第9話 共有の条件
REV倉庫。
白と青の二機が並ぶ。
REVR-II。
REVR-III。
フィーナはレゾネイトスーツの接続ラインを固定する。
レイは無言でナハトレグに乗り込む。
上階の手すりに、ユユ。
壁際には第1部隊の接続者たち。
六名。
誰も表情を崩していない。
だが空気は硬い。
「残響共有開始。接続値15%。」
ユユの声が落ちる。
二機が起動。
白と青の波形が上昇する。
触れる。
重なる。
その様子を見ながら、背後で低い声が漏れる。
「……なんで、アイツなんだ」
抑えた声。
別の接続者が続く。
「俺たち第1部隊だ」
「姫の直属だろ」
「俺でも――」
言葉が止まる。
言い切れない。
フィーナを信じているからだ。
だが、納得はしていない。
上から、ユユがあっさり言う。
「無理だよ」
視線が一斉に上がる。
「何がですか」
ユユはモニターを見たまま答える。
「共有は“分散”じゃない」
「同じ残響を、同時に聞く」
数値が16へ上がる。
フィーナの呼吸がわずかに重くなる。
「例えばあなた達が10%耐えられるとしても」
「共有に入れば、それ以上が流れ込む」
「しかもフィルターなし」
一人が食い下がる。
「なら俺たちでも――」
ユユは遮る。
「違う」
短い。
「能力の問題じゃない」
倉庫中央。
接続値18%。
波形が揺れる。
フィーナの指がわずかに震える。
だが崩れない。
ユユが続ける。
「フィーナはね、あなた達と共有できない」
沈黙。
「……なぜ」
ユユは少しだけ視線を下げる。
アルトリリィを見る。
「守ろうとするから」
壁際がざわつく。
「当たり前だろ」
「隊長だぞ」
「私達はフィーネリア様の盾だから」
ユユは肩をすくめる。
「そう」
「だから無理」
数値20%。
残響が重なる。
フィーナの声が小さく漏れる。
「……重い」
レイが即座に返す。
「受け取っている」
波形が安定する。
ユユが言う。
「あなた達と共有したら、フィーナは“案じる”」
「大丈夫かって」
「無理してないかって」
「守る対象として見る」
一拍。
「身を預けられない」
隊員の一人が低く言う。
「俺たちは頼りないってことか」
ユユは首を振る。
「違う」
「頼れるよ」
「でも頼らない」
その違い。
倉庫の中央で、波形が完全に重なる。
静かだ。
「レイには」
ユユは淡々と続ける。
「身を預けられる」
フィーナの呼吸が整っていく。
残響はある。
だが溢れない。
レイの声が届く。
「……問題ない」
その一言で、フィーナの肩の力が抜ける。
ユユは最後に言う。
「共有は、強い人とやるんじゃない」
「預けられる相手とやるの」
沈黙。
「ま、相性ってこと」
隊員たちは何も言えない。
納得はしていない。
だが否定もできない。
アルトリリィとナハトレグが停止する。
ハッチが開く。
フィーナが降りる。
少し汗ばんでいる。
レイも降りる。
二人は目を合わせる。
それだけで十分だった。
壁際の接続者の一人が小さく呟く。
「……俺たちじゃ無理なのか」
誰も答えない。
ユユが手すりから離れる。
「だから言ったでしょ」
軽い声。
だが目は真面目だ。
「フィーナには、レイじゃなきゃ無理」
倉庫に残るのは、
不満でも、羨望でもなく。
理解しきれない距離。
共有は機構じゃない。
関係だ。
そしてそれは――
選べない。




