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第二十話 奏でるメノウとイエローダイヤモンド


 街の中心部から少し離れた公園に、ぱらららん、と軽やかな旋律が響いている。

 体を揺らしながらアコーディオンの蛇腹を引き、滑らかに曲を奏でている彼女は、オレンジ色の瞳の虹彩に桜の模様を宿したメノウだ。


「やあ、メノウ。素敵な音色だね。それは次のコンサート用?」


 そこへ通りかかったのは、オレンジがかった黄色い瞳の青年。シキオンの街を個人的に守るヒーローの一人、イエローダイヤモンドである。


「あ、ダイヤくんだ! そうだよ、いま調整してるの」


 爽やかな笑みで声をかけられたメノウは、こちらも純粋な笑顔で応えた。メノウは音に関する魔力に優れ、楽器の製作が得意な歌姫である。コンサートもよく開いていて盛況、このアコーディオンも彼女の自作だった。


「その蛇腹の縞模様、メノウらしくていいね。『縞瑪瑙(しまめのう)』の縞々って何だか、音が伝わっていく波動って感じがするし」

「えへへ、ありがとう」


 メノウが手にしているアコーディオンの蛇腹は、オレンジと白の縞々色になっている。それを撫でながら、彼女は嬉しそうに笑った。


「ダイヤくんも弾いてみる?」

「いいの? じゃあ、お言葉に甘えて……!」


 メノウの提案にダイヤは、わくわくとアコーディオンを抱える。そして鍵盤を叩いてみるものの、蛇腹との連携が非常に難しくて彼は慌てた。


「わわ…っ、左右の手を別々に動かすのって大変だね」

「まずは鍵盤に集中して、蛇腹のほうは開くだけにするといいかも。音が出なくなったら、今度は閉じながらまた鍵盤に集中。リズムを掴めば、すぐに慣れるよ!」

「分かった!」


 イエローダイヤモンドは、素直な性格である。楽器はちょっと向いてなさそうだったが、音楽を奏でる楽しさはしっかりと受け取っていた。


「ふー、どうにも指の動きが硬いなあ」

「そんなことないよ。最初の時より、ずっと綺麗な響きになったもん」


 そう言って微笑む優しいメノウに、ダイヤは『ありがとう』と返して一息つく。


「そういえばなんだけど、アコーディオンを弾く時は歌わないの?」

「ううん。今日はたまたま、インストゥルメンタルの気分だったんだ」


 インストゥルメンタルとは、ボーカルのない楽器演奏だけの曲のことである。


「楽器の練習が平気なら、ダイヤくんには要らないかな」

「何が?」

「演奏が苦手な人でも楽器を楽しめるように、あらかじめ曲がインプットしてあるギターとかも作ってるの」

「へえー! それはそれで楽しそうだよ。今度是非、見せて欲しいな」


 そんなのどかな二人の様子を、道すがらジェダイトが眺めていた。


「ひとりでに鳴る楽器と言えば……ピアノか」


 風下にいて会話が聞こえた彼は、何とも不可思議なことを述べてくるりと背を向ける。

 桜餅を食べながら歩く寡黙な緑色の瞳が柔らかく細められた理由は、また別の話。



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