第27話 公開処刑
REV倉庫。
ユユは苛立ちを隠さず戻ってきた。
「レイ! ちょっと来て」
レイが振り向く。
「は、はい」
つい敬語になる。
ユユは小さく舌打ちしながら、端末を操作する。
音量はゼロ。通信は――繋がっている。
(聞いてなさいよ、フィーナ)
「ここ、立って」
レイは素直に従う。
「私の気持ち聞いて」
そのままユユは振り返る。
「……第1部隊、全員集合!」
作業を止め、隊員たちが集まる。
「なんすか急に」
「嫌な予感しかしないんですけど……」
ユユは深呼吸する。
緊張ではない。
イライラを押し込めるため。
「レイ。よく聞いて」
「ああ」
「私、レイが好き」
「は……」
レイが言葉を探すより先に。
「ええぇぇぇ!?」
倉庫が揺れた。
「そんな……ユユさんが……」
「嘘だろ! 俺の恋がぁ!」崩れ落ちる隊員。
「私レイくん狙ってたのに……」膝から崩れる女性隊員。
阿鼻叫喚。
「うるっさい!!」
ユユの一喝で静まる。
「はい、レイはどうなの」
「どう……とは」
「私のこと」
レイは真剣に考える。
「分からない」
「俺は何を言えばいい」
隊員たちが「真面目だ……」と妙に納得する。
ユユは冷静に畳みかける。
「じゃあ私とどうなりたい? 今後」
「接続者と技術者の関係だ」
「共有は?」
「不要だろう」
「一緒に暮らしたい?」
「不要だ」
ざわめき。
ユユは一歩踏み込む。
「私が隣にいちゃダメ?」
レイは迷う。
ほんの一瞬。
「……俺の隣には、フィーナがいる」
空気が止まる。
隊員たちが一斉にレイを見る。
ユユは表情を変えない。
「フィーナとなら、共有したり一緒に暮らしたりしたい?」
「ああ」
即答。
「俺は、なるべくフィーナと一緒にいたい」
どよめき。
ユユはさらに刺す。
「私より、フィーナの方が隣にいてほしい?」
「そうだ」
「フィーナに“好き”って言われたんでしょ?」
レイはわずかに視線を落とす。
「……ああ」
隊員たちはなぜかそこは納得している。
ユユは最後の一撃。
「レイ。好きって難しいよね」
「じゃあさ」
「死ぬまで隣にいたい?」
レイは一瞬も迷わない。
「そうだな」
静かな即答。
それで十分だった。
ユユはふっと息を抜く。
「はい、ご清聴ありがと」
「解散。レイも戻っていいよ」
倉庫はざわめきながら元の作業へ戻る。
「死ぬまでって言ったぞ今……」
「公開告白じゃねえか……」
レイはそのざわめきを理解しきれないまま、作業へ戻る。
⸻
倉庫を出たユユは端末を耳に当てる。
「もしもーし、聞こえてる?」
数秒の沈黙。
「あれ? 切れてる?」
「……聞こえてるよ」
小さな声。
「ご感想は?」
「なんで……」
「ん?」
「なんでみんな呼んだの!!」
ユユが思わず端末を離す。
「うるさっ!」
「ほら、皆さ、なんで元帝国のレイがーってうるさいでしょ?」
「黙らせるため」
「フィーナが選んだって知らせるため」
「だからってこんなの公開処刑でしょ!」
「うっさいなー」
「てゆーか多分皆分かってたよ?」
「フィーナがレイのこと好きなの」
「う、うそ……」
「ほんと。思ってるより分かりやすい」
「あ、あああ……」
「フィーナ?」
「もうみんなの顔が見れない……」
「だから周知の事実なんだって」
一拍。
「それに、聞いた?」
「レイの声」
「……うん」
小さく。
「ほとんどフィーナのことしか考えてないよ、あれ」
沈黙。
それから。
「……よかった」
本当に小さな声。
でも確かに、嬉しそう。
「わかりやすっ」
「え!? 声に出てた!?」
「出てた」
「だからさ」
ユユは少しだけ優しく言う。
「フィーナがレイを避ける理由、もうないよ」
「……ありがとう」
「ユユに助けられてばっかりだね、私」
「当たり前でしょ」
「友達なんだから」
「うん、最高のね」
ユユが顔をしかめる。
「それ、なんか恥ずかしいんだけど」
⸻
数日後。
フィーナは訓練に復帰した。
単独10%は安定。
レイとも、以前のように――いや、それ以上に自然に話せる。
だが。
隊員たちの視線が、今度は妙に温かい。
「死ぬまで隣だもんな……」
「殿下、頑張ってください」
視線が刺さる。
フィーナはやや気不味くなりながらも、
それでも逃げなかった。
慣れるのには、少し時間がかかった。
けれど。
もう、避けることはしなかった。




