第37話 観測者たち
「みーっけ」
桃色の機影が瓦礫帯の上を滑る。
GRASP-γ1《クインス》。
細身のフレームが跳ねるように加速する。
その背後を、橙のGRASP-γ2《キングス》が低く、重心を落として追う。
「正面取る」
「はいはい相方、了解だにゃあ」
二機の視線は、ただ一つ。
白。
残響共有一体型REV。
共和国部隊が雪崩れ込む中、
その中心で戦況を切り裂いている存在。
⸻
レールキャノンが火を噴く。
轟音。
圧縮された閃光が一直線に走り、ガンズを三機まとめて貫通させる。
爆炎。
破片。
続けて胸部バルカン。
装甲ではなく武装を削る正確な射撃。
武器を奪われたブレイバーが無力化され、
振動ブレードが滑るように首を断つ。
強い。
派手。
圧倒的。
だが――
「想定通りだな」
シンが低く呟く。
⸻
クインスが急加速。
細身の機体が瓦礫を蹴り、
アルテミスの真正面へ。
短刃二刀が振動ブレードと激突する。
金属音が空気を震わせる。
火花。
至近距離。
フィーナが踏み込む。
セナは笑う。
「いいねー、それそれ」
刃が滑り、押し、絡む。
その一瞬。
ブレードテイルが背後から伸びる。
六条の有線刃。
死角。
だが――
キングスのライフルが正確に撃ち抜く。
火花とともに全弾逸れる。
「邪魔すんな相方ぁ」
「フォローだバカ」
セナは守られる前提で踏み込む。
シンは一歩後ろで角度を殺す。
連携しているようで、していない。
だが隙はない。
⸻
接触通信。
刃が噛み合ったまま、セナが開く。
「ねえ白いの」
「そっち、楽しい?」
フィーナの息は荒いが、揺れていない。
「退いて」
その瞬間。
「フィーナ、右だ」
低い男の声。
一拍の遅れもなく、アルテミスが回転。
ブレードテイルが角度を変える。
キングスが即座に撃ち落とす。
クインスが身を翻し、振動ブレードを受け流す。
セナが笑う。
「…やっぱりねー」
シンは短く言う。
「確定だな」
同時反応。
補助ではない。
同一機体内で、二つの判断が走っている。
確認完了。
⸻
だが、アルテミスも甘くない。
フィーナが踏み込み、ブレードを弾き上げる。
その瞬間、腰部レールキャノンが展開。
至近距離。
セナの瞳が細まる。
「うわ、近っ」
キングスが体当たりで軌道をずらす。
光が地面を抉る。
衝撃波が三機を同時に押し流す。
瓦礫が舞う。
粉塵の中で、三機が再び距離を取る。
互角。
決定打なし。
それでいい。
今回の任務は討伐ではない。
観測。
測定。
“本番前の確認”。
⸻
セナが息を吐く。
「まだまだ遊べるにゃあ」
「いや、十分」
シンが即断する。
「データは取れた。今回はここまでだ」
「えーもう?」
「我儘言うな」
クインスが軽やかに後退。
キングスが射撃で牽制しながら離脱。
⸻
アルテミスは追わない。
フィーナが小さく呟く。
「……なんだったの……?」
レイの声は静かだ。
「見に来ただけだな」
桃色と橙の機影が遠ざかる。
狩人ではない。
観測者。
次は。
遊びでは済まない。




