かくれんぼ④ ー青葉邸ー
子供達は私の隣で床に寝そべり、頬杖をつき、足はぱたぱたと動かす…まるで絡繰人形のよう。
興味深そうに青葉殿の手当てを眺めながら聞いてくる。
「いたいのーー?」
「のーー?」
「大丈夫だよ。ありがとう」
心優しい子供達の頭をそっと撫でる。
ふと、四年前に亡くなった牡丹と菊の姉妹が重なり……少し寂しくなった。
用事がなければ、今すぐにでも愛らしい名前を二人に付けてあげたいのだが、仕方がない。
「はい、終わり! 無茶しちゃ駄目よ」
「かたじけない」
青葉殿に礼を言い、布の巻かれた左脛を見つめていると、胡桃の顔が頭を過る。
このかくれんぼの後には確実に小言が待っているなぁ……まぁ、甘んじてお受けしましょう。
そっと、床板に手を突く。
ふわっ!
奥の布団の間に梅丸は隠れている……つもりだが、こちらからは丸分かりである。
青葉殿と子供らの気配で掻き消せると思った選択なのだろうが、まだまだ浅慮だな。
……もしくは、私のことを完全に侮っているのだろう。
梅も私のことをよく知らないし、私も梅のことをまだそれほど分かってはいない。
以前、梅丸に里に来る前はどんな暮らしだったのかと聞いた時『覚えていない』とはぐらかされた。
ただ、遊びを知らない子供は、相応の過酷な状況下にあったと想像できる。
梅……お前の幸せはどこにあるのだろうね。
「布団か……青葉殿、ちょっとお借りしたいものが……」
家主にある物を拝借して、私は霞消の術印を結んだ。
◇◇◇◇
「はい、梅みいつけた!」
「ちょっとーー⁉︎ 嘘、これ何⁇ どうなってんのーー⁉︎」
布団ごとぐるぐる巻きに縛られた梅丸が身動き取れない状態で半狂乱に喚いている。
何が起こったか、分からなかったのだろう、気付いた時には巻かれていたのだから。
先程、青葉殿に縄を一把借りたのだ。
「鬼が消えないとでも思ったか?」
「くぅっ……!」
足の遅い鬼では、真っ向から相手を見つけると同時か寸前に相手に逃げられてしまう。
だから、鬼は接近を気づかれぬ内に相手を捕らえて、それから姿を現す。
かくれんぼは、鬼もまた隠れる者なのだ。
勝つ為には顕霞と霞消の術を対で発動させるのが必要だと、幼い頃に学んだ。
それは、忍びとして生き抜く上でも必要な技である。
「かくれんぼ、したことないんだね。蘇芳達に教わらなかったの?」
「……」
不服そうに顔を背けている。
人に教えを乞うことは、彼にとって有益な場合のみ。
今回はそれに当たらないと判断したのだな、読みが甘い。
「あ、そうだ。梅……ちょっと失礼」
詫びを入れながら、私は梅丸の痩せた懐にするりと手を滑り込ませた。
「えっ⁉︎ えっ⁉︎ ちょっと若⁉︎ な、何だよ? や、やめっ……擽ったい‼︎」
「お! あった、あった!」
すっと手を引き抜く。
手に掴んだ物は、梅が懐に隠し持っていた音鳴玉。
「梅は私を甘く見ていてくれたから、すっごく容易かったよ。どうもありがとう」
「ぐぬぬぬっ〜〜」
のんびり屋敷内に潜伏していたぐらいだ、音鳴玉を投げる想像もしていなかっただろう。
ありがたく、有効活用させてもらうさ。
「あらまぁ……」
青葉殿が良き頃合いで部屋に現れた。
「青葉殿、日没になったら梅を解いてやってください」
つまり、それまではこのまんま。
「あそぶーー」
「ぶーー」
とことこ二人も部屋へ入ってきて、よいしょっと、よじ登る。
「おい、ちょっ、ちょっと!」
梅丸の丸太布団包みは子供達の玩具と化したのだった。
屈辱的な敗北で可愛い顔を真っ赤にしている。
ふふっ、私からのお仕置きだよ。
これが戦場ならば、敵に見つかった時点でお前はとうに亡骸なんだから……。




