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ゾンビの襲撃

 冒険者たちが出発した後、エドガーは豹変した。急に偉そうな態度で村人たちに命令して、自分たちを歓待する宴会をするように命じたのだ。村長がアンデッドの襲撃があるからそれどころではないと拒否すると、兵士に命じて暴れだした。


「王国騎士団を愚弄するか!」

 村長の家を所かまわず壊し、止めようとする村人を殴る、蹴るの乱暴狼藉である。

「アンデッドどもなぞ、移動速度が遅い。明日の夜にしか戦闘にはならない。それまで歓待せよと言っているのだ!」


 エドガーの本心。冒険者に危ない仕事をさせ、自分は楽してその手柄を横取りしようというものであった。彼はこれまでそうやって他人を踏み台にしてのし上がってきたクズなのだ。

 アンデッドと対峙するといっても、相手はゾンビやスケルトンといった弱いモンスターだと侮っていた。適当に戦って時間稼ぎをしておけば、やがて冒険者たちがボスを倒して手先のアンデッドも消滅するという計算なのだ。


「ほれほれ、酒もってこい。女はいないのか、酌をさせろ!」

 エドガーとその幹部たちは酒を飲んで惚ける。

「あれが王国の騎士団なんてがっかりだわ」

 村を取り囲む柵を監視する物見やぐらから、村の中央広場で盛り上がっている様子をみながら、レイラはそう腹が立だしそうに吐き捨てた。この緊迫感のある状況で酒盛りなんて信じられないのだ。

 それは前線の兵士たちも同じであった。幹部だけがよい思いをして、自分たちは危険な戦闘を任されているんだ。王国騎士としての使命感も萎えてしまってもおかしくはない。


「末端の騎士団の前線部隊なんてあんなもの……」

 ジゼルはそう言って黙々と弓の手入れをしている。矢筒にも矢が大量に入っている。彼女はここで援護射撃をするつもりだ。

「敵だ、ゾンビが近づいている。その数、およそ20」

「予定よりずいぶんと早い……」

 前線の兵士たちがざわめき立つ。脅威となる数ではないが、その後ろにさらにまとまった集団の存在が確認されている。

「カトー殿、回復をお願いします」

 前線の指揮官がそうカトーに頭を下げる。カトーは頷いた。お安い御用である。ケガをした兵士を瞬時に直し、戦力に穴を開けない。向こうが耐久力のあるアンデッドでも、こちらも回復を繰り返せば、まさにアンデッドと同じとなる。


「任せてくださいよ!」

 カトーはそう答えた。

 やがて、ゾンビの第一波が柵に取りつく。兵士たちはそれと交戦する。戦闘力は兵士のが上。ゾンビの第1陣はあっけなく撃破。しかし、第2派、第3派とゾンビは次々と敵は現れる。さすがの王国騎士団の兵も傷つき、疲労が拡大する。


「はい、回復~」

「ハイ、全快~」

「はい、フルチャージ~」

 カトーは次から次へと兵士を回復していく。しかし、時間が経つに連れて徐々に兵が押され始めた。不思議なことに騎士団の兵士が時折、ぱたり、ぱたりと自然に倒れていくのだ。


「どういうこと、セバスチャンが全部回復させているのに、アンデッドに押されるなんて!」

 レイラは物見やぐらの上から、ジゼルと一緒に弓で兵士たちを援護しているが、徐々に劣勢になっていくのが信じられないようであった。

 確かにアンデッドの数は多いが、瞬時に全回復させてもらえる騎士団の戦闘力の方があるかに上回るはずである。それを十分承知しているから、隊長のエドガーはこの状況で宴会をしているのだから。


「レイラ……あれだ」

 ジゼルは指を差す。アンデッドと戦っていた兵士が突然、気を失って倒れる。そこをガジガジとかじられている。別の兵士がそれを追い払う。重傷を負った仲間を救出。すぐにカトーが駆けつけて魔法を使う。

 回復した兵士は再び戦いに参加するが、カトーが魔法を使い、両手が光った瞬間に別の兵士が2人、ぱたりと倒れる。また、それをアンデッドがかじがじとかじる。

「ど、どういうこと……」

 レイラはその光景が信じられない。カトーが魔法を使うと人が倒れるのだ。


「どうやら、カトーの魔法は単純な回復の力ではないようだ」

 ジゼルはそういうと物見やぐらから飛び降りようとへりに足をかけた。レイラも弓を捨てて、剣に手をかけた。


「カトーに知らせないとこちらが全滅する……だが、まずは村人の避難が先」

「分かったわ、どうするの?」

「非戦闘員を静かに西の風車小屋に移動させる。ゾンビは音に反応する。兵士が戦っていればそこへ引き付けられる」

「なるほど」

 ジゼルとレイラは宙に舞った。そして村の家屋の屋根に着地すると、駆け抜けて隣の家の屋根へと跳んだ。


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