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第19話 静かじゃない夜

夜。


王都は静まっている。


だがフィーナは眠れなかった。


目を閉じるたび、残響が押し寄せる。


撃った音。

撃たれた声。

あの戦場。


そして――


レイの波形。


乱れていたログ。


見てしまった。


偶然じゃない。

見ようとして見た。


「……問題ない」


あの不器用な笑顔。


嘘だ。


フィーナは立ち上がる。


薄い上着を羽織り、城を抜ける。


足は迷わない。


REV倉庫側、特別区画。


レイの部屋。


ノックはしない。


ゆっくり扉を開ける。


「……起きてるよね」


室内は暗い。


ベッドに腰掛けたままのレイ。


背もたれに軽く寄りかかり、天井を見ている。


「……ああ」


やはり。


眠っていない。


フィーナは部屋に入り、扉を閉める。


顔には、うっすら涙の跡。


レイはそれを見ても、何も言わない。


問いもしない。


フィーナはベッドの端に腰を下ろす。


少しだけ距離を空けて。


「……静かになった?」


レイは間を置く。


ほんのわずかに。


「……ああ、うるさくない」


嘘だ。


残響はまだある。


今日の戦場の分も。


前のように消えてはいない。


ただ。


耐えられる。


一緒なら。


それだけだ。


「よかった」


フィーナはほっと息を吐く。


「私も、うるさくて眠れなかったから」


少し俯く。


「……ごめんね、頼りっきりで」


レイは首を振る。


「共有しているだけだ」


淡々と。


「それに、俺も助かっている」


フィーナが顔を上げる。


「そうなの?」


「ああ」


一拍。


「フィーナは、来てくれた」


フィーナは少しだけ目を細める。


「そう、だけど」


レイは胸に手を当てる。


「ここが、落ち着く」


不器用な表現。


だが本音。


フィーナの胸がじんわりと温かくなる。


「……そっか」


小さく笑う。


安心する。


それでいい。


何かを話していた。


今日の戦闘。

倉庫のこと。

どうでもいい雑談。


気づけば。


フィーナは横になっていた。


レイのベッドで。


寝息が静かに整う。


レイはその隣に座ったまま。


目は閉じない。


うるさい。


それでも。


彼女がいるこの空間は、まだ耐えられる。


「……傍にいる」


小さく呟く。


自分に言い聞かせるように。



朝。


警報。


鋭いサイレンが倉庫を震わせる。


フィーナは飛び起きる。


レイもすぐ立ち上がる。


二人で走る。


REV倉庫。


だが、第1部隊は既に出撃している。


ユユが端末を操作している。


「私達も!」


フィーナが言う。


レイも頷く。


しかし。


「お二人は今日は休み」


ユユの声は静かだが強い。


レイが問う。


「なぜだ」


「……理由は後でちゃんと説明する」


「今は部屋に戻って」


2人はすぐには納得しない。


「勝手に出られないよう、2人のREVRにはロックかけてあるから」


本気だ。


フィーナは言葉を失う。


落ち込んだように視線を落とす。


「……分かった」


王城へ戻る。


レイも特別区画へ。


二人は別々の部屋へ帰る。



フィーナの私室。


ノック。


「入るよ」


ユユだ。


フィーナはベッドに座っている。


眠れていない顔。


ユユは扉を閉め、まっすぐ見る。


沈黙。


数秒。


「フィーナ」


声は真っ直ぐ。


「あなたは」


一拍。


「レイに依存してる」


静寂が落ちる。


フィーナは、すぐには否定できなかった。


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