第31話 白の解析
帝国前線基地・食堂。
昼時を過ぎた時間。
鉄製のテーブルに、パフェとカレーが並んでいる。
セナはスプーンをくるくる回しながら言う。
「やっぱ前線基地のパフェ、レベル低いにゃあ」
シンは無言でカレーをかき込む。
数秒後。
「塩強すぎだろこれ」
「辛さで誤魔化してるだけじゃねぇか」
「うるさ」
セナは一口食べる。
「でも甘いからいい」
「糖分は正義」
「黙って食え」
腐れ縁。
同ロット。
セルド研究所製DC3rd。
兵器ではない。
兵士として作られた。
だが味の好みも、軽口も、偶発的に生まれたものだ。
人間らしい。
倫理観は、ないが。
⸻
食堂の壁面モニターに戦闘映像が流れる。
白い機体。
東部戦線で戦況をひっくり返した一騎。
セナが顎で示す。
「あれさ」
「やばかったね」
シンはスプーンを止める。
「強ぇな」
短く言う。
「強い、じゃ足りない」
セナは笑う。
「理不尽」
⸻
数分後。
開発研究部の解析室。
スクリーンにアルテミスの戦闘ログが映し出される。
研究員が説明する。
「残響出力、火力、反応速度ともに異常値」
「波形ログは安定。均等」
「単独高適性接続者と推測されます」
シンが椅子に深く座る。
「均等、ね」
「信用ならねぇな」
セナが前のめりになる。
「ねぇさ」
「戦い方、変わってなかった?」
研究員が振り向く。
「どの点が?」
セナは映像を巻き戻す。
前半。
圧倒。
迷いなし。
一騎当千。
後半。
割り込み。
庇い。
味方を覆う軌道。
「別人みたいだった」
シンが低く言う。
「芯が違う」
「殺す動きと、守る動き」
研究員は首を振る。
「接続者交代の痕跡はありません」
「波形は一貫しています」
シンが鼻で笑う。
「じゃあなんでああなる」
「同じ奴がやってるなら、揺れが出るだろ」
セナがくるくる椅子を回す。
「二人、とか?」
室内が一瞬止まる。
研究員が否定する。
「二人接続なら波形は乱れます」
「均等である以上――」
シンが遮る。
「均等すぎるって可能性は?」
セナがにやりと笑う。
「片方が制圧して、片方が守る」
「役割分担」
「そういう感じ」
研究員は黙る。
データ上は否定できる。
だが映像は否定しきれない。
シンが白い機体を睨む。
「面倒だな」
「人間臭ぇ」
セナが肩をすくめる。
「強いよ、あれ」
「でもさ」
少し目を細める。
「崩れたら、早そう」
シンは答えない。
だが否定もしない。
「次は削る」
短く言う。
「どっちかでもいい」
セナが頷く。
「うん」
「二人だったら」
「どっちか落ちたら、もう片方も落ちる」
直感。
だが、間違っていない。
スクリーンの白い機体。
記録が更新される。
――残響共有一体型REV
――戦闘思想:二層構造の可能性
――次回交戦時、重点観測対象
セナは立ち上がる。
「次はさー」
「甘いもの食べてから行こーっと」
シンが吐き捨てる。
「バカ言ってんじゃねぇよ」
「バカじゃないもーん」
セナは笑う。
「うーん、楽しみだね」
白い機体を、最後に一瞥する。
まだ知らない。
その中にいるのが、自分たちと同じ“セルド”であることを。
だが。
次に交わるときは、もっと近い。




