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もりとき怪談 第二集【一話完結/短編怪談】  作者: もりとき


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金魚を飼っていた

 小学生の頃、縁日で金魚すくいをやって1匹だけすくえた金魚を、駄々こねて飼わせてもらったことがあったんだ。

 小さな金魚鉢とブクブク酸素が出る機械も買ってもらってさ、自分の部屋で大事に育ててたんだよね。

 でもある日、金魚はぷかりと浮かんでた。死んじゃったんだよね。

 小学生だったけど、金魚が死んじゃったってのは分かって、金魚が死んじゃった悲しみと、すごい駄々こねて飼わせてもらったのにお母さんに怒られると思って、私はひとりでこっそり、庭に穴を掘って金魚を埋めたの。

 本当は何か、アイスの棒みたいなのがあればよかったんだけどさ、何もなかったから埋めた場所の目印になるように石を置いて、手を合わせた。

 すぐにバレるだろうに、子どもだったからさ、金魚鉢には水を入れたままで、ブクブクもそのままにしてたんだよ。


 なんでか知らないけど、その日は親に金魚が死んだことはバレなかったなぁ。

 まぁ、金魚の世話は私がしてたし、親も教育の一環くらいに思ってただろうから、そこまで金魚に注意を払ってなかったのかもね。金魚鉢があったのも私の部屋だったから、もしかしたらその日は私の部屋に入らなかったのかもしれない。

 とりあえず、私はその日は親にバレなくて、金魚が死んじゃったことを親に怒られることもなく過ごしたのよ。

 それでも、可愛がってた金魚は死んじゃったから悲しくて、ブクブクの音を聞きながら、ベッドの中でしくしく泣いてた。

 泣きながらいつの間にか寝ちゃって、次の日の朝が来た。

 私はいつもの習慣で、金魚鉢を見たのね。

 そしたら、いるの。

 金魚が泳いでるのよ。


 本当にびっくりしてさ。

 だって、金魚、埋めたんだよ。間違いなく庭に埋めたの。私、呆然としてしばらく金魚を眺めてたんだわ。

 でもさ、何か金魚の泳ぎ方がぎこちないのよ。

 試しに餌を落としてみたんだけど、見向きもしない。見向きもしないで、ぴくぴく、ぎこちなくヒレを動かして泳いでる。

 ちょっと気持ち悪くて、私はお母さんを部屋に呼んで「金魚、昨日死んじゃったのに、泳いでるの」って伝えたの。

 そうしたらお母さんは笑って「何言ってるの、死んでないでしょ」って言うのよ。「だって、ごはん食べないよ」って言って、餌を水に落とした。水を含んで沈んでいく餌を見ながら「まだお腹すいてないんじゃない?」ってお母さんは言って、キッチンに戻って行った。


 私は釈然としなくてさ。

 金魚はね、本当に金魚すくいで見るような赤っぽいオレンジの普通の金魚だったんだよ。でも金魚鉢で泳いでいる金魚は、ちょっと黒みがかってるように見えた。それに目も白っぽく濁ってるように見えたよ。

 私、庭に行ってみたんだけど、金魚のお墓の目印代わりに置いてた石がどこにも見当たらない。まぁ、金魚のお墓が分かったところで、そこを掘り返そうなんて勇気はなかったと思うけど。

 学校から帰ってきたあとも、私は金魚を眺めてたんだけど、やっぱり何か変。ヒレの動かし方も、口をパクパクさせるのも、すごくぎこちない。

 私がじっと眺めてると、金魚も濁った目で私のことを見つめ返しているような、そんな気分になった。

 私は怖くなって、金魚鉢に給食当番の三角巾の布をかぶせて見えないようにして、ブクブクの電源も切っちゃった。

 その日の夜は、ぱちゃん、ぱちゃんって水面を跳ねるような、小さな水音がずっとしてて、なかなか寝付けなかったなぁ。


 で、そうして一週間くらい経って、次の日が私の給食当番の日だったから、金魚鉢にかぶせてた三角巾を取ったんだよね。

 三角巾を取ってみると、金魚鉢からは金魚も水も消えてた。

 金魚だけならまだしも、水までなくなっちゃったんだよ? 一週間で金魚鉢いっぱいの水がなくなるなんてありえないじゃない?

 それで、水がなくなった金魚鉢の底には、干からびた土がちょっとだけ残ってた。

 その水槽、水と金魚しか入ってなかったんだよ。その土、どこから来たの?


 結局、私はそれ以降、金魚すくいをやりたいなんて思わなくなったし、たぶん金魚鉢と酸素のブクブクは友達か親戚にあげちゃったんじゃないかなぁ。

 もう覚えてないや。



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