5-11「連携」
峡谷の戦いから、半日。
一行はさらに北へ進み、岩場と森の境界にある小さな高地で足を止めた。
周囲は見渡しがよく、奇襲を受けにくい。
フランソワーズが地形を確認する。
「ここで一度、隊形を整理する」
フレイが軽く肩を回す。
「さっきのデカブツ、また来る可能性あるな」
アーニャが耳を動かす。
「匂いはまだ残ってるにゃ」
「遠くない」
アルシェリアは静かに言った。
「グラディオは様子見だった」
「本気じゃない」
フレイが笑う。
「そりゃありがたい話だ」
エイドが言う。
「次は本気で来る」
その言葉に、空気が引き締まる。
フランソワーズがクレージュを見る。
「今の戦い、どう感じた」
クレージュは少し考えた。
「単独じゃ無理です」
はっきり言う。
「俺一人じゃ、あの兵器は崩せない」
フレイが頷く。
「正解だ」
「お前が突っ込んで、俺らが合わせる」
「それが一番効いてた」
フランソワーズも続ける。
「六彩は強い」
「だがそれだけでは足りない」
「連携が必要だ」
クレージュは頷いた。
それはもう分かっている。
問題は――
「どう合わせるか」
エイドが口を開く。
「単純だ」
全員が彼を見る。
「六彩を中心に据える」
フレイが眉を上げる。
「中心?」
「そうだ」
エイドは続ける。
「灰色は六属性の均衡を崩す」
「だが六彩はそれを整える」
「つまり」
「戦場の“基準点”になる」
フランソワーズが理解する。
「……軸にするということか」
「そうだ」
エイドはクレージュを見る。
「お前が動くことで、周囲の魔力も動く」
「それを前提に戦う」
クレージュは少し驚く。
「そんなこと……できるのか?」
アルシェリアが言う。
「できてる」
クレージュが振り向く。
アルシェリアは続けた。
「さっきの戦い」
「あなたが前に出たとき」
「灰色の流れが変わった」
フレイが笑う。
「つまりだ」
「お前が突っ込めば、俺らが動きやすくなるってことだな」
アーニャも言う。
「さっき、すごく動きやすかったにゃ」
フランソワーズが剣を構える。
「ならば試す」
「実戦でな」
その瞬間。
アーニャが耳を立てた。
「……来るにゃ」
全員が構える。
今度は隠れていない。
正面から来る。
岩陰から、灰色教団の戦闘員が現れる。
数は五。
さっきより多い。
その後ろ。
灰色兵器。
今度は二体。
フレイが口元を歪める。
「歓迎してくれてるな」
フランソワーズが言う。
「作戦通りいく」
「クレージュが前」
「我々が合わせる」
クレージュは一歩前へ出る。
剣を構える。
深く息を吸う。
(中心……)
難しいことは考えない。
ただ。
流れを感じる。
魔力の流れ。
空気の流れ。
そして――
仲間の位置。
「行きます」
短く言う。
次の瞬間。
踏み込んだ。
風が走る。
一気に距離を詰める。
灰色兵器が反応する。
拳が振り下ろされる。
だが――
クレージュは止まらない。
その動きに合わせて。
フレイが横から入る。
「合わせろ!」
剣撃。
灰色兵器の腕を逸らす。
フランソワーズが反対側から踏み込む。
「隙あり!」
斬撃。
関節部にヒビが入る。
アーニャが背後へ回る。
「ここにゃ!」
急所を狙う。
アルシェリアが後方から声を上げる。
「右、崩れてる!」
クレージュが方向を変える。
指示ではない。
流れとして分かる。
「そこだ!」
一閃。
同時に、全員の攻撃が重なる。
ドンッ!!
灰色兵器のバランスが崩れる。
エイドが手をかざす。
「封鎖」
空間が一瞬だけ固定される。
その間。
クレージュが踏み込む。
「終わりだ!」
胸部へ突き。
魔石に亀裂が走る。
一体、崩壊。
フレイが笑う。
「いい流れだ!」
残り一体。
戦闘員も動く。
だが。
今の一行は違った。
バラバラではない。
一つの流れになっている。
クレージュが動く。
それに合わせて全員が動く。
フランソワーズの剣が導き、
フレイが押し込み、
アーニャが削り、
エイドが止める。
そして――
クレージュが決める。
二体目も崩壊。
戦闘員は撤退を選ぶ。
「退け!」
灰色の煙。
消える。
静寂が戻る。
フレイが息を吐く。
「さっきより楽だったな」
フランソワーズも頷く。
「連携が機能している」
アーニャが笑う。
「楽しいにゃ」
クレージュは剣を下ろした。
今、はっきり分かった。
一人で戦うんじゃない。
仲間と戦う。
その中心に、自分がいる。
エイドが言う。
「形になったな」
アルシェリアが小さく呟く。
「……完成形に近い」
クレージュは少しだけ笑った。
まだ未完成だ。
でも。
確実に前に進んでいる。
その先にある戦いへ向かって…
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