↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
33/37

第30話 新しい部員

「くそっ……」


敗北したハヴィックは、花穂によってがっちりと縛り上げられていた。


一方のカミラは、幸い大きな外傷こそなかったものの、長時間まともに食事も水分も取っていなかったせいで、かなり衰弱している。


今は俺と沙耶香の二人で、身体を支えていた。


「ハヴィック。お前が以前、俺の下で研究していたことを考えれば、多少は情状を酌むよう話すこともできる」


エリック教授はそう言ったあと、表情を険しくする。


「だが、カミラを誘拐した件まで、なかったことにするつもりはない」


エリック教授は、箱型に戻った魔導装甲を手に取った。


「こいつは学院長に提出する。お前のことも、俺から直接報告するつもりだ」


そして、ハヴィックをまっすぐ見据える。


「この学院に残れるかどうかは――学院長の判断次第だ」


ハヴィックにどんな過去があったのか、俺にはまだ詳しく分からない。


そう考えると、少し残酷な気もする。


とはいえ。


ここまでのことをしたのは、他でもないハヴィック自身だ。


俺が口を挟めるようなことでもないだろう。


学院長本人が判断すると聞いた瞬間。


さっきまで険しい表情を浮かべていたハヴィックも、途端に大人しくなった。


結局のところ。


こいつだって、この学院にいられなくなるのは怖いらしい。


*****


「だからダメだって言ってるでしょ!」


カミラ誘拐事件から、一日が経った。


カミラはすでにほとんど回復し、いつも通り学院生活へ戻っている。


一方。


ハヴィックのほうは、まだ学院長からの処遇を待っているらしい。


それはともかく……。


どうして俺は、部室の前に立っているだけで沙耶香の声が聞こえてくるんだ?


何が起きているのかは分からない。


でも。


声を聞くだけで、沙耶香がかなり怒りかけていることだけは分かる。


……入らないほうがいいか?


少し悩んだものの。


結局、俺は扉を開けた。


せめて沙耶香が何に怒っているのかくらい、確認しておこう。


「あっ! シュン君! 聞いてよ!」


俺の姿を見るなり、沙耶香が頬をわずかに赤くしながら、ぷくっと頬を膨らませて駆け寄ってきた。


その一方。


カミラは席に座ったままお茶を飲んでいる。


ただし、表情は明らかに不機嫌そうだ。


……一体何があったら、二人ともこんな状態になるんだ?


「な、何があったんだ?」


「カミラちゃんが、また勝手に他の人の修理を引き受けようとしてるの!」


「え?」


俺は驚いてカミラを見る。


「本当なのか?」


「別にいいでしょ。向こうから頼まれたんだから」


「じゃあ、その相手は依頼書を書いたのか?」


「……」


「頼まれたとしても、ちゃんと依頼書を通してからじゃないとダメだろ」


依頼書の話を出した途端。


カミラは何も言わなくなり、こっちから視線まで逸らした。


……なるほど。


相手は書いてないんだな。


一応、これはうちの部の基本的な決まりだ。


しかもカミラは、ついこの前似たようなことで事件に巻き込まれたばかり。


それなのに反省するどころか。


また勝手に相手と口約束していたらしい。


「あなたたち、何を騒いでるの?」


ちょうどそのとき。


ミリアン先生が部室へ入ってきた。


「廊下にまで声が聞こえてたわよ」


「先生! カミラちゃんが……!」


沙耶香は、さっきまでの事情を改めてミリアン先生へ説明した。


「なるほど。そういうことね」


「でも先生! 困ってたから、私はただ……」


「カミラの気持ちは分かるわ」


ミリアン先生は穏やかに答える。


「でも、私たちは依頼書を受け取ってから、正式に依頼を受けることになってるの」


そして少し間を置いてから。


「それと、あなたたちが話してるその生徒なら、さっき私のところにも来たわよ」


……よかった。


ちゃんとミリアン先生のところにも行っていたらしい。


それなら俺も、これ以上この件で悩む必要はなさそうだ。


「もちろん、依頼書も書いてもらったし、他に妙な目的がないことも確認済みよ」


ミリアン先生は、わざわざ「他に目的はない」とまで付け加えた。


……やっぱり。


カミラの件でちゃんと確認できなかったことを、まだ気にしてるんだろうな。


「それに――」


ミリアン先生が少し笑う。


「ちょうど新しい部員にも、うちの活動を体験してもらえるしね」


「新しい部員?」


「そうよ。入ってきて」


……。


なんだろう。


ものすごく嫌な予感がする。


扉の向こうから、一人の人影が部室へ入ってきた。


しかも。


自分専用らしい装備まで持っている。


まさか……。


俺の嫌な予感は、見事に的中した。


「二年一組のハヴィック・スターリングだ。よろしく頼む」


一秒。


部室の空気が完全に止まった。


「「ええええええっ!?」」

ハヴィックのクラスについて、前の話でうっかり「二年A組」と書いてしまっていましたが、正しくは「二年一組」です!

該当箇所は修正済みです。よろしくお願いします!

お読みいただきありがとうございます。

「続きを読みたい!」と少しでも思っていただけましたら、

ブックマークや☆での応援をいただけると、執筆の大きな励みになります。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。