最終話 三下くんと勇者さま
勇者召喚システムは崩壊した。
しかし、世界は滅びなかった。
王城天文塔は半壊し、神殿地下の召喚陣は中央から割れ、旧魔王領へ伸びていた固定線も、世界の外へ手を伸ばしていた道も、すべて消えた。
もう、勇者候補は呼べない。
王家は責任を問われた。
神殿は沈黙した。
世界魔素保全会議は、最初の数日、責任の所在を巡って紛糾したという。
誰が決めたのか。
誰が許可したのか。
誰が実務を担ったのか。
誰が止められたはずなのか。
それらの問いに、誰も綺麗な答えを出せなかった。
当然だ。
綺麗な答えを出せないように、千年かけて責任を薄めてきたのだから。
第一王子ドライエンは、王城の会議で何度も怒鳴ったらしい。神殿の使者にも、各国の代表にも、父王にも。
その結果、彼は一部の貴族から危険な理想主義者と呼ばれ、一部の若い官吏からは次代の王にふさわしいと囁かれ、本人はどちらにも不快そうな顔をしていた。
魔法に頼り切った世界は、急には変わらない。
魔石炉はまだ使われている。
魔導士団はまだ必要とされている。
魔法で耕す畑も、魔法で水を運ぶ街も、魔法で病を癒やす治療所も、一日で消えるわけではない。
けれど、逃げ道は消えた。
魔素が足りなくなったからといって、別の世界から人間を呼ぶことはできない。
ならば、この世界は、この世界だけで続いていかなければならない。
水を使う。
風を使う。
火を使う。
金属を伸ばす。
車輪を回す。
力を伝える。
力を逃がす。
危ない時には止める。
そういうことを、一つずつ覚えていかなければならない。
そのために、グランツ家は王家から正式な協力要請を受けた。
鉱山、工房、運搬路、職人、留学先との人脈。
そして、技術立国で学び、山の家で小雪と試作を積み重ねてきた青年。
ヴェルヴァルド・グランツ。
魔法が使えない落ちこぼれ。
無魔力の公爵家次男。
かつて舞踏会で嘲られた青年は、魔法に頼らない文明づくりの技術顧問として、王家とグランツ家の間で勝手に重要人物へ祭り上げられた。
本人は、心底嫌そうな顔をした。
小雪はそれを見て、少しだけ面白いと思った。
山の家の水車は、今日も回っていた。
春の水はまだ少し冷たい。
けれど、雪解けの頃よりは柔らかく、木の羽根を押す音も穏やかだった。
山の家の煙突からは、細い煙が上がっている。暖炉には火が入り、鍋には豆と野菜のスープが煮えていた。
作業台の上には、コイルの小箱がある。
その横には、王城から届いた書簡が数通積まれていた。
グランツ家の兄からの手紙。
父からの手紙。
そして、ドライエンから届いた、命令文に限りなく近い協力要請書。
それらすべてを、ベルは作業台の端へ追いやっていた。
「読まなくてよいのですか。」
小雪は椅子に座ったまま尋ねた。
肩には毛布がかかっている。
王城から戻って数日。
体力は少しずつ戻ってきていたが、大規模魔法の反動はまだ残っていた。
ベルは鍋をかき混ぜながら答えた。
「後で読む。」
「昨日もそう言っていました。」
「後で読む。」
「一昨日もそう言っていました。」
「後で読む。」
「技術顧問。」
「やめろ。」
ベルは鍋から顔を上げた。
「その肩書きで呼ぶな。」
「三下技術顧問。」
「もっとやめろ。」
「魔法に頼らない文明の先導者。」
「やめろ。胃が痛くなる。」
「下剋上ですね。」
「俺は公爵家の次男だって、何度言えば分かるんだ。」
「そうでした。チャラ設定でしたね。」
「チャラ設定って何だよ。」
「よく分かりません。雰囲気です。」
「雰囲気で俺の出自を軽くするな。」
小雪は毛布の端を握ったまま、少しだけ首を傾げた。
「ですが、ベルが国の技術を動かす側になるのは、良いことだと思います。」
ベルは少し黙った。
鍋の中で、豆が小さく跳ねる。
「俺は別に、国を動かしたいわけじゃねぇ。」
「はい。」
「偉くなりたいわけでもねぇ。」
「はい。」
「小雪を、二度と世界の尻拭いに使わせたくねぇだけだ。」
小雪は、しばらくベルを見ていた。
それから、静かに言った。
「十分です。」
ベルは視線をそらした。
「何が。」
「それが、十分です。」
「……そうかよ。」
ベルは再び鍋をかき混ぜた。
耳が少し赤い。
「食うぞ。」
「はい。」
食卓にスープが置かれる。
豆と野菜。
少しだけ塩味が強い。
けれど、疲れた身体へ染み込む味だった。
小雪は匙を持ち、ゆっくりと食べ始める。
ベルは向かい側ではなく、少し斜め前に座っていた。
すぐに手が届く距離。
小雪が皿を落としかけた時、すぐ支えられる距離。
「近くありませんか。」
「近い。」
「なぜです。」
「お前がまだ信用ならねぇから。」
「私も皿くらい持てます。」
「昨日、落としかけただろ。」
「あれは……観測誤差です。」
「誤差でなんで床にスープが落ちるんだよ。」
「床も食事を。」
「しねぇ。」
小雪は匙を口へ運んだ。
温かい。
スープ。
山の家。
水車の音。
火の音。
ベルの声。
世界はまだ騒がしい。
王都ではきっと、今日も誰かが責任を押しつけ合っている。
神殿では、壊れた召喚陣の前で誰かが祈っているかもしれない。
ドライエンは怒鳴っているだろう。
グランツ家では、父と兄が王家から届いた予算案と技術導入計画を見て、目を輝かせているかもしれない。
それでも、ここにはスープがある。
小雪は一口飲み込んだ。
「おいしいです。」
ベルの手が止まった。
「そうか。」
「はい。」
「……なら、食え。」
「食べています。」
「もっと食え。」
「横暴です。」
「今は看病係として、助手より上位存在だからな。」
「その階級は、どこまで有効なのですか。」
「俺が解除するまで有効だ。」
「独裁。」
「何とでも言え。」
小雪は少しだけ目を細めた。
スープは温かかった。
◇ ◇ ◇
夜、湯浴みを終えた小雪は、暖炉の前の椅子に座っていた。
髪はまだ濡れている。
白く長い髪。
片側だけ少し整い、もう片側は、不揃いなままの髪。
あの日、山の家で途中まで整えられたまま、止まっていた髪だった。
小雪は膝の上で手を重ねている。
ベルが背後に立った。
手には布。
櫛。
そして、小さな鋏。
「髪、やるぞ。」
ベルが言った。
小雪は前を向いたまま答えた。
「拭く方ですか。整える方ですか。」
「両方だ。」
「心の治療ですね。」
「俺の心は重傷だからな。」
「まだ治りませんか。」
「治らねぇ。」
「大変ですね。」
「誰のせいだと思ってんだ。」
「世界でしょうか。」
「……だいたい合ってる。」
ベルは布で小雪の髪を包んだ。
濡れた髪を丁寧に押さえる。
こすらない。
引っ張らない。
水気を取ってから、櫛を通す。
以前と同じ。
けれど、以前とは違う。
ベルの手は僅かに緊張していた。
小雪には分かった。
「ベル。」
「何だ。」
「また、消えますよ。」
ベルの手が一瞬だけ止まった。
それから、何事もなかったように再び動き始める。
「知ってる。」
「怖くありませんか。」
「怖い。」
「では、やめますか。」
「やめねぇ。」
小雪は膝の上の手を握った。
「床へ落ちる前に光ります。」
「知ってる。」
「髪として残りません。」
「知ってる。」
「私の身体は、普通ではありません。」
「知ってる。」
ベルの声は、少しだけ低くなった。
「でも、雑に扱っていい理由にはならねぇ。」
小雪は黙った。
暖炉の火が、ぱち、と鳴る。
ベルは小雪の髪を梳いた。
白い髪の間を、櫛がゆっくりと通る。
引っかかったところは、指でほどく。
何度も。
何度も。
小雪は目を伏せた。
あの日、ここで怒鳴った。
全部ベルのせいだと言った。
私はただの小雪がよかったと叫んだ。
勇者になんかなりたくなかったと。
こんな自分を見られたくなかったと。
その声は、まだ山の家のどこかに残っているような気がした。
「ベル。」
「何だ。」
「私は、ひどいことを言いました。」
「言ったな。」
「謝罪がまだでした。」
「そうだな。」
「申し訳、ありませんでした。」
ベルの手が、髪の上で止まった。
小雪は続けた。
「ベルのせいでは、ありませんでした。」
「知ってる。」
「分かっていたのに、私は言いました。」
「知ってる。」
「傷つけました。」
「傷ついた。」
ベルは正直に答えた。
小雪の胸が少し痛んだ。
「今も。」
ベルは言った。
「怒ってる途中だ。」
「まだ途中ですか。」
「ああ。」
「では、怒りますか。」
「後で。」
「……後で。」
「今は髪だ。」
小雪は少しだけ息を吐いた。
「はい。」
ベルは髪を整え、毛先を手に取った。
小さな鋏が、暖炉の光を受けて輝く。
「切るぞ。」
「はい。」
「動くなよ。」
「動きません。」
ちょきり。
小さな音がした。
白い毛先が床へ落ちる。
床板へ触れる直前、髪は微かに光った。
白い粒がほどける。
細い糸が空気へ溶けていくように、切られた髪は消えていった。
あの日と同じ。
髪は残らない。
そこにあった証拠は、すぐに失われる。
ベルの手が一瞬だけ震えた。
けれど、今度は止まらなかった。
小雪は床を見つめた。
「消えました。」
「見えてる。」
「私を、憐れだと思いますか。」
あの日と同じ問いだった。
けれど、声は違っていた。
ベルは少し間を置いて答えた。
「思わねぇ。」
「本当に。」
「本当だ。」
「では、これまで痛かったと、思いますか。」
「思う。」
「それは、憐れみでは。」
「違う。」
ベルの声が低くなる。
「怒りだ。」
小雪は瞬きをした。
「誰への。」
「お前をそうした全部への。」
暖炉の火が揺れた。
ベルは続けた。
「召喚した奴ら。黙ってた奴ら。仕方ねぇで済ませた奴ら。世界のためだって言った奴ら。お前が自分を削るしかないところまで追い込んだ、全部だ。」
小雪は何も言えなかった。
「お前を、可哀想なものとして見たいんじゃねぇ。」
ベルは言った。
「お前が痛かったなら、痛くしたものに腹が立つ。それだけだ。」
「怒っていますか。」
「怒ってる。」
「私にも?」
「そうだな。お前を痛くしたお前自身にも、一生分くらい怒ってる。」
「では、私は一生、謝罪が必要ですか。」
「いや。」
ベルは再び髪を切った。
白い毛先が落ちる。
光って消える。
今度も、ベルは止まらなかった。
「謝るより、飯を食って寝ろ。」
「そればかりです。」
「俺の人生方針だからな。」
「三下人生方針。」
「やめろ。」
小雪は小さく笑った。
ベルは最後まで髪を整えた。
不揃いだった毛先が、綺麗に揃っていく。
白い髪は、暖炉の光を受けて柔らかく輝いていた。
切った髪は、すべて消えた。
けれど、整えられた髪は残っている。
ベルの手が、最後に櫛を通した。
「終わったぞ。」
小雪は髪に触れた。
短くなった毛先。
揃った髪。
途中ではない髪。
「髪整え文明、完成ですね。」
「やっとな。」
「長い道のりでした。」
「途中で世界滅亡を挟んだからな。」
「壮大な寄り道でした。」
「寄り道で世界を滅ぼしかけるな。」
小雪は静かに髪を撫でた。
「ありがとうございます。」
ベルは布と鋏を片づけながら、少しだけ顔をそらした。
「おう。」
「ベル。」
「何だ。」
「鳴らさなくても来てくれて、ありがとうございました。」
ベルの手が止まった。
小雪は袖の内側から、小さな鈴を取り出した。
何の変哲もない、小さな銀色の鈴。
それは今、静かに小雪の手の中にあった。
「鈴、鳴らしていませんでした。」
「ああ。」
「それでも、来ました。」
「ああ。」
「次は、鳴らします。」
ベルは小雪を見た。
「来る。」
「鳴らさなくても。」
「鳴らしても、鳴らさなくても来る。」
小雪は鈴を見下ろした。
「では、鈴の存在意義が。」
「ある。」
「何ですか。」
「俺が心の準備をする時間だ。」
「鳴ってから来るまでにですか。」
「そうだ。」
「三下の心は繊細ですね。」
「今さら知ったか。」
小雪は鈴を軽く揺らした。
ちりん。
小さな音がした。
ベルはすぐに答えた。
「いる。」
「早いですね。」
「目の前だからな。」
「便利です。」
「便利扱いすんな。」
小雪は鈴を袖へ戻した。
外から微かに川の流れる音が聞こえてくる。
その先には、水車が回り、次の文明を静かに待っている。
召喚に頼るのではなく、この世界を、自分たちの力で動かしていくための音。
それは、何かが終わった音ではなく、確かにこれから始まっていく音だった。
◇ ◇ ◇
翌朝、山の家には柔らかな光が差していた。
小雪は食卓でスープを食べている。
昨日の残りへ、ベルが少し野菜と干魚を足したものだった。
ベルは向かい側でパンを割っている。
作業台には、王城からの書簡がまだ積まれていた。その上には、ベルが昨夜書きかけた覚書が置かれている。
水車式粉挽き。
鉱山排水用の簡易ポンプ。
ふいご改良。
線引き板。
軸受け。
油。
滑車。
安全停止装置。
絶縁材。
コイル。
留学先で見た時計塔の歯車機構。
風車の羽根角度。
蒸気を利用した実験装置。
項目はまだ続いていたが、文字は少しずつ乱れ始めていた。
ところどころ、眠気で線が曲がってしまったようだ。
小雪はそれを見て言った。
「これは、技術顧問らしい字ですね。」
「どんな字だよ。」
「三下が頑張っている字です。」
「褒めてんのか。」
「はい。」
「まったく信用できねぇ。」
ベルはパンを差し出した。
小雪はそれを受け取る。
ふと、頭をよぎった言葉に、目の前の青年をじっと見つめた。
「ベル。」
「何だ。」
「これで、あなたも勇者ですね。」
ベルはパンを落としかけた。
「は?何で?」
「世界の滅亡を救ったではありませんか。」
「そうか?滅亡させようとしたの、お前だけどな。」
「そこは詳細をぼかしましょう。」
「ぼかせるか。」
「三下が勇者になるとは……。下剋上もいいところですね。いえ、むしろ立身出世と言うべきでしょうか?」
「違うだろ。ていうか俺、何回でも言うが公爵家の次男なんだけど。」
「ああ、またまたそのチャラ設定ですか。」
「だから設定じゃなくて出自だって……。」
ベルは静かにパンを置いた。
少し黙る。
小雪はスープを飲みながら、その沈黙を待った。
風に木々の葉が揺れる音。
川を流れる水の音。
竈ではぜる火の音。
賑やかな鳥の声。
山の家の朝。
ベルは、少しだけ視線をそらして言った。
「……俺は別に、勇者じゃなくていいんだけど。」
「三下のままがよいのですか。」
「いや。」
ベルの耳が赤くなり始めた。
「恋人、がいいんだけど。」
小雪は匙を止めた。
「恋人。」
「勇者の、恋人。」
ベルは、かなり勇気を出している顔をしていた。
「そろそろ、助手から格上げしてくれてもいいだろ。」
小雪は少し考えた。
「なるほど。」
「何だよ。」
「では、私は三下の恋人ですか。」
「変な言い方すんな。」
「では、勇者の恋人の恋人。」
「遠回りすんな。」
「三下技術顧問の恋人。」
「肩書きを増やすな。」
「公爵家次男の恋人。」
「それはそれで、何か嫌だな。」
「難しいですね。」
「普通に、ベルの恋人でいいだろ。」
小雪はベルを見た。
「ベルの恋人。」
ベルの顔が完全に赤くなった。
「……そうだよ。」
「そうですか。」
「そうですか、じゃねぇ。」
「はい。」
「……で。」
「何ですか。」
ベルは一度咳払いをした。
「返事は。」
小雪は首を傾げた。
「敬語。」
「今かよ!」
「大事です。」
「ここでかよ!」
「はい。」
「お前、本当に最後の最後まで。」
「最後ではありません。これからも続きます。」
ベルは言葉に詰まった。
それから、顔を赤くしたまま、背筋を少し伸ばした。
公爵家次男らしい、整った姿勢。
しかし耳は赤い。
小雪はそれをしっかりと見た。
ベルは深く息を吸った。
「愛しております。」
声が少し震えていた。
けれど、逃げなかった。
「私の恋人になっていただけないでしょうか。」
小雪はベルを見た。
焦げた飴のような色の目。
怒る目。
怖がる目。
泣きそうになる目。
逃げない目。
山の家へ来てから、ずっと見てきた目。
世界の上空で、小雪を見つけた目。
鈴を鳴らさなくても、迎えに来た目。
小雪はゆっくりと息をした。
勇者さまではなく。
観測者でもなく。
審判者でもなく。
世界を滅ぼす者でもなく。
ただの小雪として。
言った。
「私も愛していますよ、三下くん。」
ベルの顔が、さらに赤くなった。
けれど、彼は逃げなかった。
少しだけ笑い、答えた。
「ありがとうございます、勇者様。」
その呼び方は、もう世界が小雪へ押しつけたものではなかった。
ベルが、小雪へ向けて呼ぶものだった。
敬意と、怒りと、愛情と、少しの照れが混ざった呼び方。
小雪は立ち上がった。
食卓を回り、ベルの前へ行く。
ベルが不思議そうに見上げた。
「何だ。」
「恋人になりましたので。」
「お、おう。」
「確認行為です。」
「何の。」
小雪は少し身をかがめた。
そして、ベルの唇へ、そっと口付けた。
ほんの短い。
触れるだけの口付け。
けれど、効果は絶大だった。
ベルは完全に固まった。
目を見開き、耳まで赤くなり、しばらく息をすることも忘れている。
小雪は顔を離し、じっと観察した。
「ベル。」
「……。」
「ベル。」
「……はい。」
「生きていますか。」
「多分。」
「鈴を鳴らしますか。」
「目の前にいる……。」
「そうですね。」
「心臓が。」
「刺さりましたか。」
「……刺さり、ました。」
不意な口付けは、初心なハートを無事に撃ち抜いたらしかった。
小雪は笑った。
山の家では、これからも三下くんと勇者さまの日常が続いていく。
科学文明は始まったばかりだ。
先はまだまだ長いだろう。
それでも、きっと二人が共に在り続けることは変わらない。
小雪はもう一度ベルに静かに口付けた。今度はベルもその背をゆっくりと抱き寄せた。
今日は科学文明も生活文明も発展の兆しは無さそうだ。
ただ、恋愛文明だけは、記録が追い付かないほど躍進する。
かもしれない。
『三下くんと勇者さま』 完。




