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キュウちゃん

 校内に賑やかな黄色い声が響きわたる。

 巧は早く会場に向かいたいところだが、三人とも懐かしい出会いで楽しいところだ。ただでさえ人数が増えて会話に入りづらいが仕方がない。

 どんなことを話しているのか知らないが、和やかなガールズトークが繰り広げられているのであろう。

 うへへー、と猫実さんと成田さん?が二人して笑う。何て呼ぼう。

「あの、成田さん?」

「キュウちゃんでいいぞ、少年」

「キュウさん?」

「、、、、、、、、」

 何も応えてくれない。

 そんなにキュウちゃんって呼んで欲しいのか?

 巧は声に出さずに突っ込んだ。

「キュウちゃん、、、?」

「なあに?」

 コミュニケーションの苦手な巧はそれだけで神経が磨り減りそうである。

「この三人ってどんな間柄なんですか?」

 なんとか会話に入ろうと頑張る。

「ああ、それはなあ中学のとき同好会で一緒だったんだ」

 そういってキュウちゃんは夜桜先輩の方を見る。先輩も、頷く。

「創作活動同好会っていってさ、いろんなことをクリエイトして、楽しんでた。今も夜桜は小説書いたり、あたしはメカ作ったりたまには書いたりしてる」

 キュウちゃんの声は、テンションが上がってるせいか音量もあって巧にとって聞き取りやすかった。

  ただ、

「君も小説書いてるんだってな」

「はい?」

 声をひそめられると怪しい。

「小説、書いてるって聞いたけど」

「ああ、はい!書いてます」

 単語1つを聞き逃すだけでぎこちない会話になってしまう。

 けりをつけるように、キュウちゃんが笑いながら呟いた。

 しかし聞こえない。聴き取れない。ただ耳を素通りした音の響きだけを何度も繰り返すが意味は取れない。

 作り笑いを返すぐらいだ。

 痛くなる。どこが、ということではなく。

 一番辛いのは、ややこしくて難しいのは、この瞬間かもしれない。

 言わなくては。

 経験的に知っている。言わなくてはならない。自分から。

「あ、あの」

 口から出た声が小さすぎて、夜桜先輩と談笑しているキュウちゃんには届かない。気がついた猫実さんだけが心配そうに巧を見る。

「あの、キュウちゃん」

「ん」

 振り向く。理知的な鋭い眼差しが巧に向けられる。怖いとは思わない。でも恥ずかしいとは思う。

「あの、僕は耳が少し悪くて、」

 楽しい会話を止めて申し訳ない。

 それでも、言わなくては。

 巧は、息を強く吸った。

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