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第14話「激突」

「ヘイヘイヘイヘイ!」


 気分を上げながら、オレ、ことブリッツは見渡す限りの草原を疾走していた。

 開幕は上々だった。不意打ちでワンキルを取った後、森林地帯に潜むセイバーとビーストマスターのコンビをブチ倒し合計4ポイントを入手していた。

 ヒットポイントの被害は10%程度だ。

 巨狼フェンリル使いのビーストマスターはセイバーと協力して三方から攻撃を仕掛けてきたが、クーゲルの亡霊がよく働いてくれた。

 的確に発動するデバフは連携を分断し、逆にこちらに各個撃破の機会をもたらす。あの視界の悪い森でよくデバフを撒けたものだ。まったくたいした相棒だぜ。


「ブリッツ。前に出すぎだ」


 その相棒から念話が来た。ファントムの足は速い方だが、ストライカーはさらにその上をいく。オレは前方を睨みながら、クーゲルの言葉に従わずスピードを上げた。


「獲物を見つけた。オレがあいつを倒すまでに追いついてこい!」


 発見した敵はは一人。絶滅危惧種の重装ナイトだ。機動力がものをいうバトルロイヤルにおいてあんな鈍重クラスを選ぶなんてニューBか?

 おまけに相棒の姿もない。先ほどの森林エリアならいざ知らず、遮蔽のないこの草原エリアでは待ち伏せもないだろう。

 つまり、あいつは孤立したお間抜け(ヌーブ)ということだ。他のチームに見つかって横槍を入れられる前に倒す!


 オレはスピードを上げる。相手もこちらに気づいたようで、ハルバードが構えられた。


「そんなデカブツに当たるかよ!」


 オレはハルバードのリーチギリギリで横にステップを踏むと、相手が振り向きにくい利き腕側に周り込んだ。一気に懐に入ってスキルを発動させる。

『オリオンズベルト』

 二秒以内に三発パンチを命中させれば、三つの点が爆発し、内側からダメージを与えるご機嫌なスキルだ。こいつなら硬い鎧も関係ない。

 だが、一発目を放つ前に、オレは咄嗟にその場に伏せた。

 ブンっとその上をハルバートが通過する。

 野郎、オレを追って利き腕側にハルバードを振るうのではなく、逆方向から身体を回転して攻撃してきやがった。

 死角に入ったオレを追わない勇気と、相手の位置を予測する経験がないと出来ない攻撃だ。

 それにしてもなんて速度だ。カウンターをねじ込む隙もない。オレは発生した風圧を利用していったん距離を取る。だが、ナイトはそれを許さない。突撃モーションで追い討ちかけてくる。


(やべぇ、回避が間に合わねぇ)


 冷や汗をかいたところで、アーマーナイトの動きがガクン、と落ちた。

 見ると両足に黒い亡霊が絡みついている。

 ゴロゴロと転がり距離を取ってから立ち上がると、オレは振り返らずに礼を言った。


「助かったぜ。クーゲル」


「礼はいい。それよりもこいつは現時点の得点トップだ。油断するな」


 クーゲルの言葉にスコアボードをチラリと見る


 TEAM VIRTUS 6 POINTS

 LEADER ATEL

 BUDDY NO ENTRY


「おいおい、こいつソロかよ」


 確かにヒットポイントが高いナイトはソロエントリーと相性がいいと言われている。だが、この短時間で6ポイントも取っているのは、それだけでは説明がつかない。

 腕も確かなのだろう。


「嬉しいねぇ。楽しませてくれる!」


 オレはテンションを上げながら、アテルとかいう重装ナイトに突っ込んでいった。



「おいおい、マジかよ。」


 どれくらいアテルと戦っているだろう。たぶん1分も経っていないはずだ。だが、体感は既に10分以上に感じていた。

 こちらはろくに有効打を入れられていないのに、オレのヒットポイントは半分を切っている。クーゲルの援護がなければ五回は死んでいただろう。


 そう、恐ろしいことにこの重装ナイトはデバフを入れられてなお、オレを圧倒していた。

 機動性低下をつけられれば、突進スキルで間合いを調整してくる。攻撃速度低下をつけられれば、範囲スキルによる地形破壊で、こちらの体勢を崩す。

 リーチは長く、攻撃は強力。何とか懐に潜り込んでも、恐ろしい反応速度でオレの攻撃を捌いて反撃してくる。


 こんなことは初めての経験だった。

 前のエリアには全国大会の出場者だっていた。だが、チームワークに負けることはあっても、タイマン能力で負けたことは一度もなかった。

 オレは負けてない。

 ポイントで負けるたびにそう思って相方に文句を言った。タイマンではいつも勝っているんだ。負けるのは相棒が悪いせいだ。


 だが今オレは、初めて言い訳ができない相手と対峙していた。相手はソロだ。

 これで負けたら、オレが悪い。


 身体がひりついた。心が燃え上がる。だが、頭は恐ろしく冷えていた。


「クーゲル、防御力低下を二つだ」


「……本気か?」


 クーゲルが聞き返してくる。

 言いたいことはよく分かった。クーゲルはここまで、機動力低下と攻撃速度低下をメインに亡霊を管理している。

 それでなお、オレは劣勢なのだ。

 万全の体勢でアテルに攻撃されたら、長くは保たないのは自明だ。


「一発勝負だ。長期戦になったらどうせやられる。ゴーストを入れたらギリギリまで距離を取れ」


 ナイトには投擲スキルがある。こいつなら隙をついてクーゲルから落とそうとしてきてもおかしくない


 珍しく返事に逡巡があった。

 いつもはまったく迷わねえくせに。

 だが、最後にはオレの意思を尊重してくれたみたいだ。


「了解した」


 亡霊が2つ、アテルに放たれる。そしてクーゲルが、ゆっくりと後ろに下がっていく。


 オレは拳を合わせた。


「おい、デカブツ!勝負といこうぜ」


 オレは両足を開いて大地を踏み締めた。

 フットワークを捨てる構え。

 ストライカーの最大攻撃力のスキル。

 スコーピオンスティングだ。

 相手の攻撃を利用して反撃を入れる、カウンタースキル。

 当然、相手が突っ込んで来なければまったく意味のないスキルだが、アテルはオレの意図を察したかのように突撃チャージの体勢をとった。


(ありがてえ)


 笑みが溢れる。

 アテルは強ぇ。タイマンならオレ以上だ。それは認めてやる。だが、オレはまだ負けてない。

 本当に強いのは、最後に立っていた奴だ。


「来いやぁっ!」


 オレの叫びに呼応するように、アテルが突っ込んでくる。防御を捨てた全力のチャージ。

 リーチは相手が圧倒的に上だ。だが、それをかわせば、必殺の一撃を叩き込める。

 スコーピオンスティングと防御低下のゴースト2つ。いかにヒットポイントが高かろうが、これが決まれば一撃で倒せる。


 距離10m。

 風切り音と踏み込みの音が耳に響く。

 ビビるな。

 半身の体勢を取る。


 距離5m。

 アテルの間合いまであと3mを切った。

 アテルを見る。フルフェイスのヘルメットで表情は見えない。体勢は低く、ヘルメットから生えた二つの角は牛のようだ。


 黒牛


 そんな単語が頭によぎる。


 2.5m。

 目の前に巨大な槍先と両刃の斧。


(ここだっ)


 オレは左拳で、斧の刃を叩く。

 軽く、ノックをするように。

 だがそれだけで、ハルバートの軌道が僅かに逸れた。


 切先がオレの頬を切り裂く。

 だが皮一枚。ダメージはほとんどない。


(もらった!)


 全力の右拳ストレートをアテルの顔面にぶち込む。

 そう確信した瞬間。


 どんっ。


 強い衝撃が、オレの腹部を貫いた。


 フルフェイスのヘルメットから生えた2本の角、その一本が、オレの腹部を貫いていた。


《ATEL KILLED BLITZ》

《TEAM VIRTUS +1POINT》



 第2部「ブリッツ編」 完


モチベーション維持のために、ブクマ、評価、感想は随時お待ちしておりますので、面白いと思って頂けましたら、よろしくお願いします。

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