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もりとき怪談 第二集【一話完結/短編怪談】  作者: もりとき


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5/12

図書館の風景画


 就職を機に引っ越しをしたら、家から徒歩5分くらいのところに市立図書館があったの。

 けっこう古めかしい感じの図書館なんだけど、私は本を読むのが好きだからラッキーって思ってたんだ。

 隣に大きな公園もあって、天気のいい日にはお弁当を持って行くのもいいなって思ってた。

 それで、図書館ってさ、地元の人が描いた絵画を飾ってたりするの、知ってる? 図書館にもよるのかな?

 まぁとりあえず、家から近いその図書館の玄関ホールには絵画が何枚か飾ってあってさ、下にタイトルと作者名が書かれてて、その作者名のところに「山田太郎(◯◯町在住)」とか書いてあるのよ。

 風景画とか静物画とかなんだけどね、その中に、公園の風景画があったの。


 公園って言っても、図書館の隣にある公園じゃないみたい。むしろ雰囲気的には海外の公園っぽくて、ちょこちょこ描いてある人物も金髪の人が混ざってたから、外国の絵なんじゃないかな?

 で、図書館に行く度にその絵が目に入ってたから、毎回見るともなしに見てたのね。

 それであるとき、ふっと違和感を覚えたの。

 足を止めてよくよく絵を眺めてみたんだけど、私が感じた違和感がなんなのか、そのときはよく分からなかった。自分でも原因の分からない違和感だし、何かの勘違いだろうと思ってその日は終わったんだよね。

 別の日に図書館に行ったときにその絵の前を通りがかって、やっぱり違和感があった。だからまた足を止めて、絵をじっくり眺めたの。

 その公園の絵には、人物が何人か描いてあるんだけど、帽子をかぶったおじさんがいてね、おじさんは公園にある街灯の下に立ってた。

「あれー、このおじさん、こんなところにいたっけ?」って思ったの。

 前に見たときは、街灯の下には誰もいなかったような気がするのね。

 とはいえ、帽子をかぶってるのと、ちょっと丸くでっぱったお腹がおじさんっぽく見えるだけのシルエット。それで私がおじさんだろうと思っているだけで、絵としては風景画だから、人物なんてモブなのよ。

 だから前に見たときは気が付かなかっただけかなと思って、その日もそれで終わったのね。


 でもだんだん気になってきちゃって、また次の週末に図書館に行くときに確認してみようって思ってたの。

 それで週末になって図書館に行って、絵の前に立ってみたら、街灯の下におじさんがいなかったの!

 おじさん、どこに行った? って探してみたら、おじさんはベンチに座ってた。

 やっぱりこの絵の中でおじさんは動いてるんだって思って、ちょっと興奮しちゃった。

 だって、誰もこんな絵を気にしてないんだよ。私だけがおじさんの存在に気が付いてて、週末に図書館に行く度に「おじさんをさがせ」をやってるんだと思ったら、面白くない?

 それからは週末が一層楽しみになった。借りた本を返しに図書館に行って、玄関ホールで「おじさんをさがせ」をやって、本を返して、新しい本を借りる。

 それが私の週末ルーティンになったのね。


 で、この間の週末。

 私はいつも通りに図書館に行って、絵の前に立って「おじさんをさがせ」をしていたのね。

 そうしたら、おじさんは先週と同じ場所にいたんだけど、帽子を軽く上げて、まるで私に挨拶してるみたいな格好をしてた。

 その瞬間、急にゾッとしちゃって。


 なんで私だけがおじさんに気付いてるなんて思っちゃったんだろう。

 実際は、私だけがおじさんに気が付いてたんじゃない。おじさんも私に気が付いていて、私に挨拶をしてアピールしている。


 そう思ったら、こうやって毎週末にこの絵を眺めていたら……って想像しちゃってさ。どんどんおじさんが画面に近付いてきて、いつかこの絵から抜け出してくるような、そんな想像。急に怖くなって、私は絵から目を逸らした。

 その日はもう本だけ返して、それ以降はその図書館に行くのはやめちゃった。図書館のホームページから本の予約をして、少し離れたところにある分室で受け取りしてる。

 ちょっと不便になっちゃったけど、まぁしょうがないかなって思ってるよ。

 


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