でも、リンは子どもみたいに大声で泣くだけで、何もしなかった……。ゆりは、リンの背中を優しく叩く。バラみも近寄ってきた。「…。もう、関わらないから。…迷惑だろうし…。」バラみがどこかへ去ろうとした時…ゆりが、無言でその手を掴んだ。バラみは、驚いて振り向く。「バラみちゃんっ!!一緒に居ようっ!!」リンは、今度はバラみに飛び込んだ。バラみはバランスを崩してぶったおれる。「く、くるしい……」バラみは、リンに覆い被される形になってしまった。でも、嫌ではなかった。
「リン?」
リンを呼ぶ声がする。
「……!ママ!!」
リンはゆっくりと起き上がり、リンの母親、アンの元へ走り出す。「……ランがいないんですって…?大変だったでしょう……?大丈夫よ、もう、あたし、ここにいるから……」アンはリンを抱きしめる。「ごめんねっ…。1人にして…。あなたにぜんぶ任せちゃった…」アンは、リンに釣られて泣きだす。「いいのっ…。ママ。私のせいで、ランはいなくなったの。」「そんなわけ、ないじゃない…あなたのせいじゃないわよ……。」アンは、リンをつよく、つよく抱きしめる。
バラみは、1人で廊下に立って、景色を見ていた。すると、遠くからやつがやってきた。「やぁ。キミ。ぼくだよぉ。レイニーズの。ねぇ。今日は何か見なかったかい?だって、相当面白いことがあったじゃん。」ジョンは、ご機嫌に言う。「面白いこと……?」バラみは、後ずさる。「そうさ。たとえば黒い光。見た?…見たよな。」ジョンは優しい口調から、冷たい話し方になった。「えっ…?あ、はい……み、見たは、見ました…。」バラみは、目を逸らす。「子どもも見たよね?」ジョンは脅迫じみた感じでバラみを攻める。窓ガラスに両手を当てて、壁ドンみたいにして、バラみの視界を自分だけにする。バラみには、そんなジョンが不気味で仕方なかった。なぜ、あんな子どもに執着するのか……さっぱりわからない。「……見ました。」バラみは、あまりのジョンの気迫に押されて、つい真実を言ってしまった。「よしよし。いい子だ。詳しく聞かせてもらおうか。」ジョンは、バラみの後ろ髪をふわっとさせる。まるで、自分の所有物みたいに。「……はい。」震える声で、バラみは返事をする。
コユキは、1人ジャージ姿で温泉街を歩いていた……夕方の温泉街はとても静かで居心地がいい。「すみません。」そんなコユキの背後で、声がした。コユキは、振り向いた……。
〜第23章終わり〜




