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出来損ないと呼ばれ追放された魔王の子供は国を創造し王となる  作者: aosakishinnosuke


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10/12

誕生

《観測の欠片》が光ったのは、

誰もいない深夜だった。


中央塔の空気が震える。


結晶の内側に、小さな脈動。


トクン。


トクン。


まるで――心臓。


翌朝、塔の守衛が叫ぶ。


「だ、誰かいるぞ!!」


結晶が割れていた。


破片は消え、

そこに一人の少女が眠っていた。


黒髪。

透き通る肌。

胸が、確かに上下している。


呼吸している。


少女はゆっくり目を開ける。


瞳は深い灰色。

底に星が瞬いているようだった。


アークがそっと声をかける。


「……聞こえるか?」


少女は彼を見る。


瞬間。


空気が震える。


アークの頭に感覚が流れ込む。


驚き

温度

心拍


言葉ではない。


“世界を初めて観測する感情”。


少女は小さく口を動かす。


「……きれい」


それが最初の言葉だった。




都市は騒然となる。


「虚無の残骸だ」

「奇跡だ」

「危険かもしれない」


ゼルは腕を組む。


「本人は無害だろ」


少女は街を見るだけで笑う。


人の顔をじっと観察し、

鳥の飛び方に拍手し、

雨粒に驚く。


アークがしゃがみ込む。


「名前、要るな」


少女は首を傾げる。


「なまえ?」


ゼルが笑う。


「お前、世界見に来たんだろ」


アークは微笑む。


「じゃあ――ノアだ」


少女はゆっくり繰り返す。


「……ノア」


嬉しそうに笑った。


数日後、異変が起きる。


市場で落ちた皿が割れる――直前。


ノアが瞬きをする。


時間が“にじむ”。


皿が落ちない未来へ滑る。


皿は無事に机へ戻る。


商人が固まる。


「……え?」


ノアは首を傾げる。


「わるいの、なくした」


アークは息を飲む。


「未来を……観測し直した?」


ゼルが吹き出す。


「兄上より反則じゃねぇか」


だがノアは疲れたように座る。


「いっぱい、むずかしい」


力はまだ幼い。



ノアは街を歩く。


人々は最初こそ警戒するが、

すぐに変わる。


彼女は誰かの悲しみを見ると、

そっと手を握る。


それだけで心が軽くなる。


怒りをぶつけられても、

ただ見つめる。


相手は言葉を失う。


観測されると、自分を理解してしまう。


都市は気づく。


この子は破壊でも創造でもない。


理解そのものだと。



夜。


塔の屋上。


ノアが空を見る。


「……まだ、いる」


アークが隣に座る。


「何が?」


「そと。

いっぱい、こわい」


虚無の名残。


世界の外。


ゼルが来る。


「怖いか?」


ノアは少し考え、首を振る。


「でも、みたい」


二人は笑う。


アークが言う。


「じゃあ強くなろう」


ゼルが頷く。


「世界は広いぞ」


ノアは嬉しそうに笑う。


都市は今日も動く。


市場の声。

子供の笑い。


その中心で、

少女は世界を見る。


理解し、感じ、学ぶ。


虚無が残したのは――


終わりではなく、

次の可能性だった。


ノアは空へ手を伸ばす。


「こんにちは、せかい」


世界は静かに応える。

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