表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
もりとき怪談 第二集【一話完結/短編怪談】  作者: もりとき


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
45/50

私の顔を拾わないでください


 これは俺が小学校のときの話です。本当にあった話。

 実際に、俺の地域には貼り紙もあったし、もし、俺と同じ貼り紙を見たって人がいたら、教えてください。


 俺達の学校の通学路には、変な貼り紙が貼られてました。俺達が小学4年生の頃です。

 電柱とか、掲示板とか、そういうところに、その貼り紙はありました。

 パソコンで打ち出した文字だけの貼り紙で、内容はこんな感じでした。


「この辺りに、私の顔が落ちています。見かけた方は、目を合わさないでください。すぐにその場を離れてください」


 女の子達は怖がっていましたが、俺達は「顔が落ちてるってなんだよ」って言い合いながら笑っていました。

 縁日で買ったお面をわざと地面に置いて「顔があったぞぉ!」って言って、走って逃げたりしました。

 町内でも話題になっていて、朝の登校中に見かけても、下校する時間には剥がされたりしていました。でも、翌朝になるとまた貼ってあるのです。

 回覧板で、「イタズラをしている人を見かけたら、町会長か班長に知らせてください」とお知らせが出回るくらいでした。

 今だったら、そういう町の不思議を解明するテレビ番組に送ったり、ユーチューバーが調査しててもおかしくないような感じでした。でも俺が小学生の頃は、まだネットがありませんでしたし、テレビに送るなんてこともなかったです。


 貼り紙が剥がされている電柱を横目に見ながら、俺は同じクラスの友達と下校していました。話の内容は、あの貼り紙。

 もし、顔が落ちてるのを見つけたらどうする? なんてことを話していたと思います。友達は「俺は逃げたりしない。顔が落ちてたら、その顔を自分の顔につけて、鏡を見るよ!」なんて言っていた記憶があります。

 俺と友達はゲラゲラ笑いながら帰ったのを、鮮明に覚えています。


 その友達が、ある日、学校に来なくなりました。

 先生に理由を聞いても「あー、体調が悪いらしい」となんとも歯切れの悪い言葉が返ってきます。

 クラスメイトの間では「学校に来なくなる前日、道端にしゃがんでた」「何か拾ってたみたい」「フラフラしながら歩いてた」と噂が飛び交っていました。

 でも、学校に来なくなった日の前日に、下校してから友達を見かけた人はいても、友達と会話した人はいませんでした。俺もその日は委員会で学校に残ったので、一緒には帰りませんでした。


 俺は、これまで友達と一緒に下校していた道をひとりで帰るようになりました。

 そして、剥がし忘れたのか、電柱に「この辺りに、私の顔が落ちています。」と書かれた貼り紙が残っているのを見つけました。

 でも、いつもの貼り紙とは少し違います。マジックで書き加えたような滲んだ手書き文字が書かれてました。


「私の顔を拾った人へ。返してください。それはあなたの顔ではありません。」


 その書き文字の下に、写真が貼られていました。隠し撮りをしたような写真で、写っている人物の顔はマジックで塗りつぶされていました。だから写真の人物が誰なのかは分かりません。――普通の人には。


 でも、俺にはすぐに分かりました。服に、見覚えがあります。後ろに写っている景色も、俺達がいつも遊んでいる公園です。そしてその写真には、途中で切れてしまっているけれど、俺の体が半分写っています。

 ドクドクと心臓が脈打ちました。たぶん、顔を塗りつぶされているのは、学校に来なくなってしまった俺の友達です。


 俺はそのまま、自分の家ではなく友達の家に行きました。

 チャイムを鳴らしても、誰も出てきません。道路に面した窓はカーテンがぴっちり閉められていて、中の様子はまったく分かりませんでした。

 俺は何度かチャイムを鳴らしましたが、やはり反応はありませんでした。

 諦めて、友達の部屋がある二階の窓を見ました。カーテンの隙間から、こちらをのぞいている顔が、一瞬見えました。俺と目が合って、すぐにカーテンが閉じました。

 あの部屋は間違いなく友達の部屋です。それにこちらを見ていた人物が着ていたパジャマは、前に友達の家に泊まったときに友達が着ていたパジャマと同じでした。

 でも顔が、ぜんぜん友達ではなかったです。

 ちょっと太り気味で、まんまるでパンパンな顔をしていた友達。運動したり、寒いときにはすぐにほっぺが赤くなった友達。


 でも、カーテンからのぞいていた顔は、シワシワの老婆のようでした。

 それ以降、友達は学校に登校することもなく、気が付いたら一家ごとどこかに引っ越したようでした。

 それから随分長い時が経って、今では俺の同級生も、俺の友達のことをよく覚えていません。それどころか、あの奇妙な貼り紙のことも、誰も覚えていないのです。

 確かにあの貼り紙はありましたし、学校に来なくなってしまった俺の友達も存在しています。

 せめて、あの貼り紙があったことだけでも確認したいんです。だから、もし、同じような貼り紙を見たことがある人がいたら、教えてください。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ