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第9話「偵察」

 それは、圧倒的だった。

 その名の通り暴風が、稲妻のように蹂躙していた。

 チンピラ、いや、ブリッツのクラスは予想通りストライカーだった。高速で接近し後衛に高威力のスキルを叩き込む。前衛には手数で勝負し、削り倒す。ストライカーのお手本のような動きだ。

 だが、教科書通りの動きは対戦相手からしてみれば読みやすい。普通なら対策だって立てやすいだろう。

 エリアのトップ3のうちの2チーム、アルテミスとシザースが参加していないとはいえ、開始15分で既に15ポイント。これは異常な数字だった。


 ブリッツに狙われたアーチャーが距離を離そうと矢をつがえる。


 アローレイン。


 前衛殺しのこのスキルは、パリィができないストライカーにはてきめんの効果がある。発動されたら距離をとって回避するしかない。

 だが、アーチャーがスキルを発動する前に、黒い靄のような塊がブリッツの横を駆け抜け、アーチャーの腕に絡みついた。スキルの発動が遅延する。アーチャーの顔が焦りに歪んだのが見えた。遅延時間は1秒。

 ストライカーが接近するのには充分すぎる時間だった。

 はたして、ブリッツはアーチャーに密着。短剣を抜く間も与えず、三連コンボを叩き込む。

 ストライカーの攻撃スキル「オリオンズベルト」だ。1発だけなら大したダメージはないが、3発全てが入ると致死級のダメージになる。ブリッツは難なく全ての拳を叩き込むと、アーチャーのプレイヤーが空中で四散した。


《BLITZ KILLED LEGOLAS》

《TEAM ELIMINATED BONUS》

《TEAM STURMWIND +2 POINTS》



「亡霊使い(ファントム)ですか」


 僕の視線はブリッツでなく、ブリッツの後ろに影のようについていくバディに注がれていた。


 ファントムは特殊系に分類されるクラスだ。ミスティックは自身を強化することで戦うが、ファントムは相手を弱体化させることで戦う。格闘武器しか装備できず、攻撃スキルは接触時にのみ使用可能なDOTスキルしかないためお世辞にも火力は高いとは言えない。使用率は9%で6位。

 だがこのクラスは上位勢から、最強クラスの一角とすら見られていた。それは何故か?

 ファントムは二体の亡霊を使役することで、弱体効果デバフをかけることができる。そして、この亡霊によるデバフは、ほとんど必中なのだ。

 2秒以上相手を視界に収めるなど、発動に条件はあるが、放たれた亡霊は魔法攻撃のように自動誘導で対象に飛び続け、パリィは出来ない。

 与えるデバフは微々たるものだが、その微々たる弱体が高速戦闘中にどれだけ致命的かは、先ほどのアーチャーを見ればよく分かるだろう。


 もちろんこのクラスにも弱点はある。その最たるものが全クラス中最低の攻撃力だ。機動力はセイバー並でデバフと相まって単体の生存力は高い。しかしどうしても攻撃が味方に依存するため、味方が集中攻撃を受けるとジリ貧になりがちなのだ。


「だけど、このチームは……」


 ブリッツは巧みだった。

 ストライカーの機動力を活かして、集中攻撃されない位置取りを徹底している。時にはファントムにヘイトを押しつけ、自分の安全を確保。そこから猛烈な勢いで、相手に全力攻撃を叩き込む。

 さらに特筆すべきはファントムの対応の速さだ。ファントムはミスティックに似ている。戦況に合わせて、二つの亡霊を誰にいつ飛ばすかを常に考え続けないといけない。この辺りが強いのに使用率が伸びない要因なのだが、クーゲルという名のファントム使いは戦況を的確に先読みして、亡霊を配置し続けていた。


「これ、即席ですか?」


 ライトさんの方を見る。


「朝の第1バトロイの時はここまで連携は取れてなかったらしい。だが、第2、第3と修正してきた。今ではこの通りだ。」


 恐ろしいことだ。

 バディズソウルの連携は一朝一夕で築けるものではない。それが出来ているとしたら、チームメンバーの両方がゲームシステムを深く理解していることになる。


「ありがとうございます」


 ライトさんにお礼を言う。さすがにこれとぶっつけ本番で当たっていたら、危なかったかもしれない。


「いや、いい。俺たちもあいつの態度には腹が立ってたしな」


 不敵に笑う顔が頼もしかった。

 これで情報は揃った。あとは僕の仕事だ。ブリッツと鉢合わせするのも面倒なので、僕はすぐにパレスを出ることにした。

 背後では、シュトゥルムヴィンドの勝利を告げるアナウンスが流れていた。



用語集


オリオンズベルト:ストライカーの攻撃スキル。3回の攻撃を拳で放つ。一撃の威力は大してことはないが3発全て命中すると、命中箇所が共鳴して大ダメージの爆発を起こす。

前衛クラスに全弾命中させるのは難しいため、主に後衛殺しに使われる。


ファントム:亡霊使い。2体の亡霊を使役して対象に弱体効果デバフを付与するクラス。

火力が低く戦況を読む力が必要になるため使用率は高くないが、自分は使いたくないが相手に使われたくないクラスNO1に選ばれるほど強力なクラスである。


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