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もりとき怪談 第二集【一話完結/短編怪談】  作者: もりとき


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3/11

抜け日の夢


 昔見た妙に記憶に残ってる夢と、その後に起こったことの話をする。

 俺の勘違いだったらいいんだけど、どうにも俺が見た夢と、現実がつながっているようにしか思えない話なんだ。


 夢の中で、俺は目を覚ました。

 スマホを見ると、時計は7時前。日付は2月30日だった。それまでぼんやりしてた頭が急にはっきりして「2月30日?」ってなった。2月29日だって4年に1回しか来ないのに、2月30日なんてありえない。スマホが壊れたって思ったよ。

 俺は部屋を出て、リビングに行った。

 リビングではいつも通りに母さんが朝飯の準備をしていて「あら、今日は起こさなくても起きてきたのね」なんて呑気に言ってる。

 母さんに「今日って何日だったっけ?」って聞くと、こともなげに「2月30日でしょ」って返してきた。

 テレビのニュースでも「2月30日、6時54分の天気予報です」なんて言ってる。

 俺が「2月30日なんて、毎年あったっけ?」って言ったら、母さんは呆れて「早く起きてきたと思ったら寝ぼけてんの。顔を洗って、目を覚ましなさい」って言ってきた。

 俺は釈然としない気分で、とりあえず朝飯を食って学校に行った。


 学校もいつも通りで、2月30日として時間は進んでいった。

 別に特別な1日なんてこともなくて、日常の延長。授業も全部、前回からの続きだった。俺だけがソワソワしてる感じだったよ。

 そんな感じで何事もなく授業は終わって、みんな部活に行ったり、家に帰ったりし始めた。

 俺は何か気持ち悪くてさ、友達にも聞いてみたんだよ。

「2月ってさ、28日までじゃなかったっけ?」って。

 そうしたら、クラスのみんながビタッと動きを止めたんだ。

 友達が「抜け日って知ってる?」って言うんだ。

 その顔に表情なんて一切なくてさ、感情がない目で、まっすぐに俺を見つめてくる。声もいつもと違う感じで、なんかスゲー気持ち悪い。


「抜け日?」

「存在しない日のこと」

「そ、存在しない日?」

 俺の声はみっともなくひっくり返った。

 さっきまでざわついてた教室が静まり返ってて、喉がカラカラになって気道がくっついたみたいになった。

「そう、存在しない日。その存在しない日に気付いたら、どうなると思う?」

 俺の背中を、嫌な汗が伝った。

「どうなるんだよ」

「こうなるんだよ」


 友達の声を合図に、クラスのみんなが俺の方にざっと迫ってきた。さっきまで見慣れたクラスメイトだったはずなのに、その顔はみんなのっぺらぼうになってた。

 俺と話してた友人も、いつの間にかのっぺらぼうになって、みんなが俺の顔に手を伸ばして俺の顔から鼻を、目を、唇をもぎ取ろうとした。

 無数の手に襲われながら、「あぁ、俺も顔をのっぺらぼうにされて、存在しない人間にされるんだ」なんてことを考えた。


 その瞬間、パチっと目が覚めた。そこは俺の部屋で、俺は慌てて枕元に置いてたスマホを手に取った。日付は3月1日だった。

 慌ててリビングに行って、朝飯の準備をしてた母さんに「昨日って2月28日だったよな?」って聞いたら、「当たり前でしょ、寝ぼけてんの?」って言われた。あんなに安心したことはなかったよ。

 で、俺はいつも通り学校に行ったんだよ。教室に入ったときに、妙な違和感があった。いつもより、机の数がひとつ少なかったんだ。昨日まで、一番うしろの席には6つ机が並んでたはずなのに、5つしかない。

 でも何事もなく、授業は進んでいった。その日は欠席した奴もいなくて、全部の机に生徒が座ってた。クラスメイトの顔と名前を全部把握しているわけじゃなかったけど、机が1つなくなってたとして、それが誰の席なのか、俺は思い出せなかった。

 放課後、友達に「一番後ろの机って、6つなかったっけ?」って聞いてみたら、友人は不思議そうな顔で「元から5つだろ」って言った。


 俺はそのときなんとなく、思い出せないその誰かは、抜け日の存在に気が付いてしまって存在しない人間にされちゃったんじゃないかって思ったんだ。

 そしてもし、あの夢が夢じゃなかったら、存在が消えてたのは俺だったんじゃないかって思った。

 なんてね。夢はただの夢でしかない。

 でも俺には妙にリアリティがあったし、夢の延長線上に現実があるような気がして、背筋が寒くなったよ。



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