初戦
都市リベルタの外縁。
見張り塔から警報が鳴る
「空間異常発生!!」
空が歪む
黒ではない
透明な裂け目
そこから現れたのは、
形の定まらない存在
影が重なったような怪物
周囲の地面が“意味を失う”
石が砂に、
砂が霧になる
ゼルが舌打ちする
「虚無の残響か……!」
アークが頷く
「本体は消えたが、
不安定な断片が残ってる」
その時
ノアが二人の間から覗く
「……いたい」
怪物の存在そのものが、
世界を傷つけている
ノアにはそれが見える
怪物が腕のような影を振る
空気が裂ける
ゼルが前に出る
断界で迎撃
衝突
空間が弾ける
だが怪物は再構成する
「再生早ぇな!」
アークが術式を展開
創造壁で抑える
それでも崩れ続ける
ノアの手が震える
「……こわい」
彼女の視界には、
無数の未来が見えている。
破壊
崩壊
死
初めての“恐怖”
怪物が都市側へ向く
ノアの視界が爆発する
未来が何千も分岐する
彼女は混乱する
「わからない……!」
時間感覚が崩れる
立てなくなる
アークが叫ぶ
「ノア!見るな、感じろ!」
ゼルが怪物を引きつける
「全部見る必要ねぇ!」
ノアの呼吸が荒い
無数の未来の中で――
一つだけ
“誰も傷つかない道”
細い糸のような未来
ノアはそれを見る
ノアが一歩踏み出す
世界が静かになる
彼女の瞳が光る
「そこ……ちがう」
怪物の攻撃が“ずれる”
振るわれた影が、
存在しなかったことになる
ゼルが目を見開く
「未来を書き換えた!?」
怪物が暴れる
ノアは手を伸ばす
「あなた……ほどけてる」
彼女は怪物の“存在構造”を見る
不安定な観測の塊
ノアは優しく触れる
「ここ」
未来を一つに固定する
怪物が静止する
崩壊ではない
安定
影が解け、光の粒になる
空に消える
戦場に沈黙が落ちる
ゼルが息を吐く
「……やったのか?」
アークがノアを見る
彼女はふらつく
「おい大丈夫か」
ノアは小さく笑う。
「いたく……なくなった」
意識を失う。
塔の医療室。
ノアが目を覚ます。
アークが微笑む。
「勝ったぞ」
ゼルが肩をすくめる。
「初陣であれは反則だ」
ノアは考える。
「……たたかい、いや」
アークが頷く。
「それでいい」
ゼルも笑う。
「勝つ方法はいくらでもある」
ノアは窓の外を見る。
都市はいつも通り動いている。
彼女は理解する。
戦うとは――
壊すことじゃない。
守る未来を選ぶこと。
ノアは小さく言う。
「また、えらぶ」
二人は頷いた。




