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大変遅れました。申し訳ありません。


ナルの過去・前編です。

 私は、要らない子供だった。



 ナル、ナル、と愛情の篭った声で私を呼んでくれた両親は、四歳の時に、裏社会に生きていた男に殺された。

 平民であった私の両親には、何の罪もなく、裏の世界とは全くの無関係だった。

 

 両親がその時持っていた金を奪うため。


 ただ、それだけの理由で殺されたのだ。

 

 だが、私はその男を責めることはできない。彼は、魔術士を頼らないと治ることのない、重度の病に罹っていたのだから。

 市井の魔術士は勿論のこと、彼のような、裏で犯罪を行ってきた者を治療してくれる闇魔術士となると、その治療費は馬鹿にならない。彼の明日の宿も分からないような生活では、真っ当な方法では到底払えない額だった。


 だから、彼は自分が生き延びるために当たり前のことをしただけ。


 昏い泥の中を、歯を食いしばって必死に生きてきた人間を、自らの手を染めることなく、ただ甘い汁だけ吸ってきた私たちが、どうして見下すことが出来よう。


 昨日まで仲の良かった友のことなど、今日になれば簡単に裏切ることのできる私たちより、彼は余程人間らしく、そして気高かった。



 ――よく晴れた日、街の大通り、手をつないで歩いている三人家族。


 喧騒。笑顔。希望。安寧。幸福。

 

 ――絶望。


 

 軽快な駆け足と共に、一陣の風のように背後から男は両親を襲った。たった一瞬の出来事。しかしそれを境に、私の幸せで、無知と愚かさを許された生活は、幕を閉じた。

 

 男は父、母と順に息の根を止めた後、何が起こったのか分からずにいる私にちらりと目線を送ってから、すぐに父の財布を持ってどこかへと走っていく。

 その走りはどこか不安定で、彼が先が長くなかったことを示していた。


 

 ――よく晴れた日、街の大通り、手をつないで歩いていた三人家族。


 疾風。困惑。静寂。驚愕。悲鳴。


 ――地獄。



 辺りは地獄絵図だった。小さな子供を連れた母親たちが、口から悲鳴を上げながら、子供をしっかりと抱えてその場を逃げていく。男たちは怒鳴り声を上げて益々その場を混沌とさせ、その隙にあの男は闇の中へと消えていった。


 激しく移り変わるその大通りの中で、唯一、私と私の両隣に横たわる両親だったものだけが、時を止めたようだった。


 ただ涙も見せず、呆然とその場に突っ立っている私。

 ふと、生暖かいものが足元を濡らして、ゆっくりとそちらを見ると、赤い、朱い、紅い、――鮮血、が。困惑の次に抱いたものは、恐怖でも驚愕でも悲愴でも無く、血って本当に赤いんだな、という薄ぼんやりとした感想だった。


 

 その後、その場は騎士団が来たことで瞬時に収束され、閉鎖された。こっちよ、と騎士の女性が手を引いて騎士団の駐留場所に連れて行ってくれたのは覚えている。

 これからどうなるのだろうか、ふとそう思ったところで、私の記憶は途切れた。


 そして次に目が覚めた時には、全てが終わっていた。



 両親の葬儀は、その場を仕切っていた騎士団の団長の善意で、簡素だが執り行われた。

 街から少し離れた小高い丘。そこが両親の終着点となった。

 

 共に天涯孤独の身の上であった両親を見送るのは、私と、数人の騎士団員のみ。

 無事に火葬が済まされると、葬儀は呆気ない程簡単に終わった。


 普通は他に色々な儀式があるが、この場合、火葬をしてやれただけで有難いものだった。礼を言うと、騎士団員は去っていった。



 一人になったところでふと空を見上げる。

 

 両親を亡くしたあの日と同じように、空は青々と広がっていた。

 

 あの男は、事件の場所から何キロか離れた裏街の路地で、死んでいたのを発見された。

 

 原因は、病の急激な悪化。

 

 その場所の数百メートル先には、恐らく彼が訪ねようとしていたであろう闇魔術士の拠点があり、人生の不条理さを物語っていた。

 

 誰も、救われなかった。

 せめて、両親と私から未来を奪ったあの男が、無事闇魔術士の治療で健康になったのなら。或いは私は、まだ自分を慰めることができたかもしれない。両親の死は、不幸は、無駄ではなかったのだ、と。


 しかし現実は無慈悲だった。


 決して、妥協を許さず、私を完全なる絶望へ、闇へと誘った。自分を騙すことで自分の身を守ることも出来なかった私は、全ての出来事を一身に浴びて、心身共にボロボロになった。


 

 何の感情も伺えない瞳で、私は視線を両親だったものに移す。

 光魔術士によって焼かれた彼らは、灰も残さずに消えていった。そこにあるのは、少し焼けた地面と、おなざりに刺さった二本の棒だけ。


 それを少しの間ただじっと見つめた後、私はくるりと踵を返して街へと戻る道を進んだ。


 その歩みは毅然として、

 迷いも、悲しみもなく、

 怒りも、これからの生活への不安もない。


 ――私は、ただ生きるだけ(呼吸するだけ)の人間となった。








いやあ……、ほんっとうに、ごめんなさい!!

二週間ちょっと、活動報告もなし!しかも短い!はいィィィ…。

作者はというと、ピンピンしておりました、はい。ごめんなさい。

失踪しない宣言してますが、これは失踪に入るのか…?いや、プチ失踪ですよね!(土下座  


さて、今回はナルの過去です。昔はよく食べよく笑う子だったのでした。ええ。(話題がない…


ということで、今後はしっかり更新しますので、これからあと少し、改めてよろしくお願いします!


ありがとうございました。

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