第二部 第五章『終焉の門』
黒い門が開く
その先には闇はなかった
光もなかった。
そこにあるのは──
**「終わった世界」**だった
滅びた大地
崩れた文明
誰もいない街
無数の世界の最期が、一つの空間へ積み重なっていた
ネメシスは静かに振り返る
「これが《終焉の門》
「消去された世界の墓標だ」
アークは拳を握る
「……墓じゃない」
「お前たちが殺した世界だ」
ネメシスは否定しない
「その通りだ」
「私は執行した」
世界の叫び
門の奥から、微かな声が響く
助けて
帰りたい
生きたい
ノアは耳を塞ぐ
「違う……」
「消えてない!」
イリスも驚く
「魂の情報が保存されている……」
終焉の門は、世界を消す装置ではなかった
世界を永遠に封印する監獄だった
消えたと思われていた世界は
終わり続ける時間の中へ閉じ込められていた
オルディスの告白
オルディスが前へ出る
彼は膝をついた
「……申し訳ありません」
アークが振り向く
オルディスは苦しそうに語る
「私は何百もの世界を消去しました」
「救われたと思っていました」
「ですが……」
彼は門を見る
「彼らは終われなかった」
沈黙
ネメシスは静かに答える
「終われないから管理する」
「それが議会の役目だ」
オルディスは首を振る
「違う」
「これは救済じゃない」
アークの決断
アークは終焉の門へ歩く
ゼルが止める
「兄上!」
アークは笑う
「クリエイトは壊れた世界を直す力だ」
「だったら──」
門へ手を触れる
白い光が広がる
《クリエイト・世界再接続》
一つの滅んだ世界が震える
草が生え
空が青く染まり
止まっていた時間が動き始める
門の中から歓声が響いた
「生き返った……」
ネメシスが初めて後退する
「世界を……復元した?」
終焉議員の過去
ネメシスは静かに目を閉じる
「私は昔……」
誰も知らない記憶
彼もまた、一つの世界の住人だった
戦争で世界は崩壊した
誰も救えなかった
そこへ議会が現れた
「世界を終わらせよう」
「苦しみは終わる」
若き日のネメシスは、その言葉を信じた
だから執行官になった
二度と同じ悲劇を生まないために
しかし、その方法しか知らなかった
希望
ノアがネメシスの前へ歩く
「あなたも……」
「助けたかったんだね」
ネメシスは答えない
長い沈黙の後、
小さく呟く
「……そうだ」
ノアは微笑む
「だったら」
「一緒に助けよう」
その言葉に、ネメシスの瞳が大きく揺れた
彼が何百万年もの間、一度も聞くことのなかった言葉だった
その瞬間
終焉の門の最深部から、低い笑い声が響く
「実に愚かだ」
門の奥で、巨大な瞳がゆっくりと開く
オルディスの表情が凍りつく
「まさか……」
「封印されていた《議長》が目覚めた……!」
終焉の門は監獄ではなかった
"それ"を封じるための檻だったのである




