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第十四話 日本産宝石代表ロッククリスタル


 シキオンの街に、穏やかな風が通り抜ける。

 それはどこか神秘的な雰囲気を醸し出す建物にも届き、中にいたパラスティックペリドットは顔を上げた。


「まあ……いつ振りかしら」


 風が運んできた微かなエネルギーは、よく見知った古い友人のものである。自分が無意識にお茶の用意をしていたのは、この為だったのかとペリドットは微笑んだ。


「久しいな、ペリドット。息災か」


 丁度テーブルが整ったところで、背後から声がかかる。

 キラキラとした長い銀髪に、凛とした表情の女性。虹彩に桜の模様を宿した、輝く黄金の瞳の宝石。

 日本産宝石を代表する存在、ロッククリスタルがそこに立っていた。


「ええ、お陰様で。貴方も、お元気そうで何よりです」

「ああ、こちらも問題ない」


 ペリドットが椅子を勧めると、クリスタルは静かに腰を下ろした。


「また少し、宝石が増えたようだな」

「そうですね、賑やかになって嬉しいです。ここに来るのは皆、街と縁がある優しい宝石たちですから」

「君の人徳だろう」

「貴方にも通ずる、この土地の穏やかさの賜物ですよ」


 シキオンの街は、日本の大地のエネルギーを借りている。エネルギーの性質は、それを使用したものにしっかりと現れるものだ。


「そういえば先日、ガーネットが箒を持っていたんです。珍しいと思ったら、箒に跨って魔女の真似をしていたんですよ」

「ふ…、彼女は掃除が苦手だからな。目に浮かぶようだ」


 宝石たちの話を聞きながら、クリスタルは薄く笑みを浮かべる。とりわけ瞳に桜の模様を持つ宝石の話題には、少しだけ気が緩むようだった。


「……貴方の『桜』が、最も濃いように感じますね」

「そんなことはない、私も彼女たちと同じだ。これは……遠い記憶に刻まれた、精鋭たちの紋章なのだから」


 その言葉からは、己が代表であっても特別とは思わない、クリスタルらしい信念が伝わってくる。


「そうでしたね」


 ペリドットはそんな彼女の変わらない姿に、思わず微笑んだ。

 そう、だから自分は、この地に馴染む宝石たちを愛している。


「……さて、そろそろ暇をしよう。いつも美味しい玉露をありがとう、ペリドット」

「とんでもないです。またいつでも来て下さいね、クリスタルさん」


 そうしてクリスタルは、来た時と同じようにふわりと消えた。彼女のエネルギーが街を後にしたのを確認し、ペリドットは僅かに寂しそうな目をする。

 クリスタルが大切にしている土地は、平和だ。しかし彼女は、ずっとそこを見守っている。ただ静かに、ずっと。


「私は、私と貴方の大事な宝石たちを守ります」


 ペリドットが窓の外を見れば、今日ものどかなシキオンの街が広がっていた。

 明日は誰にどんなことが起こるのかを知るのは、また別の話。



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