44 まさか二周目が…?
考察の時間です
サスケを巻き込んで行った検証実験でわかった事はユシルの家庭環境の一端と、ゲーム情報を話す事が出来るのは転生者である私とレオーネ様、そしてユシルの三人だけらしいということ。
これはヒロイン特典というわけでないのはラッキーだった。これでウッカリと余所でゲームの話をしても変人認定される事はない。朗報である。
ただ既に三人転生者がいるので、どこかに他の転生者がいても可笑しくはない。その人にウッカリと話を聞かれ回りまわってユシルに情報が行くのを避ける為に余所ではゲームの話をしないというスタンスは変わらない。
「出来れば卒業パーティー前にヒロインと決着付けたいですよね」
王太子とイオリテールが攻略されていないので断罪イベントは起きないと思うけど、先日の“話し合い”での侯爵と騎士の様子を見ていれば何か仕掛けてくる可能性は捨てきれない。
「このまま来年度に進んでもそれはそれで憂いが残りますものね」
「予想が正しければ続編が始まりますからね」
しかも今度は何の情報もないところからスタートする。
分かっている事はサスケと第二王子がかなり高い確率で攻略キャラであるというだけ。
サスケを攻略するのに第二王子の攻略が必要だとするとユシルの犠牲者が増える恐れが出てくる。必要なければスルーしてくれるかもしれないけど、つまみ食い感覚でちょっかいを出されるのも第二王子に惚れているレオーネ様からみたら良い気分にはなれない。
「ヒロインの様子はどうなのかしら?」
「相変わらずですね、今は侯爵と騎士と仲良くしているみたいです」
王弟は私が釘を刺した形になったので少し疎遠になっている。
教室でのユシルの様子を思い出そうとするが、私の席よりも後ろにいるので直接姿を視界に入れる事は少ない。ただうちの忍者集団の報告によると。
「少し憔悴している様に見受けられる様ですよ、焦っているんでしょうね」
話し合いから一週間近く経っており、表立っては何もしていないが。
「王太子とイオリテール様の攻略が終わってない以上は何か仕掛けてくるとは思います」
「ええ、それは私も同意見だわ」
逆ハーエンドはまだ諦めていないと思うんだよね、そして達成する為には王太子とイオリテールの攻略は必須。
「学年末テストが終わるまでは大丈夫かしら?」
「どうでしょうかね?ゲーム上ではないも同然のイベントでしたし」
順調にステータスを上げていれば全てが61以上になっていても可笑しくない時期だ。普通に上位に食い込んでくるとは思う。
「ところでレポートは完成したのかしら?」
「はい、無事に完成しました」
提出期限は明日が締め切り。どうにか期限に間に合わせる事が出来たのは良かった。
「…少し読んでみたいのだけど」
おや?レオーネ様も興味ありですか、意外と人気ですね。
「いいですけど、返却されてからでもいいですか?」
「ええ、ありがとう」
読み物としては面白い出来になったと思います。評価がどうなるかはわかりませんが。
「ヒロインがこの世界をゲームだと思っているのなら、ここは現実なのだとわからせる荒療治が必要だと思うんですけど」
「例えば?」
「シナリオにない動きを“キャラ”がするとか…ですかね?」
「それは今あなたがしている事ではなくて?」
「そうなんですけど~…、隠しイベントという認識みたいなんですよ。サスケに会うための」
ユシルが呟いていた独り言は私達に有益な情報を色々ともたらしてくれたが、それが事態を改善する為の起爆剤になるわけではない。
私が同じ転生者だとバラすのもありだが、それだとより面倒な展開になりそうでもある。私が攻略キャラを横取りしたとかね。
実際にサスケはおそらく私の付き人という役割に原作が改変されているので違うとも言い切れない。
逆上して襲い掛かってきたとして、ゲームに関係のある事を話しながらだとサスケやメルーセが動けないので危険度が増してしまう。
「いっそサスケに会わせて盛大にフってもらえば現実が見えてくるのではないかと」
「一つの手だとは思うけど、その後を考えるとサスケさんが可哀想じゃないかしら?」
「ストーカー行為に発展しそうですよね」
忍者をストーカー出来るかは疑問だが。
「少なくともサスケのヒロインへの好感度はマイナスですし」
「ゼロに戻るかも怪しいわね」
サスケがユシルを嫌っているのを知っているレオーネ様は同意してくれる。
「たぶん、しっかりサスケに会えばまたベラベラ情報を喋ってくれると思うんですよ」
「つまりサスケさんは餌って事?」
「え?違いますよ」
レオーネ様が引いた声を出すので慌てて否定する。そんな酷い事は少ししか考えてません。少ししか。
「ただ…ユシルが言っていたという“消えちゃう”という言葉が引っかかるんですよね」
同じ世界観で続編と銘打たれていても攻略キャラやヒロインが一新されている事はある。
○○シリーズみたいな感じで舞台を変えてしまっても、前作との関係性を見せれば続編として成り立つ。ついでに前作からゲスト出演させれば完璧だ。その時に出演させるキャラを人気の高いキャラにすればそのキャラのファンも取り込める。
前作では非攻略キャラだったけど続編では攻略できる様になりますとかね。
「母親の死に刺激されたのと、実家で冷遇されていたという事実を関連付けるなら“死んじゃう”あるいは“殺される”が妥当でしょうしね」
どうして“消えちゃう”という言葉が出てきたのか、それは続編と関係があるのか?
情報が足りなすぎる。
「例えば、ここが“ゲームの世界”だと思い込んでいたとして…ゲームで描かれていた時間が終わった後はどうなるのか?って考えると“消えちゃう”という言葉が出ても不思議じゃないですよね?」
「ゲーム前の時間が存在しているのはそういう設定だと思えば許容範囲ね」
ここはゲームと酷く似通った現実なのだという風に受け入れている私やレオーネ様からすると、ゲームが終了する時間になっても普通に日常は続いていくと思っていた。
ただ“世界の抑止力”とでもいうものは確かに働いているし、ヒロインがリセットしたいと思えばしてしまう世界なのかもしれない。そういう不安が生まれてしまったのも確か。
「ヒロインが誰かを攻略しないと存続しない世界とか…あり得ないといいたいところだけど」
「怖いのは本当に時間が逆行しちゃう事ですね、しかも私たちの記憶も持ち越されるバージョンです」
時間逆行物は何度も同じ時間を繰り返し、何十回目のチャレンジで成功するというパターンが多い。
「もしかしたら、既に何度か逆行しているのかも…と考えると怖くないですか?」
何度も時間を逆行する事によるバグが私やレオーネ様の様に転生者として覚醒したのかもしれない。
「不安を煽る事を言わないでくれない?」
「あくまで可能性の話ですよ」
そんなループは私もお断りだ。自分ではなく他人の望んだ未来にならなければループが終わらないとか地獄じゃないか。
「それを避ける為にもここが“現実”だと知らしめる必要はあると思うんですよね」
あの独り言を聞いているぶんには時間逆行まではしている様子はないのが救いである。
「どっちにしろ断罪イベントを確実に避ける為にも、卒業パーティー前にこちらからでる必要はあると思います」
「…同感だわ。作戦を立てるだけは立てておきましょう」
「実行は学年末テストが終わってからの方がいいですね」
「時間的にもそれくらいの余裕は欲しいわね」
学年末テストは一週間後に行われます。
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