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第4話「賞金首」

 制限時間内に最もポイントを獲得したチームが勝利。

 そんなルールのバディズソウルには、観客を盛り上げるため、そしてゲーム性を高めるために、一つのシステムが導入されている。

 それが、賞金首システムだ。


 残り時間が10分になると、その時点のトップチームのリーダーが賞金首に指名される。

 通常キルポイントは1ポイントだが、賞金首をキルした場合は3ポイントが入る。チーム撃破ボーナスも存在するので、トップチームを単独チームで撃破出来れば5ポイントが加算されることになる。


 そしてこれが、僕とナツちゃんが狙っている逆転筋だ。

 現在のスコアは僕たちアルテミスが8に対して、トップのシザースが12ポイント。

 5ポイントあればちょうど逆転する計算だ。


 だが当然相手もそれは分かっている。

 シザースはこのエリアの強豪バディだ。

 二刀流のダブルセイバー。

 セイバー×セイバーという構成は人気も高く強力な構成だ。攻撃力、機動力が高く、こと近接戦においては最強格の構成だ。生存性も非常に高い。


 弱点となるのはペガキャスのような飛行構成くらいだが、その弱点は先ほど僕らが倒してしまった。全滅したチームは再エントリーは出来ない。


 後衛クラスにしか使えない索敵スキルがないのも弱点といえば弱点だが、シザースくらいになると経験でそれも補ってくる。

 だから……。


「ストライクアロー!」


 ライトさんを狙った不意打ち?の矢は、見事にパリィされてしまった。


「よう、ナツ。イントルーションとは重役出勤だな」


 ライトさんが話しかけてくる。


「こっちは花の女子高生なの!オールシーズン遊び歩いてる大学生と一緒にしないで!」


「よく言うぜ。週5でパレスに来てるくせに」


 軽口を叩き合いながらも駆け引きは始まっていた。レフトさんがジリジリとナツちゃんの視界から外れようとしている。

 ナツちゃんもそれに気づいて一歩下がる。

 ライトさんが軽口を続けた。


「それで?アキ坊はどこだ?」


「撃破されたわ」


 しれっと答えるナツちゃん。だが、ライトさんどころか、レフトさんも笑い出した。


「面白れぇ冗談だ。あいつがそんな簡単にくたばるかよ」


「全プレイヤーが死に絶えてもアイツだけは生き残るだろうぜ」


 僕はゴキブリか何か?


 だが、今の会話で二人が僕の位置に気付いてないことが分かった。索敵スキルがないセイバー×セイバーに僕の居場所を確かめる術はない。


 それでもライトさんとレフトさんは周囲の警戒を続けていたが、途中で諦めたように小さく笑った。


「ナツちゃん」


 僕が小声で念話する。

 ナツちゃんが返答をする前に、シザースの二人がナツちゃんに突進した。

 高くジャンプするナツちゃん。宙返りをしながら矢をつがえる。

 そして。


「アローレイン!」


 矢の雨が二人に降り注いだ。

 アーチャーの範囲攻撃スキル。僕が受けたフレイムアローの物理版だ。

 一発一発の威力は高くはないが、直撃すると0.5秒のスタンが発生する。僕の位置が掴めてない以上、この攻撃は受けにくい。予想通り二人はナツちゃんへの追撃を諦めて散会した。

 今だ。


「モード『ガイア』さらにモード『エア』」


 左手首の宝玉が黄土色に、右手首の宝玉が緑色に光った。

 機動力と物理攻撃力を強化しながら隠れていた岩から飛び出すとレフトさんに突撃する。

 シザースの最大の武器は抜群の連携力による四連撃だ。防御が飽和する手数の攻撃は相手を紙切れのように四散させる。

 だったら分断してしまえばいい。


 僕の攻撃に合わせてナツちゃんがレフトさんを狙って矢をつがえる。シザースのお株を奪う連携攻撃。

 このタイミングなら、どちらかの攻撃は防ぎきれないはずだ。


「ストライクアロー!」


《NATSU KILLED LEFT》

《TEAM ARTEMIS +1 POINT》


 ナツちゃんの矢がレフトさんの胸を貫く。

 光の粒子に変わりながら、四散する直前にレフトさんがニヤリと笑った。


 何故?

 これで僕たちは9ポイント。あとは賞金首のライトさんを二人がかりで撃破すれば、チーム撃破ボーナスも合わせて13ポイントでシザースの12ポイントをまくる。逆転勝利のはずだ。

 そこまで考えて、僕はシザースの狙いに気づいた。

 慌てて、周囲を見回す。

 ライトさんの姿が、消えていた。



 やられた。

 シザースの二人は最初から僕たちと戦う気はなかったのだ。

 索敵スキルがない二人は、僕たちからの不意打ちを一番恐れていた。だから、一度僕達に攻撃をさせて、位置を確認してから逃走した。

 本気で走るセイバーに追いつけるクラスは少ない。

 最速のクラスであるストライカーを除けば、ペガサスに騎乗したビーストマスターと、『ガイア』を重ねたミスティックくらいだ。

 だがミスティック単体では逃げに徹したセイバーを撃破するのは難しい。ましてや相手はあのライトさんだ。

 アーチャーも足が速いクラスではあるが、一度離されたセイバーに追いつくには時間がかかる。

 とりあえず今出来ることは……。


「ピィーー!」


 上空を一羽の鷹が旋回していた。

 アーチャーの索敵スキル『サーチホーク』をナツちゃんが使ったのだ。このスキルを使うと一定範囲、だいたいフィールド全体の4分の1ほど、にいる敵の位置が瞬間的に分かる。

 僕はナツちゃんを見る。


「北東にセイバーがすごい勢いで移動してる。これがライトさんだね。南東にガンナーが二人。たぶん同一チームかな。今見えるのはそれだけ」


 悩ましい状況だ。

 ライトさんを倒せるのが一番いいが、相手は僕たちを知り尽くしている。

 南東のガンナー×ガンナー、通称『ガンガン』は倒せるかもしれないが、それだとチーム撃破ボーナスを足しても3ポイントでスコアは12ポイント。

 スコアが同じ場合はキル数が多い方が勝利になるからたぶんシザースの勝ちになる。

 残り時間は4分を切っていた。『ガンガン』を倒してさらにもう一人を倒す。南東に行くなら、それが唯一の勝ち筋だ。しかし……。


「アキ君」

 ナツちゃんが僕の名前を呼ぶ。

 そこに不安の色はない。16年一緒にいる幼馴染だ。何を考えているかなんて手に取るように分かる。

 ナツちゃんの顔には、


『私たちならできる』


 そう書いてあった。

 OK。ならやることは決まっている。

 僕はにっこりと笑うと動き出した。



用語集


アローレイン:アーチャー範囲物理攻撃スキル。矢の雨を降らせる。中距離射程で、一本一本の威力はたいしたことはないが、直撃すると0.5秒のスタンが入るため、近接職の動きを止めるためによく使われる。


ストライカー:闘士。格闘武器を使って戦う前衛クラス。火力はセイバーより一段劣るが、全クラスで最高の機動力を誇る。


サーチホーク:アーチャーの索敵スキル。発動すると鷹が上空を旋回し、10秒間、索敵範囲内(フィールド全体のおよそ4分の1)にいる敵の位置とクラスが使用者のミニマップに表示される。


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