第五十一話 裂け目に落ちる白い光
「小雪!」
ベルの声が、裂け目の前で弾けた。
小雪は振り返らなかった。
切り落とされた左腕は、すでに白い光に包まれながら形を取り戻し始めている。
骨が伸びるのでも、傷口から肉が盛り上がるのでもない。
欠けた場所だけが、世界のどこかに残された完成形を写し取るように、少しずつ埋まっていく。
ベルは、その光景を見てしまった。
見てしまった以上、もう知らなかった頃には戻れない。
「おまえ、何やってんだ!」
ベルは小雪へ駆け寄った。戻り始めた腕へ触れようと手を伸ばした瞬間、横から少年魔王の平坦な声が飛んできた。
「触るな。今はまだ流れが安定していない。」
「知るか!」
ベルは振り返り、少年を睨みつけた。
「小雪が腕を切ったんだぞ!」
「見れば分かる。」
「分かってるなら止めろよ!」
「止めれば、裂け目が飢える。」
「だから、その裂け目が飢えるって何なんだよ!」
ベルの声が、崖の前で虚しく響いた。
裂け目は何も答えない。
ただ、小雪の腕だったものから生まれた白い光を、音もなく吸い込んでいる。
その光は下へ落ちているようにも見えたが、谷底へ向かっているわけではなかった。奥へ吸われているわけでもない。ただ、世界のどこにも存在しない場所へ、そのまま消えていく。
ベルは喉の奥が詰まるのを感じた。
小雪の左腕は、もうほとんど戻っている。
見た目だけなら、何もなかったようだった。
けれど、何もなかったはずがない。
補填は回復ではない。
同じしっぽではない。
小雪自身が、そう言った。
「小雪。」
今度は声を落とした。
「こっちを見ろ。」
小雪はすぐには動かなかった。
「見ろ。」
もう一度言うと、ようやく振り返った。
顔色は変わっていない。痛みに耐えている様子もなければ、泣きそうな顔でもない。
ただ、予定していた作業を一つ終えた時と同じ顔をしていた。
それが、ベルには一番怖かった。
「大丈夫です。」
「大丈夫じゃねぇ。」
「補填されました。」
「そういう話じゃねぇ!」
ベルが叫ぶと、小雪はわずかに瞬きをした。
「もう痛くはありません。」
「痛いかどうかの話でもねぇ!」
自分の声が震えていることに、ベル自身も気づいていた。
怒っている。
怖い。
理解できない。
その全部が一度に押し寄せているのに、目の前の小雪だけが、いつも通りの顔をしている。
「何で、そんな顔してんだよ。」
「顔。」
「何で普通にしてられるんだ。」
小雪は戻った左腕を一度見てから、淡々と答えた。
「必要な作業なので。」
「作業って言うな。」
ベルが一歩近づくと、少年魔王が再び声をかけた。
「そこまでにしておけ。」
「あ?」
「勇者は、まだ終えていない。」
ベルの視線が小雪へ戻った。
小雪は戻ったばかりの左手を軽く握り、指が動くことを確認している。それから、何事もなかったように袖をまた上げようとする。
ベルは、その手首を掴んだ。
今度は少年魔王も止めなかった。
「もうやるな。」
「まだ足りません。」
「足りるとか足りねぇとか、そういう話じゃねぇ。」
「足りません。」
「何がだよ!」
小雪は答えなかった。
ベルの手の中にある左手は、さっき自分の目の前で切り落とされたはずなのに、指も爪も、何もかもが元の形へ戻っている。
だからこそ、余計に恐ろしかった。
「魔王。」
「何だ、吊り目。」
「説明しろ。」
「勇者に聞け。」
「こいつは答えねぇんだよ!」
少年魔王は小雪を見た。
小雪は何も言わない。
やがて少年は、小さく息を吐いた。
十歳ほどにしか見えない姿なのに、その吐息だけはひどく古かった。
「なら、俺が話す。」
「最初からそうしろ。」
「おまえが叫んでいたからな。」
「叫ぶに決まってんだろ。」
「そうだろうな。」
少年魔王は、色のない裂け目へ目を向けた。
「これは、世界の裂け目だ。」
ベルは黙った。
「人間どもは果ての大地と呼ぶ。魔族は飢えの口と呼び、神殿は魔王の根源と呼んだこともある。」
「魔王の根源?」
「本来、人間たちが魔王と呼んでいるものは、俺ではない。」
ベルは少年を見る。
「は?」
「俺は魔王役だ。」
「魔王役……さっきからそればかりだな。」
「魔王役は、人間たちの物語に必要な、倒されるための魔王だ。」
少年魔王は、何度も繰り返してきた説明をするように淡々と言った。
「本当の魔王は、あの裂け目だ。人格はない。王でもない。生き物ですらない。ただの現象だ。」
ベルは言葉を失った。
小雪には少しも驚くような様子はない。
すでに知っている者の顔だった。
「百年に一度、魔王が蘇る。魔王が魔族や魔物を凶暴化させ、天を荒らし、大地を痩せさせる。そして異世界から召喚された勇者が魔王を討てば、世界は再び救われる。」
少年魔王は、古い物語を暗唱するように続けた。
「そう教えられてきたのだろう。」
「……ああ。」
「都合のいい話だ。」
ベルの眉が寄った。
「何がだよ。」
「誰かを悪にして、誰かを勇者にして、最後に倒したことにすれば、全て終わったことにできる。」
ベルの喉が鳴った。
聞きたくない。
一瞬、そう思った。
けれど、もう聞かなかったことにはできない。
「じゃあ、魔物の凶暴化は。」
「魔王が命じたわけではない。」
「魔族が人間を襲うのは。」
「魔王が命じたわけではない。」
「天変地異は。」
「魔王が起こしたわけではない。」
ベルの声が荒くなる。
「じゃあ、何なんだよ。」
少年魔王は裂け目を見た。
「飢えだ。」
その言葉は、ひどく静かだった。
「世界から魔素が減れば、最初にこの辺りから影響が出る。大地が痩せ、魔物が狂い、魔族にも異常が出始める。だから人間たちは、それを魔王の復活と呼ぶ。」
ベルの頭に、昨日の魔物が浮かんだ。
赤い目。
口元から漏れていた青白い光。
痩せた身体。
小雪は、飢えていると言った。
「それが、魔王のせいってことにされてたのか。」
「そうだ。こちらに異常が出始めれば、人間側から魔王役を立てるよう連絡が来る。」
ベルは奥歯を噛んだ。
「ふざけんな。」
「ふざけてはいない。ずっとそうだった。」
「なお悪い。」
「そうだな。」
少年は否定しなかった。
その平坦さが、かえってベルの怒りの置き場を奪った。
「おまえは、それを知ってたのか。」
「知っていた。」
「知ってて、魔王のふりをしてたのか。」
「そうだ。」
「何で。」
「利害が一致したからだ。」
「利害?」
「魔族は、世界が飢えれば最初に被害を受ける。人間は、世界そのものに問題があると認めたくない。ならば、人間は魔王という物語を用意し、魔族は倒される役を出す。」
ベルは少年を睨んだ。
「何だよ、それ。」
「長い時間をかけて積み上げられた、歴史ある仕組みだ。」
「仕組みって言えば済むと思うな。」
「済まない。」
少年魔王は淡々と答えた。
「だが、そうやって事実世界は続いてきた。千年以上前からな。」
ベルは息を吸った。
何かを言おうとした。
けれど、言葉が出なかった。
魔王を斬ればいいのか。
違う。
裂け目を斬ればいいのか。
そんなことができるようには見えない。
小雪を止めればいいのか。
それは止めたい。
けれど、止めた先で何が起こるのか、ベルにはまだ分からない。
気づけば、彼は小雪の左手を握ったままだった。
小雪は振りほどこうとはしない。ただ、静かに立っている。
「一年半ほど前になるか。」
少年魔王が言った。
「こいつは、ここへ来た。」
ベルの指に力が入った。
「魔王討伐の時か。」
「少し違う。人間どもが討伐完了を発表したのは、その大分後だ。」
「……。」
「勇者は魔王役だった俺を追い詰め、ここで初めて真実を聞いた。」
ベルは小雪を見た。
小雪は何も言わない。
「この世界がどうやって保たれてきたのか。勇者召喚が何のために行われているのか。そして、魔王討伐という物語が何を終わらせるために必要なのか。」
「待て。」
ベルの声がかすれた。
「そこまで言うなら、全部言え。」
「まだ早い。」
「ふざけんな。」
「今のおまえは、目の前で腕を一本落とされただけで、もう壊れかけている。」
ベルは反論できなかった。
少年の声は平坦だった。
だからこそ、嘘には聞こえなかった。
「先に、一年半前の話をしてやるよ。」
少年魔王は裂け目へ向き直った。
「真実を知った勇者は、王へ勇者召喚の停止を求めた。」
ベルは息を止めた。
「勇者召喚の、停止。」
「そうだ。次を呼ぶな、と言った。」
「次?」
「当時、世界はまだ足りていなかった。」
ベルは眉を寄せた。
「何が。」
「魔素だ。」
裂け目の縁では、小雪の腕から流れ込んだ白い光が、まだわずかに揺れている。
「世界は、まだ飢えていた。だから王家と神殿は、さらに勇者候補を呼ぶつもりだった。前例通りに、これまで通りに。途中で止めれば、世界は安定しないと信じていたからな。」
「これまで通りって、何だ。」
「それは後で聞け。」
「またかよ。」
「一度に全て聞けば、本当に立っていられなくなる。」
「勝手に決めるな。」
「なら、立っていろ。」
少年魔王はベルの怒りを受け流すように続けた。
「勇者は王へ言った。今すぐ召喚を止めろ、と。」
ベルが握っている小雪の手が、ほんのわずかに動いた。
それだけだった。
けれど、ベルは気づいた。
「王は止められなかった。いや、止め方が分からなかったと言う方が正しいかもしれない。世界を飢えさせたまま途中で止めれば、全てが崩れると教えられてきたからな。」
王城で見た国王の顔が、ベルの頭に浮かんだ。
小雪を恐れていた王。
菓子を勧め、何とか機嫌を取ろうとしていた王。
悪人には見えなかった。
だからこそ、余計に気味が悪かった。
「勇者は言った。」
少年魔王の声は、少しも揺れない。
「ならば、この世界を滅ぼす、と。」
ベルの身体が固まった。
「……は?」
小雪は何も言わない。
「今、何て言った。」
「このまま次を呼ぶなら、自分がこの世界を滅ぼすと、王へ告げた。」
ベルは小雪を見た。
「小雪。」
「はい。」
「本当か。」
「はい。」
あまりにも短い返事だった。
ベルは言葉を失った。
昨日まで、いや、今朝まで、ベルは小雪が魔物の凶暴化を調べに来たのだと思っていた。
何か危険な情報を知っているのだろうとは思っていた。
王城の秘密。
魔族領の真実。
それくらいだと。
世界を滅ぼす。
その言葉は、あまりにも遠かった。
遠すぎて、意味が頭に入らない。
「だが、滅ぼさなかった。」
少年魔王が言った。
「そして、王へ代案を出した。」
「何を。」
「足りない分を、代わりに自分が補う、と。」
ベルの指が強張った。
「こいつは百日以上、ここで自分を削り続けた。」
少年魔王は裂け目を示した。
「削っては、あそこへ流した。戻れば、また削った。それを何度も繰り返した。」
「やめろ。」
ベルが言った。
少年魔王は止まらなかった。
「五百人分だ。」
ベルの呼吸が止まった。
「五百……。」
「本来なら、その後さらに呼ばれるはずだった勇者候補たち。その分を、こいつ一人で補った。」
「やめろって言ってるだろ。」
「聞くと言ったのは、おまえだ。」
「こんな話だと思ってねぇ!」
「そうだろうな。」
少年魔王は、それでも平坦だった。
「俺も、最初は半信半疑だった。自分を刻むなんて正気の人間ができることじゃない。」
そこで初めて、小雪が口を開いた。
「私は、五百人分がどのくらいなのか分かっていませんでした。」
ベルは小雪を見る。
「小雪。」
「ただ、次を呼ばせたくありませんでした。」
「……。」
「だから、補いました。」
「補いました、じゃねぇ。」
ベルの声が震えた。
「百日以上って何だよ。」
「百日と少しです。」
「少しって何だよ。」
「数えていた記録が、途中で読めなくなりました。」
「何で、そんな言い方するんだよ。」
「事実です。」
「事実って言うな!」
ベルは叫んだ。
小雪は黙った。
ベルの手は、小雪の左手を強く握っている。
痛いかもしれない。
けれど、小雪は何も言わない。
「その結果、勇者召喚は止まった。」
少年魔王が静かに続けた。
「王は止めざるを得なかった。世界を滅ぼすと脅され、そのうえ足りない分を勇者本人が埋めたからな。結果が同じなら、悪くないだろ?」
ベルは何も言い返せなかった。
代わりに、小雪へ顔を向ける。
「……だから、王はおまえを怖がってたのか。」
小雪は少しだけ首を傾けた。
「それもあります。」
「それも?」
「はい。」
「まだあるのかよ。」
「あります。」
ベルの喉から、笑いに似た息が漏れた。
何も面白くない。
笑えるはずもない。
ただ、もうどういう顔をすればいいのか分からなかった。
「おまえ。」
「はい。」
「そんなことしてたのか。」
「はい。」
「それで、その髪か。」
風が吹いた。
小雪の白い髪が揺れる。
雪のような髪。
ベルは何度も綺麗だと思った。
今も綺麗だった。
だからこそ、吐きそうになった。
「その身体もか。」
「旅の影響もあります。」
「質問に答えろ。」
「補填の影響も、あります。」
「顔が幼く見えるのも。」
「おそらく。」
「おそらくって何だよ。」
小雪の顔には特になんの感情も浮かんでいない。それが酷く不気味だった。
ただの事務連絡をするような平然とした顔で、自分の代償を語っている。
「正確にはよく分かりません。」
「なんで分からないんだよ、おかしいだろ。」
「でももう終わりました。」
「終わってねぇだろ!」
ベルの声が裂けた。
「今またやっただろ! 俺の目の前で!」
「今回の補填は少量です。」
「量の話じゃねぇ!」
「ですが、裂け目の揺らぎは少し落ち着きました。」
「世界より先に、自分の腕を見ろ!」
小雪は自分の左腕を見た。
傷はない。
特に何の跡も残っていない。いつも通り補填された腕。
それでも、ベルはその手を離せなかった。
離せば。
また同じことをする気がした。
「ベル。」
「何だよ。」
「離してください。」
「嫌だ。」
「まだ観測が必要です。」
「嫌だ。」
「ベル。」
「嫌だって言ってんだろ。」
小雪は黙った。
少年魔王も、しばらく何も言わなかった。
裂け目の周囲では、残った光の粒が静かに流れている。
ベルは小雪の手を掴んだまま、荒くなった呼吸を整えようとしたが、少しも整わなかった。
頭の中で、これまでの出来事が勝手につながっていく。
補填は回復ではない。
同じしっぽではない。
魔物討伐の時、腕の輪郭が白い光へほどけたこと。
白い髪。
小さくなった身体。
王の怯え。
旧魔王領への転移装置。
世界を滅ぼすという言葉。
五百人分。
百日以上。
ベルは、ただ立っているだけで精一杯だった。
「勇者。」
少年魔王が小雪を呼んだ。
「はい。」
「今のは、一時的な補填にすぎない。」
「はい。」
「根本的な解決にはならない。」
「分かっています。」
「西が悪い。」
「西大陸ですか。」
「ああ。もうすぐ大きな戦が始まる。八十年ぶりの大戦になるだろうな。それに今回は、過去にはなかった規模の大魔法が開発され始めている。このまま進めば、以前とは比べものにならない速度で消費が進む。」
ベルはゆっくり少年魔王を見る。
「……また、世界が飢えるってことか。」
「そうだ。」
「また、魔物が狂う。」
「そうだ。」
「また、魔族が苦しむ。」
「そうだ。」
ベルは一度、裂け目を見た。
「また、世界がおかしくなる。」
「そうだ。」
少年魔王は淡々と答えた。
ベルは奥歯を噛んだ。
「それで、どうするつもりだ。」
少年魔王は小雪へ向き直った。
「勇者。おまえは一年前、この世界を滅ぼすと言った。」
小雪は答えない。
「俺たちはたしかに長年、おまえたちの生き血を啜って生きてきた。」
ベルの眉が動いた。
生き血。
その言葉の意味は、まだ分からない。
けれど、ひどく嫌な響きに感じた。
「だからこそ、魔族はもう抵抗するつもりはない。裂け目が飢え、世界が欠け、それでもおまえが滅ぼすと言うなら、それも仕方ない。そういうところまで来ている。」
「魔王。」
小雪の声が、少し低くなった。
「事実だ。」
「はい。」
「どうするつもりだ。」
小雪は、すぐには答えなかった。
裂け目を見た。
少年魔王を見た。
最後に、ベルを見る。
その視線を受けただけで、ベルはなぜか息が詰まった。
「……滅ぼすつもりでした。」
小雪は静かに言った。
「一年前は。」
ベルの手が震える。
「けれど。」
小雪は、まだベルを見ていた。
「僅かな、細い糸を見つけてしまったから。」
ベルは何も言えなかった。
細い糸。
その言葉を、前にも聞いた。
銅線を初めて引いた日、細くて切れそうな一本を見ながら、小雪は蜘蛛の糸のようだと言った。
あの時、小雪はどんな顔をしていた。
何を考えていた。
今のベルには、もう分からない。
けれど、小雪の視線は自分へ向いている。
だから、意味だけは分かってしまった。
水車。
滑車。
炉。
銅線。
コイル。
魔法ではない力。
小雪は皆が使えるものを作る為に、それらを作っていたのではない。
世界を滅ぼさずに済む理由を。
滅ぼす以外の道を。
探していた。
そして、その細い道の中にはベルもいる。
「小雪。」
「はい。」
「俺は。」
言葉が続かなかった。
自分が何なのか。
細い糸なのか。
世界を滅ぼさないための理屈の一部なのか。
そんなものになりたいとは一度も頼んだ覚えはない。
小雪は静かに続けた。
「まだ、決めていません。」
ベルは小雪を見る。
「何を。」
「この世界を、どうするかです。」
ベルは完全に言葉を失った。
少年魔王も、もう何も言わなかった。
裂け目の周囲では、小雪から流れ出た白い光の最後の粒が、音もなく消えていく。
世界は、まだそこにある。
けれど、ベルが知っていた世界は、もうどこにもなかった。
しばらくして、ベルは自分の手の中にある小雪の左手へ視線を落とした。
さっきまで、そこには何もなかった。
その腕がなぜ世界の裂け目を満たしたのか。
小雪が五百人分を補ったというのは、一体どういうことなのか。
ベルはまだ、何一つ知らなかった。




