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もりとき怪談 第二集【一話完結/短編怪談】  作者: もりとき


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赤い糸

 これは俺が高校生の頃の話。

 夏休みに自分の部屋でマンガを読んでたんだ。ベッドの上に寝転がって読んでたんだけど、ふと、カーペットの上に赤い糸が落ちてるのに気が付いたんだよ。

 それが5センチとか10センチなら、服か何かの糸がほつれて切れたのかなって思ってたと思う。でもその糸はずる〜っと長くてクローゼットの中に続いてたんだ。


 俺はこの糸がどこから出てるのか気になってさ。

 ベッドから降りて、糸をたぐりながらクローゼットの扉を開けたんだ。そしたら、クローゼットの中にしまってた衣装ケースから糸が出てるんだよ。

 冬物の服が入った衣装ケース。衣装ケースの中身を入れ替えたのは4月だよ。もう何ヶ月も経ってるんだ。それなのに衣装ケースから赤い糸が出ていることに、そのとき気が付いたんだ。変な話だろ?

 俺自身も、糸が出てることにずっと気が付かなかったのか? って疑問に思いながら衣装ケースの蓋を開けた。

 とりあえず、この糸がどの服から出ているのかを見つけようとしたんだ。


 糸を頼りに衣装ケースの中に手をつっこんだ。

 そしたら、ずぶって腕が入ったんだ。服の入った衣装ケースだぞ? いきなりそんなに腕が入るわけがない。しかもそんなに大きな衣装ケースでもないのに、二の腕の半ば辺りまで一気に腕が沈み込んだんだ。

 その瞬間はめっちゃ困惑したよ。腕はまっすぐ垂直に差し込んでたから、二の腕の半ばまで腕が入っているなら衣装ケースの底に手が届くはずなんだ。それなのに底の手応えはない。

 むしろ俺の腕は、衣装ケースの底も突き抜けて、クローゼットの床さえも突き抜けているんじゃないかって思えたんだ。


 困惑している俺の手に、何かやわらかいものが触れた。

 俺、さらにパニック。

 そのやわらかいものは、すかさず俺の手をぎゅっと握ってきた。

 俺は情けなく悲鳴をあげて、手を引き抜こうとしたんだよ。力任せに衣装ケースから腕を引き抜くと、俺の手を掴んでいた何かの手が、ずるりと出てきた。

 青白い細身の腕だった。その腕には赤い糸が絡みついてた。


 そして、衣装ケースの服の間から、女の顔がのぞいてた。

 俺と目が合うと、女は妙に赤い唇を笑みの形に歪ませた。

 でもぜんぜん目が笑ってないの。

 俺、2回目の悲鳴。


 女の手を振りほどいて、横に置いてた衣装ケースの蓋を思いっきり閉めた。で、横のロックをバツンバツンって勢いよく閉めたよ。

 蹴るようにして衣装ケースをクローゼットの奥に押し込んで、クローゼットの扉も閉めた。

 その後、クローゼットから物音が……なんてことはなかったんだけど、もう部屋にいたくなくて、親が帰ってくるまでリビングで過ごした。


 それで、姉ちゃんが帰ってきたから、起きたことを話して一緒に衣装ケースを見てほしいって頼み込んだんだ。姉ちゃんにはすっごい呆れられた。

 姉ちゃんと一緒に部屋に行くと、赤い糸はなくなってた。姉ちゃんが雑にクローゼットを開けて、衣装ケースの中の服を全部出したけど、変なことはなかった。そもそも、衣装ケースの中には赤い服もなくて、なんで赤い糸が出てたのか本当に謎だった。

 それ以降はもう、同じような体験はしてないよ。今は就職して実家を出てひとり暮らしをしてるし、あの衣装ケースも実家に置いてきた。


 今でもときどき、あの女の笑ってない目を思い出して背筋がゾッとすることがあるよ。

 あの赤い糸、なんとなくだけど、俺とあの女を繋ごうとしてたんじゃないかなって思う。もしかしたら、俺はすでにあの女と赤い糸で結ばれたのかもしれない。

 それを証拠に、俺には1回も彼女ができたことがないんだ。

 え? 俺が女にモテないだけじゃないかって?

 そういう怖い話はやめろ。



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