43 検証してみましょう
日間恋愛異世界転生/転移ランキングで4/26に17位に入ってました!!
これもみなさまのおかげです。
ありがとうございます!
前世の知識やゲームの知識をどれくらい拡散可能なのかを検証する事になった。
というのも“話し合い”の席でユシルが口にしたテーマは“トリアージ”であり、あれには“世界の抑止力”は働かなかった事を思い出したからだ。
「あなたの“魔法”も大概だけれど…、元々トリアージは軍隊での戦闘時に戦力維持の為に用いられたという背景があるから大丈夫なんじゃないかしら?」
「え?そうなんですか、レオーネ様物知りですね」
私は災害時に沢山の患者さんが出た時に使う選別方法という認識しかなかった。じゃあ“戦争”というテーマに相応しいものだったんだな。
私は思いっきり趣味に走った結果の“魔法”ですからね、見る者が見れば前世の某有名RPGを想起させる“魔法”の概念。
私が知らないだけかもしれないが、この世界にはファンタジー冒険物の話は少なく、どちらかといえばメルヘンな“おとぎ話”の方が広く親しまれている世界だ。絵本の世界観ですね。
定義が曖昧だからこそ、この世界の“魔法”は万能で想像力の分だけなんでも出来る。
シンデレラに出てくる魔法使いを思い浮かべてもらいたい。呪文を唱え杖を振ればどんな物も思いのままに取り出せる。…といった類のものでRPGゲームに出てくる様な魔法とはちょっと違う。
私が書いたレポートはRPGゲームに近い、出来る事と出来ない事がハッキリとしている、いわば“技術”の一つとしての“魔法”であり、使い手によっては炎は出せるけど氷は出せないとかいう弱点も備えている。
“魔法”を兵器の一つとして考えて、優秀な使い手が一人いれば戦局が変わってしまうという、それこそ英雄譚的なものとして書き上げた。
小説を書いている様で楽しかったと言い添えておきましょう。
将来は実家に厄介になりつつ自称小説家になるのも良いのでは?と思いました。
この世界にはない発想で物語書けるので、強みになると思います。
二次創作にも手を出してたけど読み専で書いたりはしなかったんだけどね、前世では。妄想はたっぷりしたけど。
好きでもない人と結婚するというのは現代感覚を持っている身としては避けたい事なので、自立できる職につくというのは大事だ。
オルレンス子爵家はお姉様…の旦那様が継いだとして、小姑にずっと家に住みつかれるのはやはり嫌だろう。
家は広いし、なんなら離れもあるので顔を合わせずに済ませる事も出来るが…なんで養わなければいけないのかと内心では思うはずだ。
お姉様だけなら受け入れてくれると思うんだけどね、なんなら子守として雇ってくれたつもりでいればいい。
子爵令嬢としては引退しましょう。
引きこもりになる事に躊躇わないタイプの人間ですからね、私。
「どこまでが許容範囲でどこからが許容範囲外なのか、またヒロイン独自のスキルなのか…が検証内容ね」
頭の中で脱線しまくる内容をレオーネ様が正してくれるので助かる。
おかげで私がボーッとしていても話がサクサクと進んでいく。
「ヒロインと同じ様に周囲が止まってくれればいいですけど、止まらなかったら変人認定されますね」
「そうね、それも避けたいけどヒロインに話が伝わるのも避けたいわね」
そんな理由で実験にはサスケが選ばれました。お姉様に報告されても他の人には黙っていてくれるからです。私だけならともかくレオーネ様まで変人認定されるわけにはいかない。
あの場には攻略キャラもいたし、同じ現象が起きればサスケもちゃんとフリーズするでしょう。
既にレオーネ様との面通しは済んでいるからか、呼び出せばちゃんと現れてくれました。
「なんの用っすか?」
レオーネ様の前でも普段通りの口調のサスケは背筋を正す事もせず自然体。
その方が私も無駄に心拍数をあげずに済むので助かります。
「え~と…レオーネ様?続編でのサスケの役割ってなんだと思います?」
唐突に始めた話題にサスケは何の反応も示さずこちらを見ている。
「そうね、年齢からすると生徒ではないと思うから…教師かしら?」
レオーネ様も、そんなサスケから目を離す事なく会話を続ける。
「教師枠は埋まってますからね、それよりは用務員さんとかどうですか?」
「…学園物で偶に出てくるけど、具体的にどんな仕事をしている人なのかしら?」
「え?植物の手入れをしているところしか浮かばない…」
校庭の隅で樹木に水を撒いていたところしか思い出せない。…といったところまで話して会話を止める。
「サスケ…」
「なんすか?」
声を掛ければ普通に返事をするが…。
「今、私とレオーネ様って何の話をしてた?」
「え?ボケるには早いっすよ」
「いいから!」
「…と言っても、まだ何も話してないっすよね?」
失礼な物言いをしてくるサスケを促せば不思議そうに答える。まじかぁ~…。
「どうやら聞こえなかったようね?」
「はい、これは勘違いしても仕方ないですね」
「お二人で内緒話をするなら俺への用件を言ってからにしてくれませんかね?」
ひそひそと小声で話す私とレオーネ様に拗ねた口調でサスケが文句を言う。この件は後でレオーネ様と二人きりの時に話し合おう。大っぴらにする気はないが、忍者集団に前世関連の話を聞かれずに済むという事実はありがたい。助かる。
「ああ、ごめんごめん。あのねサスケ…“カイ様”って人物が誰かわかった?」
「わかんないっす!」
予め用意していた問いかけをすれば即答された。なんで誇らし気なんだ。
「結構、過去に渡って調べたんすけど、“カイ”って人物は浮上しなかったっす。最も街中で一度だけ出会った人とかだったらお手上げっすけどね」
うちの忍者集団の事だから、私が思う以上に詳しく調べた事だろう。
実際にそういう名前の人物がユシルの周りにいたのなら、今頃その人の生い立ちについても調べ上げていたに違いない。…恐ろしいな忍者。味方で良かった。
「そっか~…ちなみにユシルって実家ではどんな風に過ごしてたの?」
ゲーム上の設定は知っているけれど、実際はどうなのかは聞いてなかった。
「アバズレは第二夫人の娘なので、実家での地位は低めっす。正妻との間に異母姉と異母兄がいる上に正妻は伯爵令嬢っすからね、平民のくせにと大分冷遇されたみたいっす」
「ああ~…」
これはアレだろうか?ユシルのお母様は元メイドとか、そういったパターンかな?
でも伯爵令嬢を正妻に貰っておきながら平民を第二夫人に迎えるとか…男爵がよく出来たとは思う。奥さんが我儘を通す事も出来る身分差だというのに。
「異母姉は既に正妻の実家のコネでとある伯爵家に嫁に行く事が決まっているっす。異母兄はまだ婚約者が決まってないみたいっすね」
「ユシルの嫁入りの候補先とかは?」
「特に決まってないみたいっすよ、まぁ異母兄の嫁探しの方が先じゃないっすかね?」
う~ん…。予想していたとはいえ、あんまり良い家庭環境とはいえないかな?
冷遇されていたというなら嫁ぎ先が家の得にはなるけどユシルの希望が一切反映されないところになっても可笑しくはない。
父親がユシルに愛情を持っていたらまた別だけど、それでも正妻の方が強いと自分の娘と違って情がなければ裕福な商人の家の後妻とか、爵位の高い貴族の愛人だとか、そういったところに嫁がされる可能性は高い。
ユシルがそれを回避する方法は自力で有力な相手と結ばれるしかなく、その相手には攻略キャラはうってつけだろう。
正妻が嫉妬で邪魔してくる可能性はあるけど…そこは家の利益を考えて父親が頑張って説得するだろうし。
「コレンス嬢の母親は健在なのですか?」
「いや、三年前に亡くなっているっす」
レオーネ様の問いにあっさりとサスケが答える。
「親子の仲はどうだったのかしら?」
「少なくとも悪くはなかったらしいっすよ、あまり体が強くない人だったみたいっすけど看病とかしてたみたいっすし」
ユシルの記憶がいつ頃戻ったのか知りたいけど…そこは調べられないよね。変な抑止力が掛かってる事も考えれば。あ、でも…。
「ユシルの言動が変わった時期とかはない?」
「言動が変わった?例えばどんな事っすか?」
「え~と…変な事を言い出した…とか?」
王太子狙いであれば「将来王妃になる」とか「王子様と結婚するの」くらいは言っていても可笑しくないが、ユシルの本命はサスケだし。言ってたとしてもさっきのサスケみたいになかったことにされてたら分からない。
「そうっすね~…母親が亡くなった頃に「消えちゃう」ってもらしてたらしいっすよ」
「消えちゃう?」
母親が亡くなった時期だというのなら精神的に脆くなって、自分も死んじゃうかもと思っても不思議ではない。三年前といえばユシルも十二歳なわけだし。
でも「死んじゃう」じゃなくて「消えちゃう」って言い方が引っかかる。
十二歳だとしてもそんな言い方をするかな?しかもユシルの場合は前世の記憶が上乗せされている可能性もあるのに。
考えすぎかもしれないが、こういう引っかかりは謎解きのキーワードになったりする。
前世では推理もののアニメも見てました。トリックはサッパリでも犯人を当てるのは得意だったりします。レギュラーでも準レギュラーでもないのに知名度の高い声優が起用されている事が多かったからでもある。
この声〇〇さんじゃん、じゃあこの人が犯人だな。という様に。
推理力でもないし勘とも違うから当てにはならないか。ただの経験則だ。
「レオーネ様」
レオーネ様に判断を仰ごうと声を掛ければ、同じ様に難しい顔をしていた。…これも後で話し合う必要がありますね。
後確認する事といえば、この世界の技術革新を前世知識で行えるかどうか。
しかしそんな知識を私が持っているかといえば否なので確かめようがないという事実がある。
シャーペンとかボールペンとかあれば便利だと思うんですよね、この世界での普及率は万年筆がトップになっており書き心地も良いしデザインも気に入ったものを見つける楽しみもあるが、ちょっと不便でもある。
特に書き損じた時とかね!
自分用のノートならグジャグジャって書き潰したり取り消し線を引けばいいが提出物はそうはいかない。
あと少しで書き終わるという時に失敗とかある。勘弁してください。
いや、ボールペンも欲しいけどそれより修正液が欲しい。あれは人類の英知です。
修正液があれば書き直し箇所も少なくて済む。
どうしてこの世界には修正液がないのだろうか?
ボールペン以上に構造を理解していないのだけど、どうにかして作れないかな?
無理だという結論が出たところで検証実験は終了となった。
評価、ブクマ、感想、誤字報告ありがとうございます!
大変嬉しいです!!




