第26話 決着をつけろ
王城私室。
泣きついたままのフィーナを、ユユはどうにか引き剥がした。
「……落ち着いて」
フィーナは鼻をすすりながら頷く。
「うん……」
目はまだ赤い。
ユユは深く息を吐く。
「まず現状確認ね」
「フィーナ、単独接続は10%まで回復」
「それ以上は危険域」
フィーナは小さく頷く。
「うん……」
「レイは単独20%で出撃して、ログが乱れてる」
「無理してる」
フィーナの表情が強張る。
その言葉は、まだ刺さる。
ユユは続ける。
「そして」
机の上に置かれた設計端末を指で叩く。
画面には、新しい設計名。
《アルテミス》
「これの試験は、あんた達じゃないとできない」
フィーナが顔を上げる。
「……二人で?」
「うん」
ユユは頷く。
「二機共有じゃない」
「一機に二人同時接続」
「精神安定が前提」
フィーナの頬がわずかに赤くなる。
「……」
ユユがじっと見る。
「落ち着いて聞いて」
「フィーナとレイが恋人になろうが、私は構わない」
フィーナが固まる。
「こ、こい……びと……?」
顔が一気に真っ赤になる。
ユユの額に青筋が浮く。
「落ち着いて??」
「ご、ごめんなさい……!」
フィーナは縮こまる。
ユユは頭を抱える。
「なんでもいいの、関係は」
「でもね」
真面目な声に変わる。
「二人の精神的安定は、確実に必要なの」
「《アルテミス》は、その上に成り立つ」
フィーナは唇を噛む。
「決着……って言っても……」
「レイはまだ分かってないし……」
ユユははっきり言う。
「待ってられない」
「レイに気づいてもらう時間はない」
フィーナが目を瞬かせる。
「……どうするの」
ユユは真顔で言った。
「私も好きって言ってくる」
「え!?!?」
フィーナが飛び上がる。
「な、なに言ってるの!?」
ユユは即座に手を振る。
「本気にしないでよ!」
「これは“自覚させるため”」
「レイに、感情を自覚させるため」
フィーナは混乱したまま、ほっとした顔になる。
「そ、そっか……そうだよね……」
ユユが呟く。
「重症すぎ……」
頭を抱える。
フィーナは、恐る恐る言う。
「でも……」
「レイが、ユユの方が好きだったら?」
ピキ。
空気が固まる。
ユユの額に再び青筋。
「この子は……」
数秒、黙る。
それから乱暴に端末を取り出す。
「分かった」
「通信、繋いでおく」
フィーナが固まる。
「え?」
「レイの答え、リアルタイムで聞いとけ」
「このバカ!」
フィーナがぽかんとする。
「え、ちょ、ちょっとバカって——」
バタン!
扉が閉まる。
廊下に出たユユが小さく呟く。
「ったく……」
「なんで私が恋愛介入係なんだよ……」
「REVの整備はできても、メンタル整備は専門外だってのに……」
ため息をつく。
だが足は止まらない。
REVR。
二人が一つになる機体。
なら。
まずは二人の心を、はっきりさせるしかない。
ユユは歩き出す。
半ばやけくそで。
それでも、ちゃんと覚悟を決めて。
——さて。
修羅場、始まる。




