孤独って、慣れればそれまでだけど
「なんか、先輩のためにできないかなあ」
放課後のお助け部。まったりした空気の中で、巧はそう呟いた。
自分では呟くのに、人のつぶやき声は聞こえないという矛盾を思い出す。複雑さの片鱗がそこにあるような気がする。
「うーん」
原稿用紙に向き合いながら、猫実さんが唸る。実際は文章を書いているのではなく、その真っ白な裏側に絵を描いている。そこそこ大きくて、イラストを描くのにはちょうど良いサイズなのだろう。
「私もなんとかしたいですけど、どうしましょうか、、、。」
「やめろっていうのは、ちょっと気が引けますよね」
はい、と猫実さんが相槌をうつ。
もしかしたら、あの人数の生徒とぶつかり合うかもしれないのだ。考えただけでゾッとする。
「普段は、昼休みはどうしてますか?」
猫実さんに尋ねる。昼休みの時間を使って何かできるか考えたのだ。もしかしたら、いつも先輩は一人でいるのかもしれない。そんな姿をすぐに想像できた。
「えっと、私は友達とご飯食べてます」
「なるほど」
自分のことは棚に上げて巧は考え込む。
「巧さんは、なにしてるんですか」
「はっ、ええと色々と、、、」
急いでご飯を食べて、孤独から逃げるために図書館にいる、、、なんてことを言ったら絶対引かれる。
「色々って、、、まさか、一人で?」
正解だよ、猫実さん、、、。
言い当てられて、余計恥ずかしくなってなにも言えなくなる。
「別に、それでもいいですけど」
なんか、気を使われるなぁ。
落ち込む。とにかく、人が苦手なのだ。話しかけられて、声が聞き取れず会話ができないこともある。逆に声をかけたところで、返事が聞こえない時もある。
猫実さんのように、大きな声で話してもらえればいいのだが、耳が悪いことをいちいち説明するのが煩わしい。
それで、周囲との溝は深まるばかりだ。
寂しい。そんな感情を、お助け部で温めてもらっている。
「先輩も寂しいと思います。」
巧が言うと、急に部室がしーんとなった。
「孤独って、慣れればそれまでだけどでも、そんな中でも誰か一人いてくれればすごく嬉しいですよ。こうやって、猫実さんと話せてるのも、自分にとっては嬉しいし、、、」
妙な説得力を持って響いた。伊達に、中学の3年間友達ゼロで過ごしてない。
「そうですか」
そっと視線を外して、猫実さんは相槌を打った。
「明日の昼休み、空いてますか?」
気がつけば、初めて自分から誰かを誘っていた。




