そんなキャラ
誰もいない自分の部屋。
夜桜かおるは、鏡の前で立っている。
眠そうな顔。だけどやっぱり自分の顔は特別だ。まあまあ気に入ってる。そんなこと言うと、キュウに怒られそうだけど。
成田 究(なりた きゅう)。あの強烈で、ちょっと変な彼女は元気でやってるだろうか。
今はなかなか会う機会が無くなってしまった親友のことを思い出していた。
「そういえば、かおるんってさ」
甘えてくるときは、あだ名で呼んでくる。
「てめぇの文学とか何やらがわかんねえんだよ!夜桜ぁ」
突っかかってくるときは呼び捨てにされるんだったな。本気でぶつかってきてくれる親友が尊いものだとはそのときは、知らなかった。今では懐かしい。もう一度怒鳴られたいぐらいだ。
制服に着替えて、恨めしいぐらい広い家を出る。父の趣味で、こんな目立つ豪邸に住むことになった。しかし、無いよりかはマシなので我慢するしか無いのが妙に悔しい。
「なぁ、夜桜」
本を読んでいたら、おずおずと生徒会長の山崎が声をかけてきた。
黙って彼の方を向く。「何?」
今、いいところどったんだけど?
「あのー、ナマステの原稿頼んでいい?」
声が明らかに震えている。まあ、そうさせたのは私だが。
ちなみにナマステとは、『生徒会ステーション』という、校内で配布される情報誌のこと。漢字表記は生ステ。そこまで、高級な作りではなく、10ページぐらいの冊子だ。まだ、『よざくらファン』のほうがよくできてる。
「いいけど、何枚?」
「は?」
「原稿用紙何枚?」
「3枚ぐらい」
差し出された、原稿用紙を受け取る。ぐらい、じゃなくてきっかり3枚だ。
普段文章を書いている夜桜にとっては、軽すぎる。しかし細部にこだわるにはちょうどいい量だ。
「オーケー、で何をかけばいい?」
「文化祭についての意見文を書いて欲しいんだ」
「ほお、生徒会って頑張ってるんだね。」
案外まともな依頼で、感心する。
「たとえば、どんな文化祭にしたいかとか、より良い文化祭とは何か、みたいに夜桜個人の見解でいいから書いてきて欲しいんだ。」
「なるほど」
瞬時に、青春なんか好き勝手やったほうが楽しいだろうとか、の論理構成が浮かんだがこれは、ありきたりすぎるのでさすがにボツだろう。
それよりも、いつから生徒会の手伝いをするような「いい人」になったんだろう。相変わらず、おどおどと机を離れていく山崎の背中を見て、づくづく思う。




