表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
もりとき怪談 第二集【一話完結/短編怪談】  作者: もりとき


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/33

月の鳴る音

 俺にはちょっと不思議な記憶があるんだ。

 5歳くらいの頃、俺は田舎の親戚の家に両親と一緒に遊びに行ってたんだ。

 自然の多い、いかにも田舎って感じの縁側がある家だった。夏の頃だったんだけど、自然が多いところだからか、あんまり暑いとは感じなかったな。

 親戚のおばちゃんが縁側にビーチチェアっていうのかな、リクライニングできる椅子を出して昼寝してたのを覚えてる。家から5分かからないところに川があって、そこで畑で取れたスイカを冷やしてみんなで食べた。


 で、夜になってみんなで寝てたんだけど、俺は眠れなくて布団から出たんだ。

 虫の声を聞きながら、縁側に座って満月を見てた。雲ひとつない夜空で、満月の光がぼんやりと夜空を照らして、星が、本当に夜空いっぱいに散りばめたように見えたんだ。

 こんな夜遅くまで起きてることなんてなかったし、あんなすごい夜空を見たこともなくて、ずっと星を眺めてた。

 そしたら、庭の方からおばあちゃんが来たんだ。


「あらタカちゃん、まだ起きてたん」


 おばあちゃんはのんびりした声でそう言った。タカちゃんは俺のことな。

 おばあちゃんって言っても、この家に住んでるおばあちゃんで、俺の祖母じゃない。でもすごくやさしくて、本当のおばあちゃんみたいだった。鼻の横にちょっと大きなイボがあって、髪はパーマを当てすぎたのかちょっとだけパンチパーマみたいになってた。

 俺はおばあちゃんに「空を見てたの」って答えた。おばあちゃんが空を見て「今日は満月だねぇ、どれ、ちょっとお散歩しよか」って言った。俺は縁側に置いてあったちょっと大きいサンダルを履いて、おばあちゃんと手をつないで夜の散歩に出かけたんだ。

 別におばあちゃんと会話が弾むなんてこともなく、俺はただただ空を見て歩いて、おばあちゃんはそんな俺の手を引いてゆっくり歩いてるだけだった。

 おばあちゃんの手はひんやりしてやわらかくて、けっこうツルツルしてた。


 そうやって歩いていたら、急に空から機械が軋むような、動きの悪い歯車が噛み合うような、ギッ、ギッて音が聞こえてきた。

「おばあちゃん、これ、何の音?」

「月が鳴りおる」

「月って、鳴るの?」

「鳴る。鳴るんは、月から誰かがやって来る合図よ」

 おばあちゃんの返答に、俺は少し怖くなった。だからおばあちゃんの手をぎゅっと握って「もう帰ろう」って言ったんだ。

 そしたらおばあちゃんは笑いながら「タカちゃん、怖くなったか。じゃあ今日はばあちゃんと一緒に寝よ」って言って、来た道をふたりでぽっくりぽっくり帰ったんだ。

 その間も、月からはギッ、ギッて音が鳴ってた。

 俺はその日の夜はおばあちゃんと一緒に寝た。まだ遠くから月の鳴る音が聞こえて、俺はおばあちゃんの寝間着をぎゅっと握って布団をかぶった。


 覚えてるのはここまでなんだけど、この話が不思議なのは、こんな親戚の家は存在しないってことなんだよ。

 あの、縁側で昼寝している景色が懐かしくて、母さんに「俺が5歳くらいのときに遊びに行った親戚の家って、どこだったの?」って聞いたらそんな親戚はいないって返されたんだ。家に泊まるくらい交流のある親戚で、田舎に住んでるって人がいないんだよ。

 しかも俺が5歳の頃って弟が生まれた頃で、弟は生まれたときにちょっと病気があったから親戚の家に泊まりで遊びに行くなんてできるわけがないんだ。しかも俺の記憶の中で親戚の家に行ったのは俺と両親だけ。その頃、母さんは弟につきっきりだったから三人だけで旅行するなんて絶対にないんだ。


 この妙にリアルに覚えている記憶は、一体何なんだろうな。

 それから、「月が鳴ると月から誰かがやって来る合図」っていう話も何なんだろう。

 今でもときどき、月が鳴るのを聞くことがあるけど、誰がやって来るんだろうな。

 え?

 月が鳴ってるのなんて聞いたことない? マジで??



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ