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第二十九話 冬の歓迎会

 雪遊びを終えたミリアたちは、いったん城内へ戻ることになった。


 外套についた雪を払い、暖かな室内へ入る。


「はぁ……暖かい……」


 ミリアは思わず両手を広げた。


『あったかーい!』


 ライトも嬉しそうにミリアの周りを飛び回る。


「さっきまであんなに雪で遊んでたのに、もう暖かいって言ってるの?」


『だって寒かったもん!』


「雪が好きなのに?」


『雪は好き! 寒いのは嫌い!』


「矛盾してない?」


『してないよ!』


「ふふっ」


 ミリアは笑いながら、侍女に案内されて用意された部屋へ向かった。


 歓迎会までは、まだ少し時間があるらしい。


 部屋には暖炉があり、窓の外には白銀の庭園が広がっている。


「すごい……」


 ミリアは窓辺へ歩み寄った。


 先ほどまで自分たちが遊んでいた庭が、夕暮れの光に照らされている。


 雪は淡い橙色に染まり、まるで別の景色のようだった。


『綺麗だね』


「うん」


 ライトの声に、ミリアも頷く。


 すると――。


 コンコン。


 扉を叩く音が響いた。


「ミリア」


 聞き慣れた声。


「ロナルド様?」


「ああ。入ってもいいか?」


「どうぞ」


 扉が開く。


 そこには、先ほどより少しだけ身なりを整えたロナルドが立っていた。


「もうすぐ歓迎会が始まる」


「はい」


「その前に、少しだけ説明しておこうと思って」


「説明?」


「ああ」


 ロナルドは部屋へ入り、窓の外へ視線を向けた。


「今日の歓迎会は、本当に小さなものだ」


「そうなんですか?」


「冬のダーガトークは雪が深いからな。遠方の貴族まで呼ぶことは少ない」


「今回は王都周辺の貴族と、王家に近しい者たちだけだ」


「なるほど……」


 ミリアは頷く。


「それなら、あまり緊張しなくても大丈夫そうですね」


「そうだな」


 ロナルドは少し考える。


「ただ……」


「?」


「母上や兄上もいる」


「はい」


「兄上が……」


 そこでロナルドは言葉を止めた。


「?」


「……いや」


「何でもない」


「?」


 ミリアは首を傾げた。


 その時――。


「何が何でもないのかな?」


「……!」


 突然、扉の向こうから声がした。


 ロナルドが眉を寄せる。


「兄上」


 扉が開く。


 そこには、先ほどの第一王子が立っていた。


「やあ」


「盗み聞きですか?」


「失礼だなぁ」


 兄は笑いながら部屋へ入ってくる。


「弟が可愛いお客様を迎えてるから、様子を見に来ただけだよ」


「余計なお世話です」


「そう?」


 兄はミリアを見る。


「ミリア嬢、今日の雪遊びは楽しかった?」


「はい!」


「それはよかった」


 兄はニコニコと笑う。


「ロナルドも楽しそうだったしね」


「……」


「朝からずっと、雪が積もってるか確認してたんだよ」


「兄上!」


「何?」


「その話はしなくていいでしょう」


「そうかな?」


「はい」


 ロナルドが即答する。


 ミリアは思わず笑ってしまう。


「ふふっ」


「ミリア……」


「ごめんなさい」


 ロナルドは少し困ったように視線を逸らした。


 兄はそんな二人を交互に見て――。


「なるほど」


「何ですか?」


「いや」


 兄は楽しそうに目を細めた。


「学院の友人ですから」


「へぇ」


「……何ですか、その顔は」


「別に?」


「……」


 ロナルドは露骨に警戒していた。


 ミリアには、その理由がよく分からない。


「ロナルド様のお兄様って、面白い方ですね」


「……そうか」


 ロナルドは小さく息を吐いた。


「……なら、それでいい」


 兄はその言葉を聞いて、さらに口元を緩める。


「ロナルド」


「何ですか」


「大事なお客様なんだから、ちゃんとエスコートするんだよ?」


「分かっています」


「そう?」


「はい」


「じゃあ、僕は先に行ってるから」


 兄は手を振りながら部屋を出ていく。


 扉が閉まる。


 静かになる。


「……」


「……」


 ミリアとロナルドは顔を見合わせた。


「……面白いお兄様ですね」


「……否定はできないな」


「ふふっ」


 ミリアは笑った。


 ロナルドも、ほんの少しだけ口元を緩める。


「行こう」


「はい」


 二人は並んで部屋を出た。


     ◇◇◇


 歓迎会が開かれる広間へ向かう廊下には、すでに多くの侍女や使用人たちが行き交っていた。


 壁にはダーガトーク王家の紋章。


 窓の外には白い雪景色。


 暖炉からは暖かな火の光が漏れている。


「タルトミアとは、やっぱり雰囲気が違いますね」


「そうか?」


「はい。タルトミアの王城は、もっと明るい感じがします」


「ダーガトークは冬が長いからな」


「暖炉や照明を使う時間も長い」


「なるほど……」


 ミリアは頷いた。


「国によって、暮らし方も違うんですね」


「ああ」


 ロナルドは少しだけ嬉しそうに答える。


「だから、一度見せたかった」


「え?」


「俺の国を」


 ミリアは思わずロナルドを見上げた。


 ロナルドは少し照れたように視線を逸らした。


「学院では、話せることにも限りがあるからな」


「……」


 ミリアは微笑んだ。


「嬉しいです」


「そうか」


「ロナルド様が育った場所を見られるの」


「ああ」


 その時――。


 広間の扉が開いた。


「第二王子殿下、ミリア・テルファメート侯爵令嬢がお見えになりました」


 室内にいた人々の視線が一斉に集まる。


 ミリアは一瞬だけ緊張した。


 けれど、ロナルドが隣にいる。


 それだけで、少しだけ安心できた。


 ロナルドが小さく頷く。


「大丈夫だ」


「はい」


 二人は並んで広間へ入った。


 そこには、十数名ほどの貴族たちが集まっていた。


 華やかなドレス。


 格式ある正装。


 けれど、大規模な夜会ほどの堅苦しさはない。


 冬の小さな歓迎会。


 そんな温かな雰囲気が漂っていた。


 広間の奥には、ダーガトーク王妃が座っている。


 その隣には第一王子。


 そして――。


「ミリア嬢」


 王妃が優しく微笑んだ。


「遠いところから、よく来てくれましたね」


「お招きいただき、ありがとうございます」


 ミリアは丁寧に礼をする。


「こちらこそ」


 王妃は柔らかく笑う。


「ロナルドが、あなたを招きたいと強く希望していたそうですね」


「母上」


 ロナルドが少し慌てた声を上げる。


「ふふっ」


 王妃は楽しそうに笑った。


「それほど学院で楽しく過ごしているのだと思うと、母としても嬉しいのですよ」


「……はい」


 ロナルドは少し照れたように頷く。


 ミリアも自然と笑った。


「私も、ロナルド様たちと過ごす学院生活は、とても楽しいです」


「そうですか」


 王妃は嬉しそうに微笑む。


「それなら、今回の招待は成功ですね」


 その言葉に、ミリアも笑顔で頷いた。


     ◇◇◇


 歓迎会は、穏やかな雰囲気で始まった。


 料理が並び、温かな飲み物が用意される。


 ダーガトークの冬らしい料理も多く、ミリアは興味深そうに眺めていた。


「これは何ですか?」


 目の前の料理を指差す。


「冬野菜を使った煮込み料理だ」


 ロナルドが教える。


「美味しそう……」


「食べてみるか?」


「はい」


 一口食べる。


「……美味しい!」


「そうか」


 ロナルドが嬉しそうに笑う。


 その様子を少し離れた席から兄が眺めていた。


「……」


 王妃がその視線に気づく。


「あなた」


「はい?」


「あまり弟をからかってはいけませんよ」


「からかってないよ」


「その顔で?」


「どんな顔?」


「楽しそうな顔です」


「だって面白いんだもの」


 兄は笑いながら、ロナルドたちを見る。


「ロナルドがあんなに楽しそうなの、久しぶりだから」


 王妃も二人を優しく見つめた。


「……そうですね」


 王妃は静かに微笑んだ。


「学院で、素敵なお友達ができたのですね」


「はい」


 兄は少しだけ真面目な表情になる。


「だからこそ――」


 その声は小さかった。


「大切にしてほしいね」


「ええ」


 王妃も静かに頷いた。


     ◇◇◇


 一方、ミリアたちの席では。


「ミリア」


「はい?」


「明日はどうする?」


「明日?」


「ああ」


 ロナルドは一瞬言葉を選ぶように視線を伏せた。


「城下町を案内しようと思っている」


「本当ですか?」


「雪が深いから、外出できる場所には限りがあるが」


「それでも見せたいところがある」


「行きたいです!」


 ミリアは嬉しそうに答えた。


「じゃあ決まりだな」


「はい!」


 すると――。


「ロナルド」


 背後から声がする。


「はい?」


 兄だった。


「明日の予定、僕も同行しようか?」


「必要ありません」


 即答。


「えー」


「ミリア嬢にダーガトークを見せたいんでしょう?」


「はい」


「なら、僕が案内したほうが――」


「必要ありません」


「二回言った」


「二回言う必要がありましたから」


「冷たいなぁ」


 兄は笑う。


 ミリアは思わず吹き出した。


「ふふっ」


「ミリア嬢もそう思うでしょ?」


「え?」


「ロナルドだけじゃ、案内がつまらないと思わない?」


「そんなことないですよ」


 ミリアは即答した。


「ロナルド様と一緒なら、どこへ行っても楽しそうです」


 その言葉に、ロナルドは目を瞬かせた。


 しばらく言葉が出ない。


 兄も同じように目を丸くし――やがて、くすりと笑った。


「……なるほど」


「兄上」


「何も言ってないよ?」


「顔が言っています」


「そう?」


 兄は楽しそうに笑う。


「じゃあ、明日は二人で楽しんでおいで」


「兄上……」


 そう言って、兄は自分の席へ戻っていった。


 ロナルドは小さく息を吐く。


「……すまない」


「?」


「兄が、いろいろと」


「私は楽しいですけど」


 ミリアは笑った。


「なんだか、本当の家族を見ているみたいで」


 ロナルドは少し驚いたように目を見開く。


 そして――。


「……そうかもしれないな」


 小さく笑った。


 その表情は、学院で見せるものよりも少しだけ柔らかかった。


 歓迎会は、その後も和やかな空気のまま続いていった。


 大きな宴ではない。


 けれど、王都周辺の貴族たちが集まり、料理を囲みながら談笑する空間は、どこか温かかった。


 窓の外では雪が静かに降り続いている。


 白い雪が夜の闇へ溶けていく。


「ミリア嬢」


 声を掛けられ、ミリアは顔を上げた。


 向かいの席に座っていた女性が、柔らかく微笑んでいる。


「タルトミア王立学院では、ロナルド殿下と同じクラスなのですって?」


「はい」


「それは大変だったでしょう?」


「え?」


 ミリアが首を傾げる。


 女性はちらりとロナルドを見る。


「殿下は昔から、少し真面目ですから」


「……母上にもよく言われます」


 ロナルドが苦笑する。


「そうなのですか?」


 ミリアは少し意外そうな顔をした。


「学院では、そんなふうには感じませんでした」


「真面目……ではありますけど」


 ミリアは少し考えた。


「でも、ちゃんと冗談も言いますよ?」


「……!」


 ロナルドが目を見開く。


「本当に?」


 女性が驚いたように尋ねる。


「はい」


「それは珍しいわね」


「そうなんですか?」


「ええ」


 女性が微笑む。


「殿下は幼い頃から、何事にも真剣に取り組む方でしたから」


「そうなんですね」


 ミリアはロナルドを見る。


「でも、学院では以前よりずっと柔らかくなりましたよ」


「……そうか?」


「はい」


「どんなふうに?」


「えっと……」


 ミリアは少し考える。


「前より、よく笑うようになりました」


 ロナルドは照れたように視線を逸らした。


「……ふふ」


 兄が見逃すはずもなかった。


「……随分、楽しそうじゃないか」


「……」


 ロナルドは少しだけ兄を睨む。


「兄上は、さっきから何なんですか」


「僕は弟の成長を喜んでいるだけだよ」


「絶対違うでしょう」


「失礼だなぁ」


 兄は笑った。


 そのやり取りに、ミリアも思わず笑う。


「皆さん、とても温かいご家族なんですね」


「そう見える?」


「はい」


「ならよかった」


 兄は楽しそうに頷いた。


「ロナルドは昔から、少し人付き合いが苦手だったからね」


「兄上」


「でも、学院へ行ってから、ずいぶん表情が柔らかくなった」


 兄はミリアへ視線を向ける。


「僕としても嬉しいんだよ」


「ありがとうございます」


 ミリアは素直に頭を下げた。


「こちらこそ、ロナルド様にはいつも助けてもらっています」


「それを聞けて安心したよ」


 兄は穏やかに微笑んだ。


「これからも弟をよろしく頼む」


「はい」


 ロナルドは照れくさそうに視線を逸らした。


 兄は一瞬だけ目を丸くした。


 そして――。


「ロナルド」


「何ですか」


「君、よかったね」


「……もう、その話はやめてください」


 ロナルドは顔を逸らした。


 兄は肩を震わせて笑っている。


 その様子に、ミリアはますます不思議そうに首を傾げた。


「?」


 ロナルドはそんなミリアを見て、小さく息を吐く。


「……本当に、兄上のことは気にしなくていい」


「はい」


「何を言われても」


「分かりました」


「……本当に?」


「はい」


 ミリアは笑った。


「楽しいですから」


「……そうか」


 ロナルドの表情が少し緩んだ。


     ◇◇◇


 やがて、歓迎会も終わりに近づいていた。


 貴族たちが少しずつ席を立ち、王妃へ挨拶をして帰り支度を始める。


 ミリアも席を立った。


「本日は本当にありがとうございました」


「こちらこそ、来てくれてありがとう」


 王妃が優しく微笑む。


「冬のダーガトークは長いですからね」


「滞在中は、どうかゆっくり過ごしてください」


「はい」


「ロナルド」


「はい」


「ミリア嬢に、この国をたくさん見せてあげなさい」


「……分かっています」


 ロナルドは頷いた。


 その隣で、兄がニヤリと笑う。


「明日は城下町へ行くんだって?」


「はい」


「気をつけてね」


「分かっています」


「ダーガトークを好きになってもらえるといいね」


ロナルドは呆れたように兄を見る。


「……もう、その話はやめてください」


「何?」


「それ以上は結構です」


「はいはい」


 兄は笑いながら手を上げた。


「じゃあ、楽しんでおいで」


「……」


 ロナルドは何とも言えない顔をしている。


 ミリアはその横で小さく笑った。


「お兄様、本当に面白いですね」


「……そうか?」


「はい」


「……なら、いい」


 ロナルドは諦めたように呟いた。


     ◇◇◇


 歓迎会を終え、ミリアは客室へ戻るため、ロナルドと並んで廊下を歩いていた。


 静かな廊下。


 窓の外では、まだ雪が降り続いている。


「今日は、ありがとうございました」


「俺は何もしていない」


「でも、招待してくれたのはロナルド様ですよね」


「……そうだな」


「だから、ありがとうございます」


「……ああ」


 ロナルドは少しだけ笑った。


「楽しんでもらえたか?」


「はい」


「ならよかった」


 少し歩いたところで、ロナルドが立ち止まる。


「明日は、城下町へ行こう」


「はい!」


「雪が深いから、遠くまでは行けないけど」


「それでも楽しみです」


「そうか」


「どんなところなんですか?」


「いろいろある」


「例えば?」


「冬でも営業している店もあるし、雪を使った祭りをやっている場所もある」


「雪のお祭り!?」


 ミリアの目が輝いた。


「ああ」


「見たいです!」


「分かった」


 ロナルドも笑う。


「案内する」


「お願いします!」


 ミリアは嬉しそうに頷いた。


 すると――。


「……それと」


「はい?」


 ロナルドが少しだけ言いにくそうに口を開く。


「明日は……」


「?」


「その……二人で――」


「ロナルド」


 背後から声がした。


「……またですか」


 ロナルドが振り返る。


 少し離れた場所に、第一王子が立っていた。


「何ですか」


「母上が呼んでるよ」


「分かりました」


「それと」


「まだ何か?」


 兄はミリアを見る。


「明日、楽しんでおいで」


「はい!」


「ロナルド」


「……何ですか」


「ミリア嬢をちゃんと案内するんだよ?」


「……分かっています」


 兄は満足そうに笑う。


「じゃあ、おやすみ」


「おやすみなさい」


 兄が去っていく。


 ロナルドはしばらくその背中を見送った。


「……」


「ロナルド様?」


「明日、迎えに行く」


「はい!」


「朝は冷えるから、暖かくしておいてくれ」


「分かりました」


「それじゃあ」


「おやすみなさい」


「ああ。おやすみ」


 ロナルドが去っていく。


 ミリアはその背中を見つめながら、小さく笑った。


「明日……楽しみだな」


『ミリア!』


「ん?」


『明日も雪遊びできる!?』


「もちろん」


『やったー!』


「でも、まずは城下町を見るんだからね」


『雪遊びもする?』


「できたらね」


『約束!』


「はいはい」


 ミリアは笑いながら、自分の部屋へ戻っていった。


 一方――。


 王城の廊下を歩いていたロナルドは、兄と並んでいた。


「……兄上」


「何?」


「今日のことですが」


「うん?」


「ミリアに余計なことを言わないでください」


「何も言ってないよ?」


「言っています」


「そうかな?」


 兄は楽しそうに笑う。


「でも、ロナルド」


「君、本当に変わったね」


「何ですか」


「昔のお前なら、自分から誰かを招こうなんて考えもしなかっただろう?」


「……」


「しかも、わざわざ遠いタルトミアから」


「……友人だからです」


「うん」


 兄は頷く。


「分かってるよ」


 少しだけ優しい声だった。


「だから、からかってるんじゃない」


「……本当ですか?」


「半分くらいはね」


「やっぱり……」


 ロナルドは呆れたように息を吐いた。


 兄は楽しそうに笑う。


「まあ、いいじゃないか」


「何がですか」


「君にとって、大切な存在ができたこと」


「……」


 ロナルドはしばらく黙っていた。


 やがて、小さく頷く。


「……はい」


 その横顔には、嬉しさが滲んでいた。


     ◇◇◇


 その夜。


 ミリアは暖かなベッドの中で、今日一日のことを思い返していた。


 王城。


 歓迎会。


 ロナルドの家族。


 そして――。


「明日は城下町……」


『雪遊び!』


「ふふっ」


『楽しみだね!』


「うん」


 ミリアは目を閉じる。


 冬のダーガトークへ来て、まだ一日。


 それなのに、すでにたくさんの思い出ができている。


 雪に包まれた城下町。


 ロナルドが見せたいと言ってくれた場所。


 そして――。


 この国でしかできない、新しい思い出。


「明日も楽しみだな……」


『おやすみ、ミリア』


「おやすみ、ライト」


 暖炉の火が、静かに揺れている。


 窓の外では、雪が降り続いていた。


 白銀の夜は、静かに更けていった。

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