第十三話 宝石の歌姫メノウ
「うわあ、綺麗な星空!」
雲一つない快晴の夜。
両手を広げてくるりと舞う宝石が、感嘆の声を上げた。
「ホントだね……」
元気いっぱいの友人に応える宝石もまた、空を見上げて目を細める。
ここはシキオンの街にある、広々とした屋外の特設ステージ。
黒髪の控えめなツインテールが楽しげに揺れる女性は、オレンジ色の瞳の虹彩に桜の模様を宿したメノウだ。音に関する魔力に優れた彼女は素晴らしい美声の持ち主で、シキオンきっての歌姫である。
今夜はここで、このメノウがコンサートを行う予定だ。
「よーし、準備も完了だね。スピちゃん、手伝ってくれてありがとう!」
「どういたしまして。でも本番はこれからだし、緊張する……」
やや自信なさげな顔をするのは、スピちゃんと呼ばれた女性。紺色の瞳の虹彩に桜の模様を持ち、ピンクブラウンのミディアムヘアをしたスピネルである。
「大丈夫だよ! スピちゃんの花火はとっても素敵だもん」
「うん……ありがとう」
しかしメノウの明るい言葉に、スピネルは少し安堵して頷いた。
スピネルは『爆発』に関連した魔力を有し、花火の製作や打ち上げができる。本日はメノウのコンサートに合わせた花火を咲かせることになり、準備だけでなく本番も任されているのだ。普段はどちらかというと引きこもりで、外に出ないタイプなのだが。
――やがて会場には宝石たちが集まり、コンサートが幕を開ける。
「皆さん、来てくれてありがとう! 今日は楽しんでいって下さいね!」
メノウの澄んだ声が響くと、大きな歓声が上がった。
『 My shining stone
光輝く色は 時を超える宝物
My shining stone
駆け抜けるその先で
きらめいて 星たちのように 』
そして代表曲のサビが終わった瞬間、
――パァン! と、メノウの頭上で大きな花火が咲き誇る。
それを皮切りに次々と上がる色とりどりの花火は、観客の宝石たちの瞳に反射して美しくきらめいた。
「きれい……」
誰かの呟きが、恍惚とした感情を乗せて舞う。
続くメノウの歌声も、皆の心を掴んで離さない。
そうして満天の星空の下で行われたコンサートは、締めくくりへと移る。最後に伸びた美しい声と特大の花火が消えると、会場は割れんばかりの拍手に包まれた。
「ありがとうー!」
「あ、ありがとうございました」
メノウが笑顔で皆に手を振り、ステージに引っ張り上げられたスピネルが頭を下げる。再度拍手を送られた二人は、顔を見合わせて微笑んだ。
その様子を、夜空に輝くとある二等星が見つめていたのは、また別の話。




