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忍リクルート  作者: 枝久
一、

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7/96

蘇芳丸⑤ ー史書ー

若の視点に戻ります。

 大樹の弔儀が終わり、自分と胡桃は書物庫でまたいつもの日課の作業をこなす。


 古い紙を(めく)り、しっかりと一枚一枚に目を通す。

一族の歴史書は同じ失態を繰り返さない為の知恵の書だ。


「しかし……読めば読むほど、酷いな……」

「本当ですね……存じませんでした」

「うちの一族は……結構やらかしているな」


 私と胡桃は二人同時に溜息を吐いた。


「実力に溺れ、派手に掻き回す様相は危険だな。随分と方々で無駄に怨みを買っている」

「その後始末は、こうして次代に降りかかってくるのですね……」


『知られてしまったら、全てを滅せば良い』


  浅緋の里の忍びは……確かに強い。

そして、力が強い者が至る、(おご)った短絡的な思考……物事のその先に何が起こるか、まるで考えもしない。


 復讐の連鎖という……負の遺産だ。


 戦乱の世で綺麗事を言うつもりはないし、必要とあれば容赦なく命を奪い、奪われるのは極自然な(ことわり)だ。


 それでも、できれば無益な殺生は避けたい。


 ぺらりとまた一枚捲り……ふと、見知った名前が目に入る。


「……じいとばあも、なかなか無頼漢(ぶらいかん)だったんだな」

「若気の至りも度が過ぎると痛々しいですね」


 じいさんは、城で男色嗜好の城主に囲われかけ、城主を殺害。

追っ手も(ことごと)く切り殺した。


 ばあさんは、くのいちとして侵入した先の城主を(たぶら)かし、私事の感情で傾国を企てたようだ。


 ……他にも色々な事を起こしていそうだな。

書の次の項を捲るのが恐ろしい。


 たとえ血が繋がらなくとも、里の皆は家族だ。

昨日の友が、今日の敵。

騙し騙され疑心暗鬼に陥る戦国世相の中、一族ただただ信じ合い、団結し生きてきた。


 ……だから口惜しい。

働けども生活が楽にならない、抜け出せない泥沼。

戦国の世に終わりが見えず……泰平を生きることは到底叶わぬ願いだろう。

 

「たとえ忍びだとしても、こんな世の中だからこそ……皆が天寿を全うし、幸せに生きて欲しいと願うのは甘い……かな?」

「甘いですが、私は嫌いではないですよ」


 そう胡桃が柔らかく微笑んだ。


 ただ願うは、里の皆の幸福……そう思い、そっと書を閉じた。



◇◇◇◇

 


 大樹が死んでからの二年、蘇芳丸がどれほどの思いで鍛錬を積んできたのか、嫌と言う程見知っている。


 それでもまだ時期尚早……お前を死に急がせるわけにはいかぬのだ。


 これは私の……里長代理としての命令(ねがい)である。

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