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出来損ないと呼ばれ追放された魔王の子供は国を創造し王となる  作者: aosakishinnosuke


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11/12

暴走

その日は、あまりにも普通だった。


市場の喧騒。

パンの匂い。

子供の笑い声。


ノアは広場の噴水に座り、

水の跳ね方をじっと見ていた。


ぽつり、と呟く。


「……いっぱい」


視界に未来が溢れていた。


今日は静かに収束しない。


分岐が増え続けている。


彼女の呼吸が浅くなる。


「とまらない……」


突然。


世界が“二重”になる。


人々の動きがぶれる。


同じ人が違う行動を同時にして見える。


ある未来では笑い、

別の未来では泣いている。


ノアの瞳が白く染まる。


「ぜんぶ……見える」


都市全体の未来が彼女に流れ込む。


処理できない量。


噴水の水が空中で停止する。


時間が不規則に跳ねる。


人々がざわめく。


「何が起きてる!?」


ゼルとアークが到着する。


ゼルが叫ぶ。


「兄上、空間がおかしい!」


街の一部が“別の結果”になる。


壊れていない建物が崩れる未来と、

無事な未来が同時に存在する。


アークが歯を食いしばる。


「ノアが全部観測してる……!」


観測=現実の確定。


だが彼女は今、

確定させられずに重ねている。


都市が多重化する。


ノアが震える。


「えらべない……!」


未来の重みが現実を裂く。


空に亀裂。


地面がずれる。


都市が“可能性の層”に沈む。


ゼルが断界を展開。


「抑えきれねぇ!」


アークがノアへ駆ける。


「ノア!!」


彼女の周囲だけ、

時間が無限にループしている。


涙が空中に止まる。


「こわい……

ぜんぶ、こわれる……」


彼女は未来の崩壊を見ている。


だから止めようとして――

逆に重ねてしまう。


アークはノアの手を握る。


「全部見る必要はない」


ゼルも来る。


「一個でいい」


ノアが震える。


「でも……まちがえたら?」


アークが微笑む。


「間違えても直せる」


ゼルが笑う。


「俺たちがいるだろ」


ノアの視界に無数の未来。


その中に一つ。


三人が立っている未来。


街が無事な未来。


彼女はそれを掴む。


「……これ」


ノアの瞳が静かに光る。


未来が一本に収束する。


重なっていた都市が戻る。


空の亀裂が閉じる。


水が落ちる。


時間が動き出す。


人々が息を呑む。


崩壊は止まった。


ノアの力が静まる。


彼女は倒れる。


ゼルが抱き止める。


「よくやった」


医療室。


ノアが目を覚ます。


小さく呟く。


「えらぶの、こわい」


アークが頷く。


「だから一人でやらなくていい」


ゼルが笑う。


「次は俺たちも選ぶ」


ノアは安心したように目を閉じる。


観測の力は消えない。


だが彼女は知った。


未来は――

一緒に決められる。


窓の外で都市が動く。


静かに。


確かに。

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