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出来損ないと呼ばれ追放された魔王の子供は国を創造し王となる  作者: 蒼崎しんのすけ


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第三部 第一章『最初の世界』

第三部 第一章『最初の世界』


新世界暦――一年目


世界管理議会の議長クロノスから与えられた期限は、一年


一つでも世界を救えなければ、すべての世界が終わる


その宣告から三日後


リベルタ中央塔


アーク、ゼル、ノア、イリス、そしてオルディスとネメシスが一つの部屋に集まっていた


テーブルの中央には、巨大な立体地図が浮かんでいる


そこには無数の世界が光の球として並んでいた


赤


青


緑


白


そして――黒


ノアは黒い世界を見つめる


「……あれ、もうすぐ消える」


イリスが観測する


「崩壊まで三十六時間」


ゼルが立ち上がった


「じゃあ、そこからだ」


アークは地図を見る


「最初の世界を救う」


オルディスが頷く


「世界番号一〇八」


「通称――灰色世界」


灰色世界


転移門を抜けた瞬間


四人は言葉を失った


空が灰色だった


大地も灰色


建物も灰色


植物もない


川もない


そして、人々も――


全員が同じ方向を向いて立っていた


動かない


喋らない


笑わない


泣かない


ゼルが眉をひそめる


「……死んでるのか?」


イリスが観測する


「生存しています」


「しかし……」


イリスの言葉が止まる


ノアが一人の少女を見る


少女は地面に座り込み、空を見上げている


ノアが近づく


「こんにちは」


少女は反応しない


もう一度声をかける


「ねえ」


少女がゆっくり振り向く


そして、初めて言葉を発した


「……選んじゃいけない」


ノアは目を見開いた


選択を奪われた世界


オルディスが説明する


「この世界では かつて大規模な戦争が起きました」


「人々は争い 憎み、奪い合った」


「そこで当時の王は ある装置を作った」


アークが聞く


「装置?」


「人間から“選択”を取り除く装置です」


沈黙


「争いをなくすために、全員の意思を統一した」


ゼルが吐き捨てる


「それで平和になったのか?」


オルディスは首を横に振る


「平和にはなりました」


「しかし――」


「誰も 自分の人生を選べなくなった」


ノアは少女の隣に座る。


「あなたは 何したい?」


少女は困った顔をする


「……分からない」


「したいことを考えることも 禁止されているから」


王都


一行は灰色の王都へ向かった


中央には巨大な塔が立っている


塔の頂上には、巨大な結晶。


イリスが見上げる


「世界全体の意思を制御している」


ゼルが拳を握る


「壊せばいい」


オルディスが首を横に振る


「壊せば この世界の精神構造そのものが崩壊します」


ゼルが舌打ちする


「面倒くせぇな」


その時


塔から声が響いた


「外来者へ告げる」


「この世界に自由は必要ない」


塔の扉が開く


中から、一人の少女が現れた


白い服


灰色の瞳


胸元には王家の紋章


彼女はこの世界の王女だった


「私は この世界の管理者です」


アークが問う


「君も自由を失っているのか?」


王女は微笑む


「いいえ」


「私は自分の意思で この世界を管理しています」


ノアが首を傾げる


「じゃあ……自由なの?」


王女は答えた


「もちろん」


「私は皆のために 正しい未来を選んでいます」


イリスの瞳が揺れる


「……それは選択ではない」


王女が振り向く


「なぜ?」


イリスは静かに言った


「他者の選択を奪っているから」



王女が手を掲げる


灰色の空から無数の光が降り注ぐ


ゼルが前へ出る


「来るぞ!」


巨大な光の刃が地面を切り裂く


ゼルは真正面から受け止めた


「こんなもん――!」


断界が走る


光の刃を切断する


しかし切った瞬間、ゼルの身体が止まる


「なっ……!」


王女の能力は攻撃ではない


相手の行動を「決定済み」にする力


ゼルが動こうとする


だが身体が動かない


「俺が……動けねぇ……!」


ノアが未来を見る


「ゼル 三秒後に右!」


「分かった!」


「違う!」


イリスが叫ぶ


「その未来自体が すでに固定されている!」


ノアが息を呑む


「じゃあ……未来を見ても意味がない」


イリスが頷く


「だから――」


二人は互いを見る


「未来を選ぶ」


観測者の新しい力


ノアが目を閉じる


未来を見ない


イリスも観測を止める


王女が戸惑う


「何をしているの?」


ノアは答えた


「未来を見ない」


「今決める」


ノアが右へ走る


イリスは左へ走る


二人は打ち合わせをしていない


それでも――


互いの行動を信じていた


王女の固定能力が二人を捉える


だが、固定する未来がない


二人はその場で選択し続ける


一歩


また一歩


無数の可能性を生み出す


イリスが叫ぶ


「ノア!」


「うん!」


二人の観測能力が重なる


今度は未来を見るためではない


未来を発生させるために


アークのクリエイト


アークが両手を地面につく


「《クリエイト》――」


灰色の大地に光が走る


「――新生樹!」


何もなかった大地から一本の木が生える


枝が伸びる


葉が生まれる


そして――


花が咲いた


灰色世界で、初めての色


赤い花だった


人々がざわめく


「……赤?」


「色が……」


「綺麗……」


王女が震える


「そんなものは必要ない」


アークは答える


「必要かどうかを決めるのは お前じゃない」


王女の涙


王女の目から、一粒の涙が落ちた


彼女自身も驚いている


「私は……」


「泣く必要なんて……ない」


ノアが近づく


「泣いていいよ」


「笑ってもいい」


「怒ってもいい」


「自分で決めていい」


王女は唇を震わせる


「……怖い」


それが、彼女が初めて自分で選んだ言葉だった


「怖いけど……」


王女は塔を見上げる


「それでも、この世界を変えたい」


新世界


王女が自ら制御装置を停止する


巨大な結晶が砕ける


世界中の人々が、一斉に動き始めた


泣く者


叫ぶ者


笑う者


怒る者


誰もが好き勝手に動き始める


ゼルが笑う


「やっと世界らしくなったな」


アークも笑った


だが、その瞬間


空に文字が浮かぶ


世界一〇八――救済条件達成


存続を承認


ノアが空を見る


「一つ……助かった」


イリスが頷く


「残り――一万七千九百九十九」


ゼルが固まる


「……そんなにあんのかよ」


オルディスが苦笑する


「一年しかありません」


ネメシスは黙って空を見る


やがて、小さく呟いた


「……間に合う」


アークが振り返る


「なぜそう思う?」


ネメシスは答えた


「君たちは 一つの世界を救うために戦った」


「ならば――」


彼は初めて笑った


「一万八千の世界を救うことも きっと不可能ではない」


その瞬間


遠くの宇宙で 一つの世界が赤く染まった。


イリスの表情が変わる


「……次の世界」


ノアが立ち上がる


「いこう」


アークたちは再び歩き出す


新世界暦一年目


世界を巡る旅が始まった

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