↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
出来損ないと呼ばれ追放された魔王の子供は国を創造し王となる  作者: 蒼崎しんのすけ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
10/29

誕生

《観測の欠片》が光ったのは、

誰もいない深夜だった。


中央塔の空気が震える


結晶の内側に、小さな脈動


トクン


トクン


まるで――心臓


翌朝、塔の守衛が叫ぶ


「だ、誰かいるぞ!!」


結晶が割れていた。


破片は消え、

そこに一人の少女が眠っていた。


黒髪

透き通る肌

胸が、確かに上下している


呼吸している


少女はゆっくり目を開ける


瞳は深い灰色

底に星が瞬いているようだった


アークがそっと声をかける


「……聞こえるか?」


少女は彼を見る


瞬間


空気が震える


アークの頭に感覚が流れ込む


驚き

光

温度

心拍


言葉ではない


“世界を初めて観測する感情”


少女は小さく口を動かす


「……きれい」


それが最初の言葉だった。




都市は騒然となる


「虚無の残骸だ」

「奇跡だ」

「危険かもしれない」


ゼルは腕を組む


「本人は無害だろ」


少女は街を見るだけで笑う


人の顔をじっと観察し、

鳥の飛び方に拍手し、

雨粒に驚く


アークがしゃがみ込む


「名前、要るな」


少女は首を傾げる


「なまえ?」


ゼルが笑う


「お前、世界見に来たんだろ」


アークは微笑む


「じゃあ――ノアだ」


少女はゆっくり繰り返す


「……ノア」


嬉しそうに笑った。


数日後、異変が起きる


市場で落ちた皿が割れる――直前


ノアが瞬きをする


時間が“にじむ”


皿が落ちない未来へ滑る


皿は無事に机へ戻る


商人が固まる


「……え?」


ノアは首を傾げる


「わるいの、なくした」


アークは息を飲む


「未来を……観測し直した?」


ゼルが吹き出す


「兄上より反則じゃねぇか」


だがノアは疲れたように座る


「いっぱい、むずかしい」


力はまだ幼い



ノアは街を歩く


人々は最初こそ警戒するが、

すぐに変わる


彼女は誰かの悲しみを見ると、

そっと手を握る


それだけで心が軽くなる


怒りをぶつけられても、

ただ見つめる


相手は言葉を失う


観測されると、自分を理解してしまう


都市は気づく


この子は破壊でも創造でもない


理解そのものだと



夜


塔の屋上


ノアが空を見る


「……まだ、いる」


アークが隣に座る


「何が?」


「そと。

いっぱい、こわい」


虚無の名残


世界の外


ゼルが来る


「怖いか?」


ノアは少し考え、首を振る


「でも、みたい」


二人は笑う


アークが言う


「じゃあ強くなろう」


ゼルが頷く


「世界は広いぞ」


ノアは嬉しそうに笑う


都市は今日も動く


市場の声

子供の笑い


その中心で

少女は世界を見る


理解し、感じ、学ぶ


虚無が残したのは――


終わりではなく、

次の可能性だった。


ノアは空へ手を伸ばす


「こんにちは、せかい」


世界は静かに応える

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。