第3話 滑走する白と青
東部防衛ライン。
地平線の向こうに、砂塵が立ち上がる。
「帝国前線部隊確認」
管制の声が落ちる。
映像に映るのは六機。
GRASP-08《ゼルガード》。
連装銃を両腕に備えた中距離型。
装甲は厚くないが、機動が速い。
「接続値20%、全機DC2nd」
ユユの声が通信に乗る。
「反応速度は上。撃ち合いは避けて」
REV倉庫のシャッターが開く。
白と青が並ぶ。
REVR-II。
REVR-III。
「第1部隊、防衛位置へ展開!」
フィーナの声。
REV-VI六機が滑走を開始する。
振動剣と長銃。
バランス型。
性能はゼルガードより上。
だが――
接続値は5%から10%。
数値は正直だ。
砂塵の向こうから、弾幕が先に来る。
ゼルガードの連装銃。
地面が削られ、石片が弾け飛ぶ。
「被弾、軽微!」
エルナイト一機がよろめく。
「速い……!」
20%。
DC2ndの反応。
一瞬早い。
フィーナが息を吸う。
「前、出る」
アルトリリィが滑走を加速させる。
地面を擦る音。
白い軌跡。
ナハトレグが後方三十メートルで追随。
「距離維持して」
ユユの声。
「離れたら共有切れるからね」
「了解」
レゾネイトスーツの接続ラインが光る。
20%。
20%。
リンク待機。
「……共有」
波形が触れる。
重なる。
一瞬。
世界が濃くなる。
撃たれた記憶。
断末魔。
焦げた金属の匂い。
重い。
辛い。
胸が締まる。
だが。
隣に青がある。
波形が支える。
溢れない。
「前方二時、弾幕薄い」
レイの声。
即座に軌道を変える。
アルトリリィが地面すれすれから踏み込む。
超電動刃、展開。
一閃。
ゼルガードの銃身が弾き飛ぶ。
二閃。
胸部装甲を裂く。
爆ぜる。
ナハトレグの専用銃が続く。
精密射。
二機目、三機目。
ゼルガードは速い。
だが。
二人は、共有している。
視界の端が広い。
一瞬早い。
「左!」
フィーナ。
「了解」
レイが撃ち抜く。
四機目。
砂煙の中を、白と青が滑る。
常に距離を保つ。
離れない。
重い。
苦しい。
だが。
「……大丈夫」
フィーナが小さく言う。
「聞こえてる」
レイが返す。
五機目。
最後の一機が接近。
ゼルガードが至近で連装銃を撃つ。
弾が地面を抉る。
アルトリリィが滑り込み、刃で銃身を叩き折る。
ナハトレグが至近距離から撃ち抜く。
沈黙。
砂煙が落ちる。
ゼルガード、全滅。
共有を解除。
一気に重みが戻る。
フィーナの呼吸が乱れる。
胸が痛い。
残響が濃い。
20%でも。
重い。
ナハトレグがすぐ横へ滑る。
「支える」
短い。
フィーナは小さく笑う。
「うん」
エルナイト六機は損傷。
だが全機生存。
防衛成功。
白と青は滑走を緩め、帰投する。
⸻
共和国・REV倉庫
ユユがモニターを閉じる。
「……いいね」
データ波形を確認する。
「共有時、受容量安定」
「40%運用、実戦でも問題なし」
端末に入力を続ける。
「これはいいデータ」
少しだけ、満足そうに息を吐く。
通信を開く。
『二人ともー』
フィーナが応答する。
「どうしたの?」
『明日、お昼前』
少し間。
『中央広場集合!』
「え?」
レイが横で首を傾げる。
ユユはにやりとはしない。
ただ、少し楽しそうに言う。
『たまにはお祝いしなきゃでしょ』
『実戦初データ取得成功、ってことで』
通信を切る。
モニターに残る白と青の軌跡。
ユユは腕を組む。
「……いいこと思いついた」
独り言。
戦争は続く。
だが。
春は、まだ終わらない。




