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エクスクラメーション

「コンクリ打ちっ放しとか高校のくせにオシャレだよなぁ」

 キュウちゃんは、巧たちが通う高校の偵察も兼ねてるらしい。最近、建て替え工事が終わり、真新しい作りが生徒たちにも気に入られている。

 キュウちゃんはどこから、情報を手に入れたんだろうか。

 巧は、ウキウキした彼女の横顔を見ながら推測する。普段から、夜桜先輩や猫実さんと連絡を取っているのかも知れない。

 そういえば、連絡先ってどうやって交換すればいいんだっけ、、、。

 友達がいなかったので、想像に任せるしかない。

 唯一知っているのは手帳のページに書き殴られたのを破って渡された夜桜先輩の電話番号ぐらいである。

 と言っても巧の方から電話は用があった一回きりしかしていないし、かかってくることもそれ以来ない。

 人と親しくなる方法を忘れてしまったみたいだ。

 いやもう、直接聞いてみるか、、、。

「あの、猫実さん?」

「はい?」

 スッと気持ちがいいほど通る声だ。

「あのー猫実さんは、どうやってあんなすごい人たちと知り合ったんですか?」

 巧は、夜桜先輩たちを見る。聴き取れないが、言葉がものすごいスピードで飛び交っているのがわかる。普段聞き流している、同級生たちとは比べ物にならない。自分はあんな風に議論はできないのかと思うと、残念な気持ちになる。決して取り返せない、忘れ物をしてしまったような。

「知り合ったというか、出会ったというか、うーん、、」

 私もちょっとわかりません。

 猫実さんは、巧の質問の答えを持っていなかった。

 巧は、がっかりしたが猫実さんもそうなのかと少し安心もした。

 猫実さんはぐいっと腰を傾けて顔を覗き込んでくる。跳ねるポニーテールに視線が行く。

「最初は、夜桜先輩が声をかけてくださったんですよ〜」

 語りかけるように、少し語尾を伸ばして、猫実さんが言った。

 巧は聞くことに集中する。

「元々会話はしなかったんですけど、中学校の図書館でよく顔を合わせてて、そんな私に目をかけてくださって、部活に誘ってくれたんですよ。」

「それが、創作活動同好会、ですか」

 うん、と楽しそうに猫実さんが頷いた。

 夜桜先輩の話をしている時が一番嬉しそうだ。そして、猫実さんの嬉しそうにしている顔が一番魅力的だと巧は思う。

「まあ、だからなんというか、、、。偶然っていうところもあるんですけど、私も先輩も本が好きだったから出会えた訳で、当然っていうところもあるんです。」

「なるほど」

 語彙力がない相槌が小説を書くものとして恥ずかしい。

 猫実さんの知らなかった過去を引き出して、興味深くなった。もっと話して欲しかったが、教えて欲しいと話すのは露骨すぎだし、失礼だろうと思い、やめた。

 こんな風に、話してくれるのを少しずつ集めていけばいい。

「ん?で、巧さん。なぜ急にそんなことを?」

 猫実さんの純粋な眼差しで痛いところを突かれる巧であった。

「あ、いやー友達の作り方を教わろうとして、、、」

 こんなことを聞く奴は巧でも、小説で読んだことすらない。

「あっ、はい」

 猫実さんに気を使われるのが、一瞬にしてわかった。こういうことには巧は敏感である。

「あのう、中学生の時友達がいらっしゃらなかった、、、?」

 いつもは、聞く人の下から懐に潜りこむような可愛げのある敬語が、触れてはいけないものから逃れるような、慎重なものになってしまった。

「あ、本が友達だったかな、はは」

 鼻でで笑ったら、突然、がしっと肩を両肩を掴まれた。目の前に猫実さんのおでこがある。目は合わせられない。

 巧は笑ったことを後悔する。まるで幼稚園の先生に怒られたみたいだ。

「大丈夫?!巧さん?友達いる?」

 声がでかいし、暑苦しい。恥ずかしい。

「今は、お助け部があるんで、まあ、、」

 ちなみに今、お助け部には猫実さんと巧しか部員がいない。

「いや、く、クラスで!」

 猫実さんとはクラスは分かれている。

 1引く1はゼロである。

「、、、」

 黙ってしまう。はあああというため息が聞こえる。ずるりと肩に置かれた手が落ちる。

 猫実さんはうなだれている。

 そう描写するのにぴったりだった。

「耳のこと、言いました?」

「あ、はい。初めの日にみんなの前で。難聴がありますって」

 アレ結構しんどいんです。恥ずかしいし、ちらほら聞いてない人居るし、小学校の頃から何年やってもなれないんです、、、。でもやらないと前の席に座れないんでしかたなくやってるんです。

 黒板をバックにして、教壇に登り自分の弱点をみんなに発表する少年。耳を傾けるクラスメイトと担任の先生。

 巧はのどかな、思いやりに溢れた場面の裏を知ってしまっているが、猫実さんはそんなエグい現実を知る必要はないと思ったので口に出さなかった。

 その代わり、いつか小説に書こうと思った。

「うううーん」

 猫実さんが本気で苦しそうに悩む。

 なるほど、これがお助け部を作ってしまうような人のさがか、と納得した。それと同時に、猫実さんも十分変人であることを痛感し、今まで普通に話していたことに衝撃を受けた。

「どうしようー」

 がしっと、また肩を掴まれる。そんなに深刻にならないで欲しい。目立つから。

「巧さんが、寂しすぎて自殺とかしちゃったらどうしよう、、、。ガンより多いんですよ若い人の自殺って」

「そうなんだ、、、。いや自殺なんてしませんから!」

「ホントに?」

「ホントです。」

「、、、ホント?」

 猫実さんの疑いを思いっきりぶった切りたくなった。両手で肩から猫実さんの手を振り払おうとするが、とんでもない力で抵抗されたので振り払えなかった。

 呆れながら巧は衝動に任せていう。


「いや僕は、猫実さんが居るだけで十分なんです!!!」


 沈黙。猫実さんは大きな目をさらに見開いて驚いている。

 いつの間にかやってきたキュウちゃんと夜桜先輩も大声にびっくりして立ちすくんでいる。

 どうやら俺は空気を凍りつかせる才能があるな、、、。

 巧は笑うしかなかった。

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