夢のあと
夢の中でデモニオと話した。心に留めておこう、そう決めたが、まさかあんなに早く体験することになるとは、フラムにいる俺は知らない
目を覚ました俺は周りを見回す。あぁ、そうか。フラムの城で一泊したんだったな
あれ、モカがいない
そう思っていると、部屋の扉が開いてモカが入ってきた。右眼を閉じている
「おはよう、モカ」
「あ、あぁ。おはよう」
何故か元気がない。どうかしたのだろうか
「元気ないけど、どうしたの?」
モカは少し悩んでから、「少し、話がある」 と言った
そして、右眼を開ける
「モカ、その眼」
右眼が紅。左眼は元の碧。オッドアイだ
「昨夜、夢を見た。神を名乗る少女がワタシの眼と彼女の眼を入れ替えたんだ」
何、だって。それって俺を送った女神、だよな。ってそんな事より
「それ大丈夫!?」
モカに駆け寄り、肩を揺する
「うわっ、だ、大丈夫!大丈夫だ!もう痛みもないし」
そ、そうか!良かったぁ……
俺はつい、モカを抱きしめてしまった
「うぇっ!?」
「良かった…何も無いなら、良かったぁ」
モカは俺の背中に手を回して、囁く
「心配してくれてありがとう」
あぁ、ホントに何もなくて良かった。それに
「……透き通る様な碧の眼も似合っているけど、燃えるような紅の眼も綺麗だよ」
言って、俺は恥ずかしくなる。考え無しに喋るもんじゃねぇなこれ!
モカも顔が真っ赤になってる。まぁ可愛いモカ、プライスレスって事でくさいセリフ言ったかいがあったってなもんよ
「朝から……おアツイ」
「うわっ!」
背後から腰に飛びつくハクア。ビックリした
「でも…ホントに綺麗」
「あ、ありがとぅ」
それから、俺が見た夢の事も話した
忘れてしまっている部分もあったけど、大体は伝えられたと思う
「魔神の息子、か」
「うん……引く?」
そこが、少し気になっていた
モカは、優しく微笑むと
「そんなわけないだろう」
と言った。ヤバイ、何か嬉しい
「むぅ……私も…大丈夫」
「はは、ありがとう」
ハクアもそう言ってくれた
「さて、じゃあガイウス王の元へ行こうか」
俺達は寝ているフェンや杏子を起こして、メイドさんの案内の元、玉座の間に向かった
◇◆◇◆◇◆
「して、昨日の件。気が変わったようだな?」
「はっ、やはりフレイ姫様よりご指名との事で、あの後悩んだ末にやはり受けることに致しました。昨日の今日で意見が変わって申し訳ないとは思いますが、フレイ姫様の気がお変わりなければ、その依頼、我々がお受けします」
「ふむ。フレイ、どうする」
「勿論、お願いします。彼等の腕は確かです。ワームの群れとの戦闘を少々拝見しましたが、お父様が連れてきた冒険者とは比べ物になりません」
「え、お、おう。そうか」
フレイ様は若干ガイウス王にダメージを入れつつも、俺たちを雇ってくれるそうだ。守りきる。メイドさんの為にも、今後の交渉のためにも、な
ガイウス王は断りの話は早ければ早いほどいいと言った
すぐに出発するようだ。気が早い
俺は奴隷達の中で一番足が速いフェンに、バルトへ伝言を頼んだ
『俺達は冒険都市に姫様の護衛として向かう。食料等は街近くの森の中に隠している。こちらに帰ってきた時に話をしたい。その近辺で待っていてほしい。了承は煙で赤を、拒否は黒を上げてくれ、頼む』
◇◆◇◆◇◆
「お、赤い煙。日付を言ってなかったけど、了承してくれたか」
「ん?なんの狼煙だ?」
「話があるから待ってて。おっけー。みたいな」
「軽いな」
俺の言葉にモカが笑ってくれる。苦笑いだけど
フレイ様とは馬車が違うので気軽に話せる
俺と一緒なのは、モカとハクアとフェン
姫様の前の馬車だ。姫様の後ろに杏子、リル、マモ、ルナだ。戦力としては前が強い
基本的に戦闘は前が受け持つので仕方ないけど
まぁ、何事もなく2週間程で冒険都市ダンジンに着いてしまった。予定より早い
◇◆◇◆◇◆
移動は何も無かったし、最近本当に何も無いな。平和でよろしい。少しつまんないけど
「では、門番の方に話をしてきますね」
姫様の乗った馬車と杏子が乗った馬車が門へ向かう。俺達はその後ろからだ
「これはフレイ=フラム姫様。遠路はるばるご苦労様です。本日はマハト=ダンジン様にお会いにこられたので?」
「えぇ、少しお話がありまして」
「そうでしたか。では、お取次しますね。後ろの馬車も護衛の方々ですか?」
「えぇ。冒険者の方です」
「了承しました。そのままお通り頂いて大丈夫です」
「ありがとう」
門を抜けると、俺達はすぐ、城にむかうこととなった
街を見ると、やはり冒険者が多い。次は売り子か。料理店、武器屋、アイテム屋、色々な屋台、アクセ屋等々が立ち並んでいる
「武器、揃えないとなぁ」
「今回の依頼の報酬は全員の武器調達か?」
「うーん、そうだね」
「ワタシが出してもいいんだが……」
「それはダメ」
でも、本当に困った時は頼らしてもらおう
何処にも寄らずに城へついた。まぁ、寄ってる暇ないよな
「マハト=ダンジン様に話があり参りました」
「聞いております。護衛の皆様はお1人以外別室で待機となりますが、宜しいですか?」
「構いません。コムラ、頼めますか?」
「私ですか?モカの方が」
「いや、ワタシも君がいいと思う」
モカがそう言うなら、仕方がない
「承りました。僭越ながら、微力を尽くさせていただきます」
「では、案内のものをつけます。おーい、誰かいないか」
すぐにメイドさんがきて、俺とフレイ様を案内してくれる。もう一人来て、モカ達を別室へ案内しているようだ
俺は城内ならどこにいようとモカを探知できてるしいいけど
悪いが、多分無いとは思うけどモカが危険になったらそっちに行く
「こちらが、マハト=ダンジン様のお部屋になります」
そんな事を考えていたら、部屋についたようだ
俺が扉を開けると、その隙間からナイフが飛んできた。ちっ、器用な坊ちゃんだな
人差し指と中指で挟んで止め、投げる。狙いは部屋の屋根裏?に隠れたやつ
ちっ、外した。逃げたし
「なかなかやるねぇ、フレイの護衛君」
「なんの真似ですかマハト=ダンジン」
もはやフレイ様はマハトに様もつけない。俺もだけど
部屋にいたのは、金髪の青年だ。陰険そうな顔が良く見える。それに小太り
「いや、そこのヒョロい護衛で君を守れるのかと思って試したんだよ」
「そうですか。それで、本日の要件は知っているということでよろしいですか?」
「うん、話があるんだってね。なに?」
「婚約の話ですが」
「あぁ、あれね。なに?早めたいの?それとも破棄?」
「婚約破棄の方です」
「ふぅん、いいよ」
「ホントですか!?」
「あぁ、でも交換条件だ。君の護衛の娘、頂戴?あの輝く金色の髪を持つ、オッドアイの娘。美しい」
その特徴を持つのはモカしかいない
俺は、何も言わない。フレイ様の判断を聞く
「何を言っているんです?」
「だから、婚約破棄していいけど、変わりに護衛の娘を貰うって話。何、代償もなしに破棄が出来るわけないでしょ」
「だからって!」
「じゃあ何か別のもの提示してよ」
「金銭は、どうです」
「要らないよ。一応王族だからね」
「兵力」
「要らない。私兵もいる」
「武器」
「要らない。戦わないし」
「骨董品」
「要らないよ。爺さんか、僕は」
「では、何が?」
「だから、オッドアイの娘」
「冒険者の方を交換条件には出せません。私の所有物でもないし、第一物でも無いです」
「あっそ。お話にならないね。婚約破棄は出来ない。交換条件はオッドアイの娘だけだ」
「あぅ……」
姫様、ここで折れるか?
「話は終わり?じゃ、帰んなよ」
この子豚、取り敢えず殴ろうか
「お考えは、変わりませんか?」
「くどいよ」
「……今日は、失礼致します」
折れたか。今日はって部分は強がりって奴かな
取り敢えず、何も言わずに帰ってやろう
◇◆◇◆◇◆
「おい、いるか」
俺は無人の部屋で声をかける
「どした、ボウズ」
「ボウズ、か。なぁ、そろそろそれやめろよ」
「あぁ?ダリィ。どうした、マハト坊」
「クソが。まぁいい。あのオッドアイの娘、俺の元に連れてこい。どんな手を使ってもだ」
「……マジで言ってんのか?」
「出来ないのか?最上級冒険者?」
「何言ってやがる、と言いてぇところだが、あの金髪の嬢ちゃんは元ギルマスだ。最上級冒険者モカ。通り名は神速刀のモカ」
「へぇ、彼女が」
「俺とは何度もやり合ってるが、最近やってねぇなぁ。腕は上がってんのか鈍ってんのかで成功するかしないか変わるぜ」
「私兵を貸してやる。あぁ、そうそう。ついでにフレイを事故死させてこい」
「はぁ、ボウズは注文が多いなぁ。どっちかにしねぇと、足元すくわれんぞ」
「うるさい!さっさと行け!」
「ハイハイ」
そう言うと男は姿を消した。唐突に現れたり消えたりする彼を、人は最上級冒険者、霧のハイドと呼ぶ




