表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/92

45 ツボを直撃するの止めてください

学年末テストは三日かけて行われ、翌日から週明けまでが試験休みとなる。

教師陣は試験休みのうちに採点を終え、補講の必要な生徒をピックアップする必要があるので、なかなかハードなスケジュールとなる。補講内容も検討しないといけないしね。

試験休み中は校舎内の立ち入りは禁止されるので人気が少ない。つまりはユシルに仕掛けるのに絶好の機会といえる。

続編が始まる前に決着を付けたいというレオーネ様の切実な望みと私の面倒くさいという欲が合致した結果、荒療治案が通りました。

作戦内容としてはとりあえずサスケに会わせようという乱暴なもの。

ユシルが何を口走るのか隠れている私たちが聞いてその場で対策を練るという行き当たりばったりなものです。

状況によってはサスケは見捨てる所存ですが、彼は忍者なので上手く逃げてくれるでしょう。

退却の合図はちゃんと出してあげるので安心してください。

問題はどうやってサスケを場に引っ張り出すかですよ。ユシルはサスケで釣れば簡単だと思うので後回し。

「無難なのはサスケさんがヒロインが探している“カイ”という人物のフリして接触、情報収集という建前かしらね?」

「採用です」

「…少し安易に決め過ぎでしょ」

案に直ぐに頷いた私に呆れてレオーネ様はため息を吐く。

場合によっては私が転生者だとバレる事までは予定範囲。まさかの二周目という事態になった時の事を考えてレオーネ様の正体はあくまで隠し通す事が決定している。

二周目が始まった時に今回の記憶が残っていた場合は“セルリア”として振舞い、今回は転生者でもないのですと親友アピールをする事になった。

上手くできるかは置いときます。ユシルなら騙されてくれるとは思うのだけど、警戒はしているはずなので腕の見せ所ですね、自信はないです。

レオーネ様も記憶が残っている状態であれば早めに“セルリア”へ接触を図る事となった。合言葉は“ティーパック”です。今回の記憶がなくても前世の記憶があれば反応はすると思うし、レオーネ様に前世の記憶があると判断すれば私ならあっさりと白状するに違いない。

今回の記憶が次回になければ何も出来る事はなく、こちらの正体を知っているユシルが有利になるだけの話です。考えても仕方がない。だって記憶が伝承されないのだから。

「二周目の事も考えるとサスケさんがセルリアの付き人だと知られるのも避けたいのだけど…」

「そこは“カイ”で通してもらいましょう、名前が違っていれば言い訳はできます」

サスケが“サスケ”と名乗らず、私が“サスケ”と呼ばなければ誤魔化す事は可能です。

その点も言い含めましょう、便利な“命令権”がある限りサスケは私の言う事に従わざるをえません。あ、なんか悪役っぽい。しかし今回は虐げる相手がサスケなのでテンションが上がらない。罪悪感が募る。侯爵や騎士に対してはテンション爆上がりだったというのに。

思ったよりは繊細だったよ、私のメンタル。

「問題は引き際ですね、見誤ったら面倒な事になりそうです」

「確実に暴走度が増すでしょうね、それがサスケさんだけに向けば楽になると思うけど」

忍者は潜むのが仕事ですからね。

いざとなれば実家に退避させればいいのだし。あれ?もしかしてそれが一番楽な解決方法では?

「私が出向いた方がいいと思えば白々しく登場しますので、タイミングはレオーネ様も判断してくださいね」

私一人だとちょっと不安だ。勢いで飛び出しかねない。

「それはいいけど…危なくはないかしら?」

「凶器の類は流石に持ってないと思うんですけど、最初にサスケに確認させて持っている様だったら没収しましょう。素手勝負ならヒロインに負けません」

如何に運動のステータスを上げていても武芸のステータスではないので、忍者修行をした私なら逃げるくらいは出来る!…どんだけ過信してんだ忍者修行。変なフラグを立てた気がする。

いやいや、側にはサスケもいるし大丈夫。

か弱い令嬢ならアッサリやっつけてくれるに違いない。むしろここぞとばかりにやり過ぎないかの方が心配です。

あれ?大丈夫だよね?

一生もんの傷とか残った場合は私の罪悪感がヤバい事になるんだけど。…ちょっとその辺りも言い含めておこう。

実行まではまだ少し期限があるので、思いついた事があればその度に確認していこうという事になった。

「前日にもう一度話し会いたいから…試験休み二日目に実行予定はどうかしら?」

「いいと思いますよ、準備も必要だと思いますし」

本日分の最終確認を終え、今度は目下の懸案事項の試験勉強に取り組む事になった。


お姉様は自分の勉強は大丈夫なのでしょうか?

レオーネ様と作戦会議を兼ねた勉強会を行いつつ、部屋に戻ればお姉様との勉強もする事となった一週間。天国か地獄か判断にとても迷います。

お姉様の目標は自分が成績優秀者となり一人部屋をゲットする事ではなく、私を来年度の成績優秀者クラスに入れて一人部屋をゲットさせる事なので気迫が尋常じゃない。

お姉様は積み重ねてきた優秀な成績に裏打ちされているので、今度のテストで大幅に成績を下げる事がなければ来年度も同クラスになる事がほぼ決定しているらしいです。さすがは私のお姉様ですね!

でも私は一人部屋にそこまで拘りはないんですよ!そりゃ、気の合わない人に当たった場合は困るけど。

無理に話す必要もないといえばないし!

シア様やケイト様の様に可愛らしい子と同室になる可能性だってあるじゃないですか!

あ~…でも、絶望的に気が合わない人になる場合もあるか。

放って置いてくれないタイプだったり、それこそユシルみたいにカンニングした!とか騒がれても困るしね。

真面目に取り組んでも、組まなくても一週間はこの状態が続くのなら、ちょっと本気を出して頑張ってみましようか。

将来的に“成績優秀者クラス”で卒業したとなれば、就職先も見つけやすいかもしれない。箔付けって大事。

こんな感じで一週間は瞬く間に過ぎ去り、お姉様とレオーネ様のおかげかテストの答案は全て埋める事が出来た。合っているかどうかは知りません。

これで残るゲームのイベントは卒業パーティーだけとなったが、その前にユシルとのイベントを済ませないといけない。

一日休みを入れたのは正解だった。

場所は二人を隠れて見る事が出来、かつ会話も聞こえるポイントを探した結果ゲーム内でも何度か出てきた中庭に決定した。

渡り廊下の陰に隠れて観察する予定なので、ちょっと近めのポイントに立っていて欲しいという事もお願いしている。

近くにベンチも設置されているが遠くなるのでNGです。

誘ってくるかもしれないが、サスケが動かなければユシルも動けないししつこい様なら帰る素振りを見せればいい。

呼び出し方法?

幽霊が中庭に出没しますとメモを書きドアの隙間から突っ込んでおきました。

筆跡で私からだと直ぐにバレるのも、後で筆跡鑑定されたりするのも困るので、サスケ本人に書いてもらった上に回収もしてもらいます。

サスケは何か気持ち悪いから嫌っす!とごねたが強行しました。“命令”のあまりの便利さに人として踏み外してはいけない道を踏み外しそうになるので今後はあまり使わない様にしようと思います。


そしていよいよ本番です。

後からくるユシルと鉢合わせすると台無しなので渡り廊下に一番近い教室で待機、窓からユシルが来たのを確認してから渡り廊下に移動という手順となっている。何故そのまま教室にいないのかといえば、途中で乱入する事になった場合、教室からだとユシルに逃げられる恐れがあるからだ。

鍵?忍者が用意してくれましたよ。

「…待ってると暇よね?」

「しりとりでもします?」

「なんでよ…」

他に見張りながら出来る暇つぶしを思いつかなかったからです。

見つからない様にと窓の下に隠れつつ外を覗いている私達二人の姿はシュールである。

サスケはメモを部屋に忍ばせた後、ユシルを尾行しつつ良いポイントについたところで姿を見せる手はずとなっている。

サスケに出した指示としては名前を名乗るな、カイという名前を否定するな。直接の接触はさけてもいい。なんなら一言も喋らなくてもいいと指示を出している。

「でも本当にくるかしら?いくら何でも怪しすぎない?」

「来ると思いますよ?たぶん“イベント”が始まったくらいにしか思わないですよ」

考えるとしたら何がスイッチになったか?ぐらいでしょ。

「ずいぶん辛辣ね」

「ゲーム脳だとそうなります」

イベントを発生させる為にNPCに話しかけまくるとかRPGなら基本じゃないですか?

情報収集の意味もあるけど。


「……ま~…。カイさま~…」


それは突然聞こえたが、声の主が誰かは見なくともわかる。

隣にいるレオーネ様と頷き合って、その姿を確認すればユシルの姿が見えた。

「来ましたね」

「ずいぶんと迂闊な子ね…」

「ゲームではご都合展開も当たり前ですからね」

必ず主人公の目の前でタイミングよくイベントが起きますからね。

こそこそと会話を交わした後に予定通りに廊下に移動する。ドアが思ったよりも大きな音を立てて冷や冷やしたがユシルは距離があるからか気付く様子はなかった。

「カイ様!」

予め決めておいたポイントに私達が移動したのを確認したサスケがユシルの前に姿を現せば喜色を声に滲ませてユシルはサスケ(カイ)の名を呼んだ。

「嬉しい!ようやく会えた!」

頬を赤く染めて駆け寄るユシルから一定の距離を取り続けるサスケ。

あまり離れると私達が声を聴けなくなってしまうので…その場をぐるぐると回る羽目になった。

「…ぐっ……」

「ちょっと、耐えなさい」

あまりのシュールさに思わず吹き出せばレオーネ様から注意が入る。

これツボにハマるとヤバい。

チラリとこちらを見たサスケと視線がかち合ったので大きく頷いて不毛な鬼ごっこを止めさせた。

「俺に何の用っすか?」

「…え?敬語じゃない?」

不機嫌丸出しのサスケの言葉にユシルが漏らした言葉にまた吹き出しそうになる。

サスケ、続編では敬語キャラなのか。

今のイメージと違い過ぎない?

あとサスケは最初から敬語を使わなかったよ、初めて会った時からキャラ変してないよ?

私が必死で笑いの発作に耐えている横で、レオーネ様は非常にハラハラしていた。――私のせいでバレないかと…。



評価、ブクマ、感想、誤字報告ありがとうございます!

お話を書く原動力になっています!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ