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もりとき怪談 第二集【一話完結/短編怪談】  作者: もりとき


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8/11

お化け屋敷の鍵

 これは俺が中学生だった頃の話だ。

 部活が終わって、友達数人と連れ立って下校していたら、ふと制服の上着のポケットに鍵が入っているのに気が付いたんだ。

 鍵をつまみ上げて眺めてみても、全然見覚えのない鍵だった。

「なんだこれ」

 俺の言葉に友達は足を止めて、俺が目の前にぶら下げている鍵を見た。

「何って、鍵じゃん」

「でも、俺ん家のじゃない」

 俺はズボンのポケットから家の鍵を取り出した。俺は自分の家の鍵にキーカバーをつけてたから、間違いなくズボンのポケットに入ってた方が俺ん家の鍵だった。

 対して上着のポケットに入っていた鍵はキーホルダーとかは一切ついていなくて、ちょっと錆びてる部分もある鍵だった。形も変わったところはなくて、古ぼけてはいるけど普通の鍵って感じだった。


「家の中に、鍵のかかる部屋とか金庫とかないの?」

「まったく思いつかない」

「じゃあ、学校の教室の鍵とか?」

「そんなん使ったことないし、借りた記憶もないよ」

「もしかしたら、お化け屋敷の鍵なんじゃねーの?」


 友達が言ったお化け屋敷っていうのは、俺達がそう呼んでた廃屋のことだった。俺ん家の近くにある、ちょっと大きめの廃屋。洋風の家で、まずは門があってその先に小さな庭、庭の先に家があるって感じだった。窓の鎧戸が中途半端に外れてて、庭の草は生え放題。まさにお化け屋敷って感じの家だった。

「きっとそうだよ!」

「なんでだよ、それはおかしいだろ。なんで俺が持ってんだよ」

「いいじゃん、試してみるだけ試してみようぜ!」

 俺よりも友達の方が盛り上がって、俺達はそのままお化け屋敷に行ってみることにした。


 これまでも何度かお化け屋敷には忍び込んだことがあった。とはいえ、せいぜい庭先までだ。玄関扉には鍵がかかっていたし、小学生の頃は家の中にまで入り込む勇気はなかった。

 外れた鎧戸から家の中を覗き込んだりもしてみたが、外の光が反射して家の中はよく見えなかった。せいぜい、家具が置き去りになってるのがぼんやりと確認できる程度だった。

 部活帰りだったから時間は夕方を過ぎて暗くなり始めた頃で、お化け屋敷のある道を通る人はほとんどいなかった。なんせ雰囲気が不気味だから、この周辺に住んでいる人はお化け屋敷がある道を避けることが多かった。

 俺達は門を開けて、庭に入った。門がキィキィと鳴る耳障りな音が、より雰囲気を盛り上げてた。

 友達に囃し立てられるように、俺はポケットに入っていた鍵をお化け屋敷の玄関扉の鍵穴に差し込んだ。

 鍵は吸い込まれるようにすぅっと鍵穴に入って、難なくカチリと音がした。


「開いた!」

「マジかよ!」

 俺達は興奮気味に、でもなるべく声は潜めて鍵が開いたことを確認しあった。

 俺はドキドキしながら、ドアノブに手をかけた。唾を飲み込む音が、妙に大きく聞こえた。ギギィと音を立てて、玄関扉が開いた。開いた瞬間に、埃っぽい重たい空気が漂って、息苦しくなった。

「おじゃましま〜す」

 友達がそんなことを言いながら、玄関に一歩踏み込んだ。

 その瞬間、家の奥から「おかえり」って小さな声が聞こえるのと同時に、ダダダダダッって走ってくる音が聞こえた。

 俺達は悲鳴を上げて、ダッシュでお化け屋敷から逃げた。


 近くにあったコンビニの駐車場まで逃げて、

「聞こえた? おかえりって、聞こえた?」

「聞こえた、聞こえた!」

「っていうか、あの家、誰かまだ住んでたの?」

「んなわけないだろ、ずっと空き家だったよ!」

 とりあえず、その場にいた全員が「おかえり」って声を聞いてたし、俺達に向かって走ってくる足音も聞いてた。

 声に関しては、小さい女の子だとか、おばさんの声だったとか、意見が分かれた。俺にはおっさんの声に聞こえてた。

 とにかくその日はもう家に帰ろうってなって、そのコンビニで解散してそれぞれ家に帰ったんだ。


 後日、明るい時間にみんなでお化け屋敷に行ってみたんだけど、お化け屋敷の玄関扉はこれまでと同じように鍵がかかってた。

 あの日、扉に差した鍵を抜いたのか、差しっ放しにしたのか俺は覚えてなかったんだけど、俺はもうお化け屋敷の鍵を持ってなかった。当然、あの日居合わせた友達も全員、鍵は持っていなかった。

 これが、俺が中学生のとき経験した、不思議で怖い話。



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