第二十一話 医療の王子様ネフライト
「いつも悪いね、ジェダイト。君がいてくれるととても助かるよ」
そう言って爽やかな笑顔を見せるのは、王子様のように優雅な佇まいのネフライト。常にキラキラと周囲に星が舞っている(ように見える)彼女に、ジェダイトは寡黙な緑色の瞳で静かに応える。
「問題ない。俺もこうした薬草には、興味があるからな」
二人の宝石が何をしているかと言うと、外界――日本のどこか――での薬草採取だ。今日のようにネフライトの依頼でジェダイトが手伝うことは、よくある光景である。両者はどちらも日本産宝石であり、日本の草木には詳しい。
「それが大事なところさ。ジェダイトは知識がしっかりあるから、安心して任せられるんだ」
そんなお世辞でも嫌味でもないネフライトの賛辞は有難いが、相変わらず星が降る幻が見えるようだとジェダイトは思った。彼女の悠然とした深い緑の瞳の虹彩に輝くのは、星ではなく桜の模様だけれども。
「……柔軟な君のほうが医療関係に精通しているのは、理にかなっていると思う」
ぽつりと呟いたジェダイトの声に、ネフライトは僅かに目を見張る。黙々と作業を続ける助っ人の彼が言わんとすることを、察しのいい彼女は容易に汲み取った。
ジェダイトはネフライトの有する労りの魔力に、日本産らしい細やかさを見出しているのである。
「僕の治癒能力の源流は、名前の由来とされる『腎臓』って言葉さ。君のその真面目さや心の繊細さ、そしてそれでも強靭なところは、土地の気質がよく表れてると思うよ」
だからジェダイトはどこから見ても、日本産を代表する宝石の一つなのだと。ネフライトはいつも通りの優雅な仕草で、ジェダイトに伝える。
同じ『翡翠』と呼ばれる二人の宝石だったが、どちらかと言うと、知名度の高いジェダイトのほうが相手を気にする性質だった。ネフライトはそれこそ柔軟な性格である為、まるで気にしていなかったりする。
「……そうか」
「そうそう。そういう訳だから、後で特製青汁の試飲をしてくれないか?」
「脈絡がなさ過ぎる。何の話だ」
「研究中の青汁の効力と味のバランスを、是非モニターして欲しいんだ。皆には嫌がられてしまってね。でもジェダイトは頑丈だし、平気だろうと思ったんだけど……」
肩をすくめるネフライトの困り顔は、果たして本気なのか、わざとなのか。
何だか上手い具合に乗せられている気がするが、ジェダイトの強靭さは本人が自負しているところだ。これも付き合いというものだろう、と彼は考える。
「いいだろう。その代わり、判定は厳しくいくぞ」
「勿論さ。期待しているよ」
そうして後日。
遠慮の欠片もない味の青汁がジェダイトの前にお目見えするのは、また別の話。




