第23話 ずるいふたり
王城の私室。
昼下がりの光は柔らかいのに、部屋の中は重い。
ベッドに横になったまま、天井を見つめる。
何もする気が起きない。
依存。
その言葉が、胸の奥で何度も反響する。
レイがいないと戦えない。
レイがいないと眠れない。
レイがいないと――
「……違う」
小さく否定する。
違うはずだ。
私は隊長で、王女で、前線に立ってきた。
20%で立っていた。
一人でも。
それなのに。
前回の単独戦闘。
7%。
崩れた。
怖かった。
うるさかった。
あの濃い残響。
身体が震えた。
あのとき、レイはいなかった。
そして、レイが単独で出たとき。
ログを見た。
20%。
揺れていた。
あれは、無理をしていた。
口では「問題ない」と言いながら。
私のせいだ。
共有を求めたのは私。
傍にいて、と言ったのも私。
レイが揺れたのは。
「……私の、せい」
胸が痛む。
嬉しかった。
あの夜、傍にいてくれたこと。
胸が落ち着く、と言ってくれたこと。
嬉しかった。
でも。
レイが壊れるかもしれない未来は、嫌だ。
私のために。
それだけは。
嫌だ。
手で目を覆う。
暗い。
静か。
でも。
うるさい。
残響じゃない。
思考が。
依存。
共有。
隣。
傍に。
どこまでが戦術で、どこからが感情なのか分からない。
レイは。
共有は、誰とでもいいのだろうか。
私じゃなくても。
――その考えが、胸を刺す。
嫌だ、と。
そんな自分に、呆れる。
最低だ。
レイの身体を心配しているのに。
同時に。
自分以外と共有してほしくないなんて。
「……ずるいよね」
自分が。
そう思った瞬間。
端末が震えた。
小さな音。
けれど、心臓が跳ねる。
画面を見る。
差出人。
レイ。
一瞬、理解が追いつかない。
レイから、連絡?
初めて。
喜びよりも、驚きが先に来る。
画面を開く。
《今から少し、会えないか》
それだけ。
理由も、補足もない。
たった一文。
それだけで。
世界の色が、少し戻る。
身体を起こす。
さっきまで重かったはずなのに。
息が、楽だ。
会いたい。
会わなくちゃ。
どうして。
どうして、こんなに。
レイから連絡が来ただけ。
それだけなのに。
こんなに気持ちが軽くなる。
「……ずるいな」
今度は、自分じゃない。
レイが。
画面を見つめたまま、少し笑う。
指が動く。
《準備するから、少し待って》
送信。
胸の奥が、少しだけ静かになる。
依存かもしれない。
共有かもしれない。
それでも。
今は。
会いたい。
ただ、それだけだった。




