第13話 納得できません
REV倉庫。
REVR-IIと、REVR-III。
残響共有開始。
20%。
20%。
白と青の波形が重なる。
静かだ。
フィーナは目を閉じる。
重い。
でも、崩れない。
隣にレイの波形がある。
支えられている感覚。
レイも感じている。
うるさくない。
むしろ、静かだ。
数分後、解除。
ハッチが開く。
フィーナが降りる。
倉庫は静まり返っていた。
第1部隊の隊員たちが、こちらを見ている。
そのうちの一人が、息を吐くように言った。
「……やっぱり納得できません」
声は低い。
だが、敬意は崩していない。
「どうして、あいつだけ……」
視線はレイへ向く。
レイは何も言わない。
別の隊員が続ける。
「以前も申し上げましたが」
「自分では駄目ですか」
「私では」
「我々では」
言葉は整っている。
だが、悔しさは隠せていない。
「隊長が限界の時、隣にいるのは自分たちでした」
「それでも、共有はあいつだけですか」
フィーナの胸が、静かに痛む。
怒りではない。
誇りでもない。
痛みだ。
答えようとする。
その前に、ユユがモニターを操作する。
「気持ちは分かるよ」
軽くは言わない。
画面に白と青の波形を出す。
ほぼ重なっている。
「でもこれは、努力で埋まる差じゃない」
一人が食い下がる。
「なら、努力します」
「訓練を増やしてください」
「合わせるまでやります」
ユユは首を振る。
「合わせるのは技術じゃない」
波形を拡大する。
「これは“選択の履歴”」
「一緒に壊れかけた回数」
「支えた回数」
静まる倉庫。
「前も言ったけど」
「フィーナは」
一瞬だけ本人を見る。
「共有すると、無意識に守る側になる」
隊員たちが固まる。
「あなたたちを守る対象として見る」
「案じる」
「だから、身を預けられない」
一拍。
「レイには預けられる」
空気が落ちる。
隊員の拳が強く握られる。
それでも敬語は崩さない。
「……それでも」
「納得は、できません」
正直な声。
「隊長の隣が、あいつだけというのは」
フィーナが一歩前へ出る。
「ごめんなさい」
全員が顔を上げる。
「信じていないわけじゃないの」
「むしろ逆」
声は揺れていない。
「守りたいって思ってしまうの」
「あなた達は仲間で……守るべき国民だから」
視線を真っ直ぐ向ける。
「共有は」
小さく息を吸う。
「一瞬でも“守られる側”にならないと成立しない」
静寂。
隊員の一人が、苦く笑う。
「……ずるいです、隊長」
「そんな言い方をされたら、何も言えません」
別の隊員が小さく頷く。
「理解は、しています」
「ですが、悔しいんです」
本音。
ユユが最後に言う。
「納得しなくていい」
全員が見る。
「でも無理なんだよ」
淡々と。
「今のフィーナは、レイじゃないと共有が成立しない」
「他の誰かが入ったら、壊れる」
春の光が差す。
白と青を照らす。
隊員たちは視線を落とす。
「……共有は任せます」
一人が言う。
「その代わり」
フィーナを見る。
「戦場では、我々も隣に立たせてください」
フィーナは強く頷く。
「もちろん」
レイは一歩だけ、フィーナの横に立つ。
何も言わない。
選んだ位置。
倉庫の空気はまだ重い。
納得はしていない。
でも、離れない。
それが第1部隊だった。




