友達と幼馴染
「おはよう」
「おーっす」
朝、自分の席に荷物を置いて、教室に入り自分の席に座る雅紀のところへ行く。香奈はまだきておらず、通学中に会うこともなかった。
まあ、そういう日もあるよな。
「今日は早いね。どうかした?」
「いや特には。運が良かったな」
「運で決まるもんかな」
たまに……、いや、結構、雅紀は訳のわからないことを言う。
まあ、そう言うところもいいところだ。
昨日は、香奈を家まで送って行き、香奈のお母さんに挨拶をして帰った。……あ、そうだ。昨日といえば。
「ところでさ、ゲーム買おうと思うんだけど、なんかおすすめある?」
「おお!それを俺に聞くとは良いセンスだ」
基本はラノベ好きだけど、オタクっぽいものならなんでもござれな雅紀は、心底嬉しそうに言う。
「いや良いセンスを発揮して欲しいのはこっちなんだけどね」
「いや、もうバッチリご要望にお応えするから」
「すっごい自信」
「まかせろ。いやー、康太オタク化計画は順調だなあ」
「まあ、割と結果出てるけど」
今回のゲームの話は正直その計画は全く関係ない。ということで、昨日の経緯を話した。
香奈がうちに来て、一緒にゲームをしたことや、あまりにも経験の差がなさすぎて勝負にならなかったこと。そして2人ともやったことの無いゲームを買おうと言う話になったことを話した。
割と楽しい話をしていたはずなのに、話していくうちにだんだんと雅紀の表情は曇っていった。
「……」
「え、どうしたの?」
「あ、いや……分かってはいたけどなあ。仲良くしてんなと思って」
「あぁ、そうだね」
そういえば、雅紀は香奈に対するイメージが悪かった。……いや、悪くしたの俺だわ。
いや、俺か……?俺関連ではあるけど、俺原因では無いよな……。でも実際、今は仲良くしてるわけだし、あまり悪いイメージを引きずられるのもなあ……。
そんなことを考えたところで、雅紀は苦々しい表情で口を開いた。
「……俺、あの時霧嶋に結構強く言っちゃったんだよなあ……」
雅紀は「恨まれてたりしないか?」とか言っていてる。あぁ、変に弱気?になってる時の雅紀だ。その発言の方が聞かれてたらまずいと思うけどね。これ、陽キャに対して発動すること多いんだよなあ。
「香奈は雅紀のおかげで思い出せたって言ってたし、それは気にしなくて良いと思うけどね」
「いやでもなあ……」
「気になるなら謝れば良いんじゃ無い?まあ、別に何も言わなくても良いと思うけど」
香奈はむしろ感謝してそうだったし。
それに、香奈と雅紀が仲良くして欲しいとかも無いしなあ。
「うーん……。……よし、謝ろう!言い方悪かったって」
「あ、そうなんだ」
「謝ったほうがスッキリするやつだし、何もせずに話しかける方がしんどい」
「あーね」
まあ、それならそれで良いと思う。最終的には自分がやりたいようにやれば。……ん?話す?香奈と?
「じゃあ、康太からの聞き取り……は要らないか。大体知ってるし」
「?どう言うこと?」
「え、得意なゲームとか今までやってきたゲームとか。良い感じで2人で遊べるゲームだろ?そう言うの知らなかったら薦められねえじゃん」
「あ、思ったよりガチだ」
「俺はそういう系の話ならいつでも全力だぜ」
ありがたいけど、そんなに気合い入れなくても良いんだけどなあ……。
………
……
…
昼、雅紀の席の方に行って弁当を食べている。
「で、結局行かないの?」
俺が香奈と話したりしていたのだけど、雅紀はずっと躊躇していた。自分のタイミングで行くからと言っていたから、放っておいたのだけど、そうしたら昼食の時間になってしまった。
「待ってくれって……。……めっちゃ周りに言いふらされたりしないよな……」
「あのー、俺の幼馴染なんだと思ってるんですかね」
「……」
すっと視線が横に逸らされる。
……結構信用して無いな。あ、俺のせいだった。
「大丈夫だよ。俺も最初は色々言ってたし、昔は色々あったけど……、ほら、昔のことは若気の至りってやつ」
「まあなあ……。……はあ、行くか。これも康太オタク化計画のためだ」
「もうその計画、結構結果出てるって」
ちょっと前は抗ってたけど。もう普通にラノベの新刊とか楽しみにしてるし。
ズズっと椅子をひいて、雅紀が立ち上がる。
それに続いて立ったのだけど、雅紀は動かない。
「え、行かないの?」
「いや、先行はしてくれ」
「あー、まあそうだね」
………
……
…
「や、香奈」
「あ、コータ!……と、百山くん……?」
香奈に話しかけると、ぱっとこちらに顔を向けて反応してくれる。その次の瞬間には雅紀に気づいて、少し緊張した面持ちになった。
まあ、香奈も気まずいよな……。
「あー、その、雅紀がちょっと話したいことがあるって」
「あ、うん……」
と、まあ雑なお膳立てになってしまったけど、とりあえず横に捌ける。
「あー、霧嶋……、話すのは追試ぶりか」
「そ、そうだね。その節は……えっと」
「あのときは、強く言いすぎた。ごめん」
香奈がなんていうべきか迷っているところで、雅紀がずばっと決めていたであろう言葉を言う。
「えっ、いやいや!そんな謝られるようなことじゃないよ!むしろ、感謝してるくらいだし」
「いや、勝手に色々決めつけてたから……、ほんと、ごめん」
いやいや、という香奈と謝る雅紀。
席が端の方なことと、2人が小声なことで、目立ったりはしていなさそうで良かった。
そのまま話を続ける2人を、数歩下がったところで見守っていると、肩にちょんちょんと指が当たる。
「急にどうしたの?」
「あ、ごめんね。話してたところに割って入っちゃって」
話しかけてきた五十嵐さんに答える。
「いやそれは良いんだけど……なんで急に?」
そう言いながら五十嵐さんは、手を胸の前にやって香奈と雅紀を指差す。
「あー、昨日香奈とゲームしたんだけど」
「言ってたね」
あ、知られてるんだ。……雅紀じゃ無いけど、そんな話が言いふらされたりしたら、めっちゃいじられそうだ。
「……他の人に言わないでね?」
「言わないよ。体育祭の時だって大変だったんだから」
「あー……、あれは失敗したよ」
……結構いじられたからなあ。次の日からはだいぶマシになったから良かったけど。
それから、簡単に経緯を話し終えたくらいで、雅紀たちのほうも話が終わったみたいだった。




