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第17話 軽いはずがない

共和国領南部、通信中継施設周辺。


帝国の小隊が再侵入。


第1部隊出撃。


白い《アルトリリィ》。

青い《ナハトレグ》。


滑走開始。


レゾネイトスーツが淡く光る。


接続値20%。


リンク。


残響共有開始。


波形が重なる。


65%。


安定。


ユユの声が通信に落ちる。


『制御優先。無理しないこと』


フィーナは息を吸う。


来る。


戦場の残響。


――撃て

――助けて

――やめろ


濃い。


重い。


重いはずだ。


アルトリリィが前に出る。


超電動刃が閃く。


帝国GRASPが崩れる。


その瞬間。


強い残響が流れ込む。


フィーナは身構える。


でも。


……軽い。


おかしい。


濃度は変わらない。


数値も正常。


なのに。


胸を締めつける圧が、どこか遠い。


横をナハトレグが滑走。


二丁の専用銃が正確に敵を削る。


レイの波形は、近い。


静かだ。


揺れていない。


“俺は傍にいる”


声ではない。


でも、確かにある。


フィーナは剣を振るう。


もう一機、撃破。


残響がまた流れ込む。


やっぱり。


軽い。


軽いはずがない。


65%。


理論上は、20%単独より重い。


それなのに。


呼吸は乱れない。


視界も揺れない。


「……レイ」


小さく呟く。


「聞こえている」


すぐ返る。


落ち着いた声。


何も問題ないという声。


戦闘は短時間で終わる。


第2部隊が側面を押さえ、第3部隊が包囲。


帝国は撤退。


第1部隊、損耗軽微。


帰投。



倉庫。


ハッチが開く。


フィーナはゆっくり立ち上がる。


足は震えていない。


怖くないわけじゃない。


でも。


あの日みたいに崩れない。


レイがナハトレグから降りる。


いつも通りだ。


静かで。


落ち着いている。


フィーナは近づく。


「……今日、重かった?」


レイは数秒考える。


「通常通りだ」


「問題はない」


即答。


その目は、嘘をついていない。


少なくとも、本人はそう思っている。


フィーナは胸の奥がざわつく。


今日の残響は、濃かった。


確かに。


それなのに。


自分は。


軽かった。


視線が、レイの指先に落ちる。


ほんの僅か。


震え。


気のせいかもしれない。


でも。


フィーナの胸が締めつけられる。


あの時。


65%。


あの時も、軽かった。


もしかして。


もしかして。


「フィーナ?」


レイが呼ぶ。


心配そうに。


成長した声で。


フィーナは微笑む。


「ううん」


「なんでもない」


嘘だ。


胸の奥で、小さな声が囁く。


――もしレイが多く抱えてるなら。


そして。


その瞬間。


ほんの一瞬だけ。


ほんの、本当に小さく。


安心してしまった自分を、自覚する。


最低だ。


フィーナは視線を逸らす。


軽いはずがない。


なのに軽い。


それは。


誰かが重いから。


レイは静かに立っている。


いつも通り。


“傍にいる”。


その意味が。


少しだけ、変わり始めている。


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