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もりとき怪談 第二集【一話完結/短編怪談】  作者: もりとき


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首の持ち主

 俺には霊感があるんだ。

 どうやら母方のばあちゃんから引き継いだ能力っぽい。ばあちゃんも視える人だった。


 俺はときどき、確実に生きている人間じゃない何かが見える。ただそういう奴らはとにかく気付いてほしくて、見えると分かると面倒くさい。

 少しでも見える素振りを見せると付きまとわれる。しつこく話しかけてきたり、反応を見るために驚かしてきたりする。

 だから俺は、徹底的に見えないふりをしてた。

 だけど、人間ってのは不意をつかれると弱い。

 これは俺が、うっかり幽霊に応えてしまったばっかりに起きた話だ。


 バイトの帰りで、俺は夜道を歩いていた。

 なるべく明るい大きな通りを歩くようにしてるけど、自宅の近くになるとどうしても住宅街を歩くことになる。

 その日は俺以外に通行人はいなくて、俺は足早に自宅に向かっていた。

 ふと、街灯の下に立つ人影が目に入った。ただ、そのシルエットがおかしい。肩の上にあるはずの頭がない。

 俺はすぐに、それが生きてる人間じゃない何かだって気がついた。


 できるだけソイツの方を見ないようにして、俺はそこを通り過ぎようとした。

 顔を俯き気味にして、横目で見てみた。ソイツは生身みたいに現実感のある存在だったけど、自分の頭を両手で胸元に抱えていた。

 ゲームの敵で出てくるデュラハンってモンスターを思い出した。あれも首のない人間が自分の頭を脇に抱えて、馬に乗ってるって幽霊だ。

 そんなことを考えながらソイツの前を通り過ぎようとした、まさにそのとき。


「僕の首……知りませんか?」


 そう問いかけられた。

 俺は思わず「今、持ってんじゃん」って言っちゃったんだ。ヤバいって思ったよ。

 案の定、ソイツは吸い寄せられるみたいに俺に近付いてきた。なるべく見ないようにしてたけど、視界の端に、じっと俺を見てくる生首が見える。


 ソイツはしばらく沈黙した後に「これは……僕の首じゃないんですよね」と言った。

 僕の首じゃない、と言いながらも、生首の口は動いていた。今、俺に語りかけているのは、生首の方なのか体の方なのか、よく分からなくなったよ。

 ソイツは、俺の顔の横に生首をぐっと近づけた。避けたかった。避けたかったけど、ここで避けたら「見えてます」って言ってるようなもんだ。

 なんせ俺は一回失敗してる。絶対にコイツに「見えてる」ってバレたらヤバい。


 バッチリ視界に入っている生首が、うっすらと笑って言った。


「あなたに、似ているような気がするんです」


 そう言われた瞬間、体中に鳥肌がぶわっと広がった。

 自分の首がふわっと浮いたような感覚があって、俺は思わず襟元を押さえて首を守るようにした。

 気がついたら、アイツはいなくなっていた。

 気配も感じない。

 首にあった浮遊感みたいなのも一瞬で、鳥肌も徐々に収まっていった。

 俺は周囲を見回したりもせず、より速度を早めて家に向かった。

 その後は何事もなく家にたどり着いて、玄関から親を呼んで塩を持ってきてもらった。親は俺が霊感体質だって知ってたから、すぐに塩を俺にかけた。

 とりあえず、その日はそれ以上は何もなかった。


 翌朝、起きて朝飯を食いに行ったら、俺を見た母親が「あんた、首のそれ、何?」って言った。

 洗面台で鏡を見てみたら、俺の首には薄っすらと赤い線が走っていた。親に確認してもらったら、その赤い線は俺の首をぐるりと一周囲んでいた。

 まるで首を切る印のように。

 母親がすぐさまばあちゃんに連絡して、その日は学校を休むことになった。ばあちゃんの知り合いに祓い師がいて、俺はこの人に何度もお世話になってるんだけど、その人の家に行くことになった。


 その後、しばらく首の赤い線は消えなかった。

 だから2週間に1回ペースでお祓いしてもらって、それが徐々に1ヶ月に1回、3ヶ月に1回となり、1年くらいでやっと首の線が消えた。

 本当、あいつらタチが悪い。

 


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