第32話 新たな騒ぎの予感
ハヴィックが部に入ってから数日。
彼はすでに、依頼を受けて困っている人を手伝いに行く、というこの部の活動にも慣れてきていた。
本人は「大したことじゃない」と思っているようだが、表情を見ていると、誰かに認めてもらえることが以前より嬉しいらしい。
新しい居場所を受け入れ始めているようで、俺としても少し嬉しかった。
ただ……。
「なあ、ここ、もう少し出力を上げたらどうだ?」
「いいと思う。じゃあ左脚は?」
「こっちは効率を上げて、飛行時間を延ばそう」
部室の後ろ側は、いつの間にか二人のメカオタクによって、機械を好き放題改造できる作業スペースへと変貌していた。
その一方で、俺と沙耶香は前のほうに座り、本を読んだりしながらそれぞれ好きなことをしている。
「あはは……私、二人が何を話してるのか全然分からないけど、仲良くやってるみたいでよかったね」
「そうだな。さっきからずっと話し込んでるし、本当に前のことは気にしてないみたいだ」
機械が二人を救ったのか。
それとも、もともと二人ともこういう性格だったのか。
そこはよく分からない。
ただ、俺たちが想像していたような、いつ空気が重くなってもおかしくない雰囲気にならなかったのは本当によかった。
俺たちが本を読み、その後ろで二人のメカオタクが延々と議論を続けていると――
ミリアン先生が部室へ入ってきた。
「うんうん! こうして仲良く話し合ってる姿を見ると、先生も安心するわ」
ミリアン先生は嬉しそうに頷いた。
いやいや。
部室の後ろがこんなことになってるのは、何も言わないんですか?
「そこの二人、一旦手を止めて。今日はみんなに伝えることがあるの」
何かあると聞き、全員が中央の机の周りへ集まって席についた。
「もともと毎年ある行事なんだけど……今年は私たちも、部活動対抗戦に出てもらうわよ!」
「「部活動対抗戦?」」
……なんだ、それ。
「部活動対抗戦っていうのは、部同士で代表者を出して競う大会よ。競技はいろいろあって、一対一の決闘だったり、魔法風船を使った競技だったり、普通の競走だったりね」
ミリアン先生は一枚の紙を配りながら説明を続ける。
「基本的には、あなたたちが思いついた競技なら何を書いてもいいわ」
「でも、俺たち四人しかいませんよね? それでどうやって五試合もやるんですか?」
「一つの部と五試合して、先に三勝したほうが勝ちになるの。だから四人しかいない私たちは、必ず誰かが二回以上出ることになるわね」
なるほど。
つまり、一回戦ごとに相手の部と五試合行い、先に三勝したほうが次へ進める。
そして、その競技内容そのものは生徒たちが決めるらしい。
「じゃあ、試合の順番や内容は誰が決めるんですか? 同じ競技が重なった場合は?」
「五試合の競技は抽選で決めるわ。ただし、五つ全部が同じ部の提出した競技になった場合は、その部の代表者に二つ外してもらって、相手側の競技を改めて抽選するの」
ミリアン先生は指を一本立てる。
「それと、両方の部が同じ競技を書いていた場合――たとえば両方とも決闘を出していたなら、決闘を二試合やることもあるわ。ただし、同じ人が両方に出るのは禁止ね」
それなら確かに公平性は保たれている。
自分たちの得意な競技である程度勝ちを狙える一方で、抽選そのものがどちらか一方に偏りすぎないようにもなっている。
「先生。対抗戦で優勝したら、何か賞品はあるんですか?」
こういう行事なら、何かしらの褒美がなければ全力で頑張る人も少ないだろう。
「順位はもちろん発表されるわ。賞品については毎年違うから、今年はまだ何とも言えないけど」
「毎年……」
俺と沙耶香、それにカミラは、その言葉を聞いて同時にハヴィックへ視線を向けた。
当の本人は、まだ紙を見ながら何の競技を出すか考えている。
「なんだよ! 去年まで俺は研究施設にいたんだから、こっちを見るな! 部活動対抗戦に出るのは今年が初めてだ!」
「ふふ、別に何も言ってないわよ。今年は頑張りましょうね」
研究施設を追い出されたことにはまだ不満そうなのに。
部活動対抗戦には、明らかに期待している。
……なんとも分かりやすいというか、複雑というか。
俺もどう反応すればいいのか分からない。
「それじゃあ、どんな競技にするか、みんなでよく考えておいてね」
そう言い残し、ミリアン先生は扉の前まで歩いていく。
「明日の部活で確認するからね!」
そのまま扉を閉め、部室を出ていった。
部活動対抗戦か……。
一体、どこまで本気を出せばいいんだろうな。
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